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太陽の貴公子  作者: みずっち
9/19

第9話

新キャラ投入


2次キャラ借りました(法師と御前さん有り難う御座います)

・西武蔵坊レオ丸

・ミスハ

・朝霧

・夜櫻

・フェイディット

(敬称略)

城塞都市ウェルブリッジ。堅牢な城壁でぐるりと囲まれた、現実世界の豊橋に当たる街だ。

セルデシアの世界では、渥美半島の根元を押さえる要衝でもある。

朝、とある宿屋の台所に、二人の女性冒険者が居た。

一人は身長170cm程度、体格は細身、昔有ったアニメの主人公を模した魔法少女の出で立ちである。

ピンクを基調に、フリルも付いた、明らかに萌えを意識したデザインである。髪色もピンクなのは、キャラを作る時に唆されたからだ。

ついでに言うと、目の色もピンクである。見た目は中々ドギツイかも知れない。

ステータスの名前はマミと表記してあるが、彼のアニメでは途中で死亡してしまうキャラなのがミスマッチと言うか皮肉と言うか。

実を言うと本名をモジっているので文句が言えない。しかも髪型もあの主人公をモデルにしてツインテールなのが微妙な所だ。

大災害初日に<外観再決定ポーション>を飲んで現実に合わせたのだが、変えたのは身長や体格のみで、色や髪型を変えるのを忘れていた。

設定上(見た目)の年齢は永遠の22歳である。実際の年齢は5~6歳上の筈だ。


「ねぇマミちゃん」

「ん~?何やぁ、皿子ぉ?」


マミは、嘗て自分を唆して<エルダーテイル>に引き込んだ友人(張本人)を見遣る。

皿子と呼ばれた女性は、コック帽を被り、割烹着を着けた和洋折衷の状態でマミの元に歩み寄った。

ドワーフ特有の尖った耳がピコピコと動き、つぶらな銀色の瞳が真っ直ぐにマミを見据えている。

マミより15cmほど低い身長だが、この種族では平均より少し高めである。そしてこれでも、現実の身長とさして変わらない。

見た目の年齢は20歳前後である。実年齢はマミと同学年だ。


「ちょっと、コマンドメニューで作ってみたんだけどね、なんか変なんだぁ」

「変て何がや?」


マミに差し出したその手には、料理を盛り付けた皿が乗っていた。カレーライスだ。

見た目には美しく、レストランの見本にもなりそうだった。


「なんか味が感じられなくてさぁ…」

「え?どういう事?」


頭の中で疑問符が飛び交うが、取り敢えず一口食べてみる。


「…な、なんやこれえええええええええええええ!!?」


目を丸くしたマミの絶叫が宿屋に谺した。

味が無い。全く無い。塩気も甘味も酸味も何もかもが無い。

湿気た煎餅のように不味い。


「えっ!?ちょぉ、一体何したんやこれ!?」

「いやぁ、時間が勿体無いと思ってさぁ、材料集めてコマンドメニューから作ってみたんだけど…」

「こまんどめにゅう…?」

「うん…」


マミはふと気付いた。

そう言えば、ナゴヤ闘技場で大災害に巻き込まれて以来、手作りの料理しか食べてない。

皿子のサブ職が<料理人>で、自分も彼女から<新妻のエプロン>を借りているため、あれから三週間ほど経った今まで、コマンドメニューから作った事が無かったのだ。

初日にスキルが無ければ失敗するのは学んだが、一人暮らしの自炊はいつもの事だったため、二人で普通に作っていたのが気付かなかった原因のようである。

というか、家庭料理レベルしか作れない自分たちは、もっと美味い物が食べたいと時々愚痴っていたのは反省すべきだろうか。

他の人たちはこの味――と言えるか不明だが――をずっと食べていると言う事だろう。

そもそも、知人たちと情報交換した時には、その話題は出なかった。恐らく暗黙の了解と言う事か。

味が有る事自体贅沢なのだと、今更思い知らされた。


「…皿子…今まで気付かんかったんか…」

「えぇ~?だって、ずっと手料理してきたし…」

「いやまぁうちも気付かんかったけど…」

「まぁいいんじゃない?」

「…せやな♪」


のんびりした調子の皿子に引きずられ、マミも気持ちを切り替えてしまった。


「あ、せや、皿子」

「うん?なぁに?」

「ギルドの人たちには連絡したんか?」

「……あっ」


皿子が固まった。


「…おいコラ」

「…てへっ♪」

「それでも<ホネスティ>かああああああああああああ!!!!」

「や~ん、ごめんなさ~い!」


再び、マミの絶叫が宿屋に轟く。皿子は耳を押さえてしゃがみ込んだ。

大災害以降、今の今まで念話するのを忘れていたらしい。

マミはソロだが、皿子は<ホネスティ>に入っている。連絡ぐらい取れるだろうに。

二日目ぐらいに言っておいたのだが、どうやら生返事だったようだ。


「ホンマ頭痛いわ」

「え?じゃあポーション飲む?あ、マミちゃん<森呪遣い>だから自分で出来るか。私<妖術師>だから無理なんだよねぇ」

「誰の所為や思とんねん!」

「……えっ?」


思い当たる節が無い皿子はきょとんと首を傾げた。本気で分かってない。


「まぁえーわ。今からでも連絡とりぃや。ほら、向こうで仲ようしてくれた人たちおったやろ。ジョージさんとサナエさんやったっけ?」

「サナエさんは今は三月兎(マーチヘア)って言うんだよ、この前話したじゃん」

「あ~あ~、分かったから、はよう連絡しぃや」

「は~い♪」


マミのフレンドリストにもそれなりの数は登録されているが、今現在、念話を掛けても誰も出ない。

寝不足の元GM(クオン)人斬り姐さん(ミスハ)脳筋あんちゃん(ナカルナード)世話焼きのおっさん(カズ彦)陰険眼鏡(ゼルデュス)口達者な坊さん(レオ丸)…みんな音信不通になった。

