少女
「あの、誰かいるんですか?」
外に出て僅か一歩のところで一人の少女に話しかけられた。見たところ異常はなさそうだ。しかし、安全と決まったわけではない。油断させておいていきなり喰い殺しにくるかもしれない。
「そんなに身構えないで下さいよ…。私はサイじゃないですよ。」
「サイ?」
「ええ、ゾンビ状態の人のことたちです。人間だけじゃなくてこの世界の生き物みんなあんな感じですよ。」
少女はこの狂った状況にやたらと詳しかった。少し怪しい気もしたが、嘘を言ってるようにも見えなかったので少女の話を聞いてみたところ、いくつか有益な情報を手に入れることができた。
まずは街をうろつくゾンビ状態の人間のことだが奴らはSURVIVAL INSTINCTという名前らしく、だいたいは略してサイと呼ぶようだ。
そして二つ目の情報は正気を保った人間が集まる施設があるということだ。街から少し離れたところにある森の中に地下室があるらしい。少女はその地下室から食料の調達のために街まで来たようだ。
僕は今すぐにでもその森の中の地下室に向かいたいところだったが、そこから食料の調達のために街まで来た少女を放って自分だけ逃げるわけにもいかないので少女と一緒に行動することにした。
「とりあえずスーパーを目指しましょう。」
と、少女が提案してきたので拒否する理由も思いつかない僕は大人しく同意しようとした。が、一つ不安なことがあったので同意する前に質問してみた。
「スーパーに行くのは構わないんだけど、奴らが全部食い荒らしてたりしないかな?」
「それは大丈夫ですよ。毎日毎日、食料の補充のために空から降りてくる黒子がいますから。」
少女が言っている意味はよく分からなかったが、大丈夫ということなので僕はそれ以上深く考えずにスーパーに向かうことにした。