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第19話

落ち着かないまま昼休みを迎えた。

遅番で出勤してきた越智店長は何か言いたげに時折視線を合わせてくるけれどそれ以上の事はなかった。


社食に行くだけなのにエレベーターに乗ることすら気が引けて、人気のない階段を選んだ。


「ダイエットか?」


急に後ろから声をかけられ、ビックリして振り返ったら階段を踏み外した。


「キャ…」


川島はよろめいたアタシを後ろから支えてくれた。

力強い腕の中でそのまま固まってしまう。

少し懐かしい甘い薫りが恥ずかしいのに嬉しくて何となく落ち着く、って。


そっか…

アタシこれを待ってたんだ


今更ながら確信した。

それなのに川島は支えていたアタシの体を押し返して距離を保とうとする。


「お前電話した?」


急にあの日に引き戻された。

荒木との情事が脳裏にちらついてまともに川島の目が見られない。

さっきまでの冗談めかした感じがまるでないのも後ろめたい気持ちに拍車をかける。



「ま、いーや。じゃ、お疲れ」


見透かされたような気がした。

川島は立ち尽くすアタシを置いて、何事もなかったかのように足早に階段を登っていく。


「ちょっと待って」


自分でもびっくりする位大きな声で叫んでいた。

言い訳のしようも無いくせに川島が去っていってしまうのが怖くて慌てて後を追った。


「お願い、川島さん」


立ち止まってくれない川島との距離が少しずつ詰まってきた時、前方から賑やかな女性の話し声が聞こえてきた。


川島は微かに聞き取れるくらいの独り言を漏らし、面倒臭そうに髪をかき上げながら舌打ちした。


「…お前声でけーよ」


咄嗟に振り返ってアタシの手首を掴み、登ってきた階段を走り降りた。



悪いことはできないもんですねぇ…


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