連絡が着いたのは最初の二週間ぐらいで、数日前から全員ぱったりと連絡が取れなくなったのだ。

最後に仕入れた情報は、レオ丸がミナミを出奔し、濡羽と言う冒険者がミナミを取り込み始めたという2つだけだった。

また、マミ自身はミナミを中心に活動していたため、アキバに知り合いは少ない。

詰まる所、ここは皿子が頼りなのだ。


「あ、もしもし、マーチさんですかぁ?」

『お~、皿子ちゃん久しぶりだねぇ』

「お久しぶりですぅ♪」

『元気だった?』

「はい、頗る♪」

『それは良かったねぇ』

「はい♪」


間延びした返事が三月兎の耳に届く。相手が誰でも、のんびりした調子は変わらないらしい。


『それでどったの?』

「え~っとぉ……マミちゃん、何だっけ?」

「おいこら!」

『あははは、相変わらずだね~』


念話の向こうで三月兎が笑っている。自分は聞こえないが、一緒に笑っている皿子の様子から判断出来る。

関西人としてはネタを提供出来たようだ。いや、そんな場合では無い。


「え~っとぉ、そちらの状況どうかと思いましてぇ」

『こっち?まぁ他の街と変わらずかなぁ。最初はPKとかも横行してたんだけどねぇ…』

「ほうほう」

『大手ギルドが縄張り主張し始めてから一気に減り出してね。今はもうほとんど無いみたいだよ』

「へぇ~、そうですかぁ」


ついでに言うと、中小ギルドが何やら会合を持つ話が有るらしい。

三月兎の知り合い(朝霧)も参加する予定との事だ。


『そっちは?今どこ?』

「こっちはぁ、友達と一緒にウェルブリッジに居ますぅ♪」

『ウェルブリッジ?何処だっけ?』

「え~っとぉ、豊橋ですぅ。愛知県の南側の…」

『はりゃまぁ、結構遠いねぇ。セルデシア(この世界)だと…150キロぐらい?』

「はぁ、多分…」


正直、距離に関しては良く分からない。取り敢えずマミがアキバを目指すと言ったので同行しているのだ。

ミナミでも構わないと言ったのだが、皿子をアキバに届けるのが優先だと押し切られたのである。


『ゴメンねぇ、助けに行きたいけど、陽輔たちも街を離れられなくてさぁ』

「あ、別にいいですよぉ。マミちゃんと二人で(・・・)旅しますから」

「…なぬ!?」

『そう?分かった。じゃあ気を付けてな』

「は~い♪」

「ちょちょっ、皿子ぉ!?」


今変な事を言った気がする。


「マーチさん元気だったよ♪」


念話を切った皿子はこっちを向いて満面の笑みで報告した。


「いやそれはええねんけど」

「うん」

「お迎えは?」

「え?」

「救援は?」

「え?」

「いやほら、空飛べたら一気に行けるやん?時間短縮になるやろ?」

「…あぁ~」


やっと納得したらしく、流石マミだと殊更感心する皿子を前に、マミはガクッと肩を落とした。


「そう言えば私たち馬とか熊とか狼しか持って無いよねぇ、あははは」

「…何や突っ込む気も失せたわ…」


眉間を揉むマミに構わず、皿子は別の料理を差し出す。


「…ん?何やこれ?」

「ちょっと作ってみたんだぁ。この前お魚取れたし…味噌や醤油は無いから出汁だけだけど」

「ほぉ、煮付けか…んん?」

「どうかした?」


はてなマークを脳内に浮かばせ、ぱちくりと目をしばたかせる皿子に、マミは料理を指差した。


「これ…まさか一人で作ったんか…?」

「うんそだよ…あっ」


指摘され、自分の癖を思い出した。

一方、マミは料理をマジマジと観察する。

見た目の盛り付けは店で出せるクオリティだが、湯気と一緒にどす黒いオーラが立ち上っている。

