第4話
自分の意志とは別の所で体が動いている。眠くて仕方ないのに横になることも出来ず、体を支えられながら重い足を引きずって歩いた。強い睡魔で瞼も開かず、今いる場所が何処なのかも分からない。
「重い…」
重厚感のあるドアが締まる音がすると、ベットに投げ出された。頬に触れるその待ち望んだ柔らかい布団の感触に、すぐに眠りに落ちた。
「おい、早くシャワー浴びてこいよ」
川島の言葉が夢の中で小さく聞こえた気がした。
この状況で無防備に寝息をたてる女を初めて見た。
近寄って乱れた髪で隠れた顔をまじまじと見詰め、鼻を摘んでみる。鬱陶しそうに眉間にシワを寄せて寝返りをうっている。
演技なのか、本気で寝てるのか?
「このまま襲うぞ...」
短いスカートがずり上がって太股が露わになると、元来の目的を思い出した。無抵抗な彼女の体に跨って、一応顔の前で手を合わせる。
「では、遠慮なくいただきます、と...」
服の上から胸にそっと手を伸ばす。手のひらに収まりきらないその大きさに期待が膨らんで、にやけてしまう。
確かめるようにニットをたくし上げて肌に直接触れるが、無反応。調子に乗ってブラジャーのホックを外してみる。
「うぅ...ん」
窮屈に押し寄せられた胸が解放されて弾んだ。心なしか、触れた肌が熱くなった気がした。
「やべぇな、処女犯してるみてぇ...」
異常なまでに興奮している自分に気がついた。はやる気持ちを抑え、執拗に味わっていく。
未だに眠り続ける取引先の新人は、あられもない格好で時折喘ぎのような寝言を漏らしている。
スカートに手をかけ、強引に剥ぎ取ろうと足首を掴んだ時、大きく目を見開いた彼女と目があった。しかも彼女の太股の間で...。
「やっ!やめ...」
自分の置かれた状況にやっと気づいたのか、クネクネと体を捩って逃げようとしている。だけど、その淫らな動きがどう考えても挑発しているとしか思えない。
「誘ってんの?」
「違いますぅ。お願い、止めて…」
弱々しく涙目で訴える彼女に、一瞬手が止まる。
「マジで処女なの?」
首を横に振って、開かされた脚を閉じようとしている。なかなか出逢わないエッチに奥手な女にモチベーションが上がる。
「あっそ。じゃあもうイケんな!」
「ひとでなし〜!」
斬新だ。
この状況で断られた事なんてない。嫌よ嫌よも好きのうちで、大概建前だと思っていたが組み敷いた女は本気で逃げようとしている。ただ、泥酔している為に若干動きが面白いけど...。
不覚にも先にイカされてしまった。
「あのぅ...」
全裸のままベットの縁に腰掛けて余韻に浸っていると、彼女が不安げな様子で正座をして顔を覗き込んでくる。
素人の、10も年の離れた相手に呆気なくイカされてしまった事実が信じられなくて、冷静になるにつれて笑えてきた。
「あははは...」
急に笑い出した俺にビクリと体を震わせ、再び顔を覗き込んでくる彼女と目があった。
「あの...アタシ何か気に障るような事しましたか?」
「俺がイカされちゃったよ」
恥ずかしそうに彼女も笑った。