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虚構都市  作者: 虚構建築設計
5/11

断片:箱

色とりどりの少女たちとつるはしを持った男たちのはなし

さまざまな、色の服をまとった少女たちが、くるくると回りながら、あたりを飛び回っています。


彼女たちは、一時も回転を止めず、常にくるくると回り続けています。

彼女たちは、さまざまな色の服をきています。

赤、青、黄色、緑、紫、色とりどりです。

そのスカートはとても長く、身の丈の5倍以上あるでしょうか。

彼女たち、あまりに速く飛びまわっているので、

そして、彼女たちのスカートがあまりに長いので、

彼女たちの通った軌跡が、色とりどりの線となって、空中に飛び交っています。


彼女たちの一人が、四角い箱を見つけました。

それは、とても大きな箱で、3階建ての建物よりも、更に大きな箱でした。

彼女は他の色の少女たちも呼んで、その箱をコンコンとたたいてみます。

音は、箱の中で響いて、箱の中が、空っぽであると分かりました。

少女たちは、その箱に、噛り付きます。

彼女たちは常にくるくる回っているので、噛り付いた部分が、

ドリルで削られたように穴が開いていきます。

穴はどんどん深くなり、そして、内側の空洞に達します。

何人かの少女は歯が欠けたり、抜けたりしました。

穴が開通すると、少女たちは、めいめい、自分の空けた穴に入っていきます。


しかし、回転しながら入ろうとすると、服のどこかが穴に引っかかり、

彼女たちは、服からすっぽり抜け出て、裸で、箱の内側の空洞へ落ちていきます。

彼女たちの着ていた服は穴の部分から垂れ下がって、長いスカートが、まるで筒状のカーテンのように、彼女たちをすっぽりと覆っています。

四角い箱の中には、暗闇を割るように、少女たちの空けた穴から、カラフルな光がスカートを通して入り込んできます。

スカートは、まるで行灯のように、ぼぅっと光っています。

そこには、中にいる裸の少女たちのシルエットが、影絵のように浮かび上がっています。

影絵の少女たちは、相変わらす、くるくると回り続けています。


箱の壁が、ガンガン叩かれる音がします。

間もなく、壁が崩れてつるはしを持った男が一人、箱の中へ入ってきます。

男は手近なカーテンをめくると、中にいた裸の少女は、くるくる回るのを止めて、凍りついたように動かなくなります。

男は少女を襲って、子を孕ませます。

孕んだ少女の腹は、見る間に大きくなり、そしてポンッと赤子を生みます。

少女は母になって、赤子に乳をやると、赤子は見る間に大きくなって、青年になります。

青年は近くのカーテンをめくって、新たな少女を捕まえると、それを襲って、子を孕ませます。

その間に、青年の母も、新たな子供をつくり、ポンッと赤子を生みます。

青年の襲った少女もポンッと赤子を産みます。

赤子は皆、男の子です。

そうやって、箱の中には男がどんどん増えていきます。

最初にいた少女の数より、男の数が多くなると、あぶれた男たちは、女を求めて箱の外へ出て行きます。

箱の中で、男は常に増え続けていますから、それは一列の行進のように、地平線まで、ずっと続いていきます。

箱の外では、たくさんのつるはしが、そこここで茂みになっています。

男たちはめいめいそれを拾い上げると、列になって歩き続けます。

しかし、列になって歩く男たちは、あるものは疲れで、あるものは乾きで、パタリパタリと倒れていきます。

地平線のさらに先の地平線のそのまた先につくころには、男の列は一人になってしまっています。

男はそこで、四角い箱を見つけます。

それは3階建てほどの大きさで、壁のいたるところに、小さな穴が空いています。

男が入れそうな穴は見つかりません。

男は来るべき場所に着いたと思い、壁に向かってつるはしを振り上げます。


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