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例えばそんな異世界事情   作者: 弥生真由
序章
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Ep.3 迷える者達

『夜明けはまだまだ、遠そうだ。』


鮮やかな星空に浮かぶ島。

俺達が今まで過ごしていた世界ではまず見ないであろう光景に唖然となる。

「―…これってさ、やっぱ…[異世界]ってこと?」

翔のその言葉に、朔也が俺の顔に手を伸ばす。

…って、

「さっき確かめたろうが、それはもういい。」

朔也の手を掴んで止めつつ、俺達の後ろに立つ少年に向き直る。

少年もまた、俺達の姿をまじまじと見つめていた。

「―…なぁ、お前らまさか、別の島から来たのか?」

怪訝そうな目でそう問われて、一瞬言葉に詰まる。

実際には[別の島]ではなく[別の世界]から来たわけだが、今はそれはバラさない方が良いだろう。

「あぁ、まぁ…な。それで、この場所の事をもう少し詳しく知りたいんだけど。」

「ふーん…。チョコレートはもうないのか?」

「えっ?あー、うん、あれで終わりだからもう無いんだけど…。」

そう答えると、『じゃあ教えてやらない』とそっぽを向かれた。

そんなにチョコレートが気に入ったのか…?

と、言うか、今が夜なせいなのかこの少年以外全く人が見つからないんだ。

少しでもいいから情報を得たい。

「お前ら、そんな服着てるってことはどっかの島の軍人か役員だろ?仕事で来たのか知らねーけど、さっさと用事済ませてこの辺から離れた方がいいぞ。」

「はぁ?俺らが軍人?」

「だって、紋章入りの上着なんて庶民はまず着ないぞ。それに、布も高そうだし…。お高い身分の奴らじゃないのか?」

そう言われて、改めて自分達の服装を見てみた。

俺達からしてみれば普通のブレザーだが、ここの人々(まぁこの少年は人じゃないが)には軍服のように見えるのかもしれない。

「ご忠告ありがとう。それで、『早く離れた方がいい』ってどういう事だ?」

「…この辺りは今、色々と物騒なんだ。お前らあんま強くなさそうだし…、危ないかなと思っただけだ。」

ちょっとだけ顔を赤くして、もう一度そっぽを向く。

そして、『言うことは言ったからな!』と少年は林の闇の向こうへと消えていった。

「―…で、こっからどうする?」

「まぁ、まずはとにかく情報集め…と行きたいとこだけど、夜があけてからのがいいかもな。さっきの子が言ってた『物騒だ』ってことも気になるし。」

「でも、今が何時くらいなのかすらわからないぞ。あとどれくらいで明るくなるのかもわからないこの状況で、ただ待ってるつもりか?」

「『急いては事を仕損ずる』って言うだろ。どんな危険があるのかわからない以上、下手に動かない方がいい。」

「―…、わかった。」

「了解。でもさ、一晩ずっと起きてなきゃいけない訳?」

そう言いつつ、翔がアクビを噛み殺す。

態度にはあまり出さないが朔也も眠いのか、いつもより口数が少ない。

「…まぁ、徹夜もよくないか。じゃあ、交代で見張りに立とう。俺がしばらく起きてるから、とりあえずお前らは少し寝な。」

寝床に出来そうな大きな木の根本に、葉を集めてなんとか横になれるスペースを作る。

寝心地は決してよくは無いだろうが、土の上に直に寝転ぶよりはいいだろう。

「じゃあ、俺らお言葉に甘えて寝るけど…仁牙1人で大丈夫か?」

「あぁ、何かあれば即叩き起こすし平気だって。ほら、さっさと休めよ。」

少し遠慮がちに横になった翔だが、気持ち的な疲れもあってかすぐに眠りに落ちたらしい。

朔也に至ってはもう労いの言葉も何もなくあっという間に寝入ってたけど。

2人が完全に寝入ってから、自分と、寝る前に脱いだ2人の上着のポケットに入っていた物を確認する。

俺の持ち物はスマホに生徒手帳、あとは手帳につけてたペンライトと…、いつも身に付けてるクロスのペンダントだけだった。

他の2人も似たようなもので、翔のポケットからはケータイと小型ゲーム機、それと飴玉数個とガムが。

朔也のポケットからは、スマホ、ライターとカッター、デジタルカメラが出てきた。

文化祭の作業に使っていたものだが、今のこの状況ならライターは有難い。

乾いた枝を捜して、それを組んで焚き火をつけた。

別に寒くはないが、野生の動物などから野宿で身を守るときは火を焚くのがいい。

そんなうろ覚えな知識を頼りに、揺らめく炎を見ながらため息をつく。

スマホを一応いじっては見るが、もちろん電波は圏外。

電波時計はエラーの表記になり、時間はおろか日付や曜日も全く表示されなくなっている。

「―…あーもう、これからどうなるんだ俺達は…。」

思わず口からこぼれた弱音は、誰にも届かず闇夜に消えた。




~Ep.3 迷える者達~

夜明けはまだまだ、遠そうだ。

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