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第13話

エッチなシーンがあります。苦手な方はご注意下さい。

 浮遊感に眠りはより一層深くなる。

 冷たい布団の感触に足を擦り、幸せな時間を迎えようとしたその時、他人の熱を体中に感じた。


 手で払う仕草で迫り来る他人を遠ざけようとするが、それも虚しく空を斬る。 

 それでも懲りずに内股をさする他人の手に、寝返りを打ってかわそうとしたけれど固定されてしまい動けない。


「うう゛...」


 吸いすぎた煙草のせいで、オッサンのような声になっていた。

 纏わりついて離れない他人の体温が鬱陶しくて渋々目を開けると、見慣れないインテリアに酔いがさめてくる。


「ちょっと!!なにやって...」


 腰から下を固定されているため上体を肘で起こして足の方を見ると、日の出のように自分の股の間に頭が見えた。


 その時、聞き覚えのある携帯の着信音が聞こえた。


「!?」

「こんな時間に電話?」


 荒木が顔を上げて、的確なポイントに指を這わせる。

 きっと川島だ。

 登録していない番号からの着信音は、静かな部屋にやけに響いた。

 アタシの動揺っぷりに荒木の顔色も曇ってくる。


なんだか嫌な予感...


「出なよ」


 触れた指が動き出す。

 凍りついたように身動きがとれない。

 逃げる事も電話で助けを呼ぶ事も出来ずに、荒木に弄ばれていく。


 15秒間の着信音がピタリと止まると、荒木の強引な行為は最終的なものになった。

「お願いっ...ヤダよ、止めてよぉ...」


 下腹部に当たるその異物感に身を捩った。


「ちゃんと...責任は、取るから...」


 荒木の途切れ途切れの言葉なんて耳に入らない。中途半端な抵抗も、徐々に快感にすり替わっていく。


 そしてアタシは意識のないところで口にしてしまった。

 絶対に言葉に出してはいけない固有名詞を...。


「川島さ...ン...」


 覆い被さっている荒木の動きが止まった。苛立ちを噛み殺すように下唇をかみ、鋭い目つきで睨んでいる。


「また川島かよ...」


 またって何?


 荒木の言葉の意味を考えている間にも無理矢理の行為は続き、体は麻痺して脳が正常に働かなくなっていく。

 荒木が川島に思えてたのに、声を聞くと全くの別人って事を確認させられる。


 理性も吹っ飛ぶほどの強烈な快感に涙が止まらない。

 縋る物がなくて、手を伸ばしたら抱きしめられた。成り行きでしがみついたその背中は指先に違和感のない滑らかな感触だった。



「柳井、...好きだ...っ...」


 最後に聞こえた荒木の声は切なくて、意識を手放したアタシの中に溶けて消えた。

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