食べてはいけないと本能が警鐘を鳴らす。


「…皿子、一人で作ったらアカン言うたやろ」

「そう言えばそうだった、てへへ…」


照れたように頭を掻く皿子に、マミは苦笑いを浮かべた。

実は、一人で最初から最後まで作ると、何故か状態異常とダメージを含んだ毒料理が出来上がるのだ。

初日は二人で作ったから分からなかったが、二日目に皿子が一人で作った料理を食べ、死にかけた事が有る。

条件は、他に誰かが厨房に居るか否かと言うシンプルなもので、手伝う必要は無いのだが、二人きりだと案外難しかったりする。

因みにモンスターにも有効なので、瓶詰にしてモンスターに投げると即席の状態異常が付与出来る事が判明した。

正直、道中の戦闘で役に立った事も何回か有る。

ついでに言うと、作った本人は食べても問題ない。何やら不公平だ。


「も~、しゃあないな。また毒瓶(バステ弾)増やすか…」

「ごめんちゃい」

「せや、どっかほっつき歩いとるおっちゃん(レオ丸)にでも食べてもらおか」

「大丈夫かなぁ?」

「ええんちゃう?効果試すためにも」

「そうだねぇ」


二人で笑いながら、手持ちの空き瓶に料理を詰める作業を開始した。






    ◆    ◆    ◆






三月兎はロビーの大テーブルでちびちびと無味の酒を飲んでいた。


「う~ん…愛知かぁ…」


現実では300キロメートル離れている。<エルダーテイル>では150キロメートルほどか。

車や電車が無いこの世界では中々遠い距離だ。迎えに行くにはかなり難しい。

自分はレベルが低いし、馬以外の騎乗生物を持って無いから論外。

陽輔たちは見回りと戦闘訓練が有る。

朝霧は何やら忙しいらしい。中小ギルドが大手に対抗するために話し合いの場を持つらしく、その準備をしているそうである。

夜櫻とフェイディットも、自由に見えてあちこち立ち回っているようだ。


<本部>(アインス)に相談してみるか…あ、でも、友達と二人で旅するって言ってたな…」


酒を飲みながらぶつぶつと思考を巡らせる。

悪巧み(いたずら)は滑らかに思い付くが、こういう事(大規模作戦)はからっきしだ。

昔、<黒き太陽の凶つ神>を制覇した時も、レオ丸や<ホネスティ>幹部たちに作戦を考えてもらい、自分は<武闘家>(壁職)として前線で暴れていた。

他のクエストでも、頭脳労働(作戦立案)は朝霧や夜櫻などに任せっきりだった。

まぁいいかと思い直す。

皿子は二人(・・)と言っていた。つまり、仲間が居ると言う事だ。一人(ソロ)よりは大分とマシになる筈である。


「まぁアイツら(陽輔たち)には報告だけでいいか」


三月兎はポツリと呟き、杯を煽った。

そう言えば、皿子も<凶つ神>(例のレイド)に参加していたな。

マミと言う名前には聞き覚えが有る。確か、皿子が連れて来たソロの友人だったか。

メンバー募集を掛けた時に、回復職が必要と言う事で皿子に伝手を頼んだのだ。

サブが<魔杖使い>(ワンドマスター)で、<殴り森呪遣い>としてもそれなりに助けてもらった記憶が有る。

それなら大丈夫だろう。皿子も<妖術師>だし、友達なら連携はお手の物の筈だ。


「それにしても…辛気臭い街になったなぁ…」


三月兎の溜息は、誰にも聞かれる事無く、空気中に霧散していった…。

ネタキャラとナゴヤエリア出してしまった・・・orz

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