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太陽の貴公子  作者: みずっち
7/19

第7話

新キャラ


というか、あそこと絡ませたいだけです。

今後出て来るか分かりません(←

名前:リリー

女/人間/妖術師Lv19/醸造職人Lv36


藍色のローブを纏い、身長より少し短い木製の杖を持っている。

ステータスと装備を確認し、落ち着いた処で街に戻り、ギルド会館に少女を連れて行った。

幹部に了解を取り、<ホネスティ>に入会させて本部に送り届ける。


「それにしてもマーチさんの知り合いだったなんて…」


少女を本部に案内した後、帰り道でカイトがポツリと呟いた。


「居酒屋のバイトと常連ねぇ…まぁ早苗さんらしいと言えばらしいか」


ジョージが苦笑する。

彼女は現実では17歳の高校生らしい。名前が悠梨(ゆり)と言うので、百合の花に掛けてリリーと付けたそうだ。

常連になった早苗と意気投合したらしく、誘われてエルダーテイルをやり始めた矢先に巻き込まれたとの事である。

どうやら早苗に色々聞かされたようだ。<ホネスティ>がどうとか姪っ子がどうとか。

自分達が知り合いだと分かると、彼女も驚いていた。

助けた後、陽輔の名前を確認した時に一番驚いていたのは何だろう。何か吹き込んでいそうな…いや、詮索は止めておこう。知りたくもない。


「んで、これからどうする、陽輔?」

「あぁ…休憩したらまた見回りに出ようかと思ってるんだけど」


カイトの問いに、陽輔は頭をポリポリ掻きながら答える。


「じゃ、一旦戻るか」

「うっす」


ゲオルグの掛け声を合図に、一行は第3ビルに向かった。






    ◆    ◆    ◆






<狂宴>のギルドハウスのリビングで、三月兎はお酒を片手に、リリーはお茶を啜りながら、話し込んでいる。

休憩した後、ここまで案内してもらったのだ。味の無い飲み物を飲みながら少女はしんみりとしていた。


「そっかぁ…悠梨ちゃんもこっち(セルデシア)来ちゃったかぁ」

「はい…」

「…ま、しゃーねーな。これからどうすっか考えればいーよ、ぶひゃひゃひゃひゃ」


三月兎はそう言ってコップに入った酒をかっくらい、あっけらかんと笑い飛ばした。

来てしまったものは仕方無い。これからどうするか考えればいいのだ。

リリーはその様子(女子力皆無の笑い方)にプッと噴き出した。


「早苗さん変わりませんね」

「おぅ?あたしはあたしだよ?」


意味が分からないという風にきょとんと首を傾げる。


「そういやさぁ、今何処に泊まってるの?」

「あぁ~…えっと…一応<本部>の人が安い宿を(・・・・)探してくれた(・・・・・・)ので…そちらに…」


三月兎の何気ない質問に、リリーの顔が曇った。まるで今まで宿が無かったような口ぶりだ。


「え、”探してくれた”って…えっ?今まで廃墟に寝泊まりしてたの?」

「いえ、その…つい先日まで、とあるギルドに入ってたんですけど…」


三月兎が怪訝な顔になる。リリーの様子がおかしい。

目がきょろきょろして落ち着きが無くなっている。

三月兎は黙って新しいお茶を差し出した。味は無いが気分の問題だ。


「あたしで良かったら話ぐらい聞いたげるよ」

「はい…すいません…」


三月兎の微笑みに少し落ち着いたらしいリリーは、お茶を一口飲んで話し始めた…。






    ◆    ◆    ◆






「マーチさんただいま~」

「ただいま叔母さん」

「お~、舞、カイト、お帰り~」


そろそろ日が暮れるという頃、午後の見回りから二人が帰って来た。

