表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

勇者として召喚されたけど、世界が平和ってどうよこれ


 気がつくと見知らぬ景色。俺は床に倒れていた。おかしい。さっきまで、俺は友達と何時懐かしやの「こっくりさん」をやっていた。

 丁度、俺の大好きなミッちゃんの事聞こうとしていたのに。


 冷たい床。上から落とされたかのように体が痛い。

 誰かが俺を覗いて来る。超可愛い女の子だ。ミッちゃんに何処か似ている。



「ええっと...大丈夫ですか?」



 女の子が俺に話しかける。

 あー、可哀想に。そんな重そうな本を持って...。



「ふぇぇぇぇ...どうしましょぅ......」



 俺が返事しないからだ。俺が返事をしないからこの子はこんな慌ててるんだ。

 よし、返事しよう。でも、第一印象が大事だよな。好青年って見られたいからな。紳士でいこう。



「あ、すみません...」



 俺が答えると、女の子はもの凄く嬉しそうな顔をした。

 あ、ヤバい...。



「ご無事で良かったです!!」

「あの...此処は何処ですか?」



 俺はゆっくり起き上がると、周りをキョロキョロと見回した。床には、見た事もないような文字や模様が書かれていた。

 丸い部屋には、俺と女の子以外誰もいない。



「此処は城の『召喚室』です。勇者様」

「ゆ、勇者?」



 勇者っつうと、ファンタジーテンプレにおける魔王と敵対するキャラだろ? 主役だろ? ハーレム作り放題だろ? 

 イヤッホーーイ!! 勇者って事は、俺チート? 俺TUEEE出来る?! この子もハーレムメンバァー!!



「勇者って事は、魔王とか?」



 どうにか表面上は落ち着いている俺。

いやぁ、紳士だな俺って。



「え? 魔王? そんなのは、何千年も前にいなくなりました」

「じゃあ、他に邪神とか? 強い魔物とか?」

「そんなのいませんよ? この世界は至って平和です。魔王も邪神も悪い魔物もいません」

「え...じゃあ、何で俺召喚されたの?」



 俺が聞くと女の子は、キョトンとした顔で言った。



「勇者だからです」

「だから、何で勇者なの?」

「勇者だからです」

「この世界平和なんでしょ? 何で俺が召喚されなきゃいけないの?」

「勇者だからです」

「勇者意味ないでしょ。此処に来る必要性全くないでしょ」

「いいえ、あります」



 何だよこの子。理由が「勇者だから」って何なんだよこの子。

 というか、この子とは話してもラチあかねぇな。



「なぁ、城って事は王様居るんだろ? ちょっと会わせてくれよ」

「もちろん。勇者ですからね」



 って事で、「王の間」に案内された。

 ちなみにこの子は「ミン」って言うらしい。ミンちゃんミンちゃん、ミッちゃんじゃないよ? ミンちゃんだよ?



「オッホン、君が勇者かね?」



 おやおじいさん。どっかの魔法学校の校長っぽいおじいさん。

 あ、ごめん。王様ね。ダンブ◯ドアって呼ぼうかな。よっ、ダ◯ブルドア王!!



「...らしいです」

「よく来てくれた、勇者よ。名は何と言う?」



 名前何にしよう。やっぱ新天地だからさ、名前変えたいよね。

 ん? 親が悲しむぞって、俺の名前はマンガから取られたキラキラネイムだぞ! 俺の方が悲しいぜ!



「陛下、彼は勇者様です」

「ほう、名は『ユウシャ』というのか」



 いやちゃう! 何言ってんのミンちゃん!

 って、ニヤッとするな! そんな目で見るな!! 俺の名前はーー



「勇者ユウシャよ」



 あー! 俺ユウシャじゃない!!



「どうか、旅に出てほしい」

「念のため聞きますけど、何で?」

「勇者だから」

「世界が平和なのに何で?」

「勇者だから」

「何で召喚したんですか?」

「勇者だから」



 もう良い。自問自答みたいでやだ。何で王様まで「勇者だから」の一点張り? 俺悲しいよ? 親から名前の由来聞いた時くらい悲しいよ?



「さて、今から準備をしてほしい。ミン、手伝ってやれ」

「はい、陛下。では行きましょう。勇者様」

「...ぐす」




Q:どうして俺は召喚されたんですか?

A:勇者だから


Q:どうして俺が勇者なんですか?

A:勇者だから


Q:どうして俺が旅に出なきゃいけないんですか?

A:勇者だから


Q:旅に出てどうすれば良いんですか?

A:勇者の仕事



 だってさ。


 勇者として召喚されたけど、世界が平和ってどうよこれ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