2/151
Ep.0 月の記憶の物語
全てはここから、始まった。
薄く白んだ視界の中、ぼんやりと霧の向こうを眺める。
『ここは……?』
呟いたはずの声は声にならず、妙に頭の中に響いた。
何となくだが、自分が夢を見ているのだと自覚する。
理解をしたら妙な不安は無くなって、霧の向こうへ数歩足を進めた。そこには、まだ幼かった頃の自分と、レースのリボンで髪を結んだ少女、そして上品な婦人が絵本を読んでいた。
『月の光は異界への道…。満月の夜には、その扉を開いてはいけませんよ。さもないと……』
そこから先は聞こえなかった。
段々とまた、視界が靄に包まれる。
最後、あの婦人は何を言ったのだろう。
何か、とても大切な事だったような気がしたが…結局思い出せないまま、世界は霧に包まれた。
~Ep.0 月の記憶の物語~
全てはここから、始まった。