勇者として召喚されたけど、世界が平和ってどうよこれ
気がつくと見知らぬ景色。俺は床に倒れていた。おかしい。さっきまで、俺は友達と何時懐かしやの「こっくりさん」をやっていた。
丁度、俺の大好きなミッちゃんの事聞こうとしていたのに。
冷たい床。上から落とされたかのように体が痛い。
誰かが俺を覗いて来る。超可愛い女の子だ。ミッちゃんに何処か似ている。
「ええっと...大丈夫ですか?」
女の子が俺に話しかける。
あー、可哀想に。そんな重そうな本を持って...。
「ふぇぇぇぇ...どうしましょぅ......」
俺が返事しないからだ。俺が返事をしないからこの子はこんな慌ててるんだ。
よし、返事しよう。でも、第一印象が大事だよな。好青年って見られたいからな。紳士でいこう。
「あ、すみません...」
俺が答えると、女の子はもの凄く嬉しそうな顔をした。
あ、ヤバい...。
「ご無事で良かったです!!」
「あの...此処は何処ですか?」
俺はゆっくり起き上がると、周りをキョロキョロと見回した。床には、見た事もないような文字や模様が書かれていた。
丸い部屋には、俺と女の子以外誰もいない。
「此処は城の『召喚室』です。勇者様」
「ゆ、勇者?」
勇者っつうと、ファンタジーテンプレにおける魔王と敵対するキャラだろ? 主役だろ? ハーレム作り放題だろ?
イヤッホーーイ!! 勇者って事は、俺チート? 俺TUEEE出来る?! この子もハーレムメンバァー!!
「勇者って事は、魔王とか?」
どうにか表面上は落ち着いている俺。
いやぁ、紳士だな俺って。
「え? 魔王? そんなのは、何千年も前にいなくなりました」
「じゃあ、他に邪神とか? 強い魔物とか?」
「そんなのいませんよ? この世界は至って平和です。魔王も邪神も悪い魔物もいません」
「え...じゃあ、何で俺召喚されたの?」
俺が聞くと女の子は、キョトンとした顔で言った。
「勇者だからです」
「だから、何で勇者なの?」
「勇者だからです」
「この世界平和なんでしょ? 何で俺が召喚されなきゃいけないの?」
「勇者だからです」
「勇者意味ないでしょ。此処に来る必要性全くないでしょ」
「いいえ、あります」
何だよこの子。理由が「勇者だから」って何なんだよこの子。
というか、この子とは話してもラチあかねぇな。
「なぁ、城って事は王様居るんだろ? ちょっと会わせてくれよ」
「もちろん。勇者ですからね」
って事で、「王の間」に案内された。
ちなみにこの子は「ミン」って言うらしい。ミンちゃんミンちゃん、ミッちゃんじゃないよ? ミンちゃんだよ?
「オッホン、君が勇者かね?」
おやおじいさん。どっかの魔法学校の校長っぽいおじいさん。
あ、ごめん。王様ね。ダンブ◯ドアって呼ぼうかな。よっ、ダ◯ブルドア王!!
「...らしいです」
「よく来てくれた、勇者よ。名は何と言う?」
名前何にしよう。やっぱ新天地だからさ、名前変えたいよね。
ん? 親が悲しむぞって、俺の名前はマンガから取られたキラキラネイムだぞ! 俺の方が悲しいぜ!
「陛下、彼は勇者様です」
「ほう、名は『ユウシャ』というのか」
いやちゃう! 何言ってんのミンちゃん!
って、ニヤッとするな! そんな目で見るな!! 俺の名前はーー
「勇者ユウシャよ」
あー! 俺ユウシャじゃない!!
「どうか、旅に出てほしい」
「念のため聞きますけど、何で?」
「勇者だから」
「世界が平和なのに何で?」
「勇者だから」
「何で召喚したんですか?」
「勇者だから」
もう良い。自問自答みたいでやだ。何で王様まで「勇者だから」の一点張り? 俺悲しいよ? 親から名前の由来聞いた時くらい悲しいよ?
「さて、今から準備をしてほしい。ミン、手伝ってやれ」
「はい、陛下。では行きましょう。勇者様」
「...ぐす」
Q:どうして俺は召喚されたんですか?
A:勇者だから
Q:どうして俺が勇者なんですか?
A:勇者だから
Q:どうして俺が旅に出なきゃいけないんですか?
A:勇者だから
Q:旅に出てどうすれば良いんですか?
A:勇者の仕事
だってさ。
勇者として召喚されたけど、世界が平和ってどうよこれ。