イーサン他、低レベル組も<ホネスティ>本部の合同訓練から帰還している。


「じゃあ陽輔君、また明日ね」

「うん」

「おう陽輔」

「何です?」


三月兎が帰ろうとする陽輔を呼び止めた。


「2階に泊まってけ。そして子種仕込んでけ」


陽輔の両肩に手をそれぞれ置いてニタリと笑った。

<狂宴>のギルドハウスは2階建てで、リビングやキッチン等は1階にある。

個室は10部屋程有り、1階と2階に分かれていて、三月兎の部屋は1階に有るが、他のメンバーの部屋は2階に有る。


「お、叔母さん!!」

「…早苗さん、前にもこういうの有りましたよね…」

「そだっけ?」


首を傾げる三月兎に、舞は顔を真っ赤にして崩れ落ち、陽輔とカイトは苦笑する。

取り敢えず今日はビルに戻る事にした。

なお、三月兎が駄々を捏ねてカイトが羽交い絞めにして見送った事を申し添えておく。

舞の中で黒歴史(忘れたい事)の一つになった。

幾つ有るのかもう忘れた。多分片手では収まらない。


「もう!叔母さんったら…」

「だぁってよぉ~」


入浴後、叔母(三月兎)のむくれた表情に、舞は顔を赤く染めて呆れかえる。


「私もう寝るからね!」

「ふえ~い」


階段を上る舞の背中に、不貞腐れた口調の返事が追いかけた。


「…さてと」


舞が居なくなったのを確認すると、三月兎はカイトに念話した。


「おう、今起きてるか?」

『はぁ、何すか?』

「ちょっと相談あんだけどよ、下まで来てくんねえか」

『はぁ…りょーかいっす』


念話を切り、三月兎(早苗)は暴力的な笑みを浮かべた。まるで馴染みの法師に対するように。


「で、相談って何すか?」

「おう、ちょっとツラ貸せ」

「えっ?」


脳内疑問符だらけのカイトに、三月兎は顎をくいっと動かし、庭に出る。


「あのぉ…?」

「おうちょっとな、モーション入力教えろ。30分ぐらいでいい」

「へっ?」


カイトの目が点になった。

今まで戦闘訓練に類するモノは碌にして来なかった人だ。

気休め程度に、庭で簡易の的を設置してポコポコとやっていた程度なのだ。それもコマンドメニューからぎこちなく。

それが急にやる気を出すなんて。


「い、一体どうしたんすか?俺はいいっすけど…」


早苗(三月兎)の目が本気(マジ)だ。口は笑って…否、嗤って(・・・)いる。

カイトはその迫力に気圧され、少したじろいだ。

それはレベル云々では無く――それを言うなら逆であろう――原始的な恐怖に因るものだった。


「あぁ、ちょっと悪戯思い付いたんだ」


三月兎の眼がつり上がる。口が更に裂け、ギイイ、と言う擬音が聞こえた気がした。


「い、いたずらって…だ、誰に…?」


殺気に一歩後ずさりしながら、カイトの喉がゴクリと音を出す。

三月兎はドスの効いた低い声で、ごみを思い出すような顔つきで呟いた。


「ハーメルン」






    ◆    ◆    ◆






東の空が明るくなってきたが、日の出にはまだもう少し掛かるだろう。

西の空はまだ暗く、冒険者もまばらなアキバの街を、陽輔はフラフラと散歩していた。

あまり眠れなかったため、こうして外をぶらつく事にしたのだ。

昨日の事を思い出し、ついつい溜息が出る。

休憩後、昼過ぎに周辺のゾーンを見回り、不届き者共を神殿送りにした。

やはりモンスター達を相手にするのとは違う。

昨日リリーを助けた時もそうだった。生々しい手の感触が思い出される。

それだけでは無い。

助けた者たちを街に送り届け…そこであの光景を見た。

中堅クラスの冒険者が、幾人かの初心者たちを従え、街を歩いていた。

初心者たちは皆ボロボロで、リーダーらしき妖術師の男は、さっさと歩けだの今日もノルマが云々と急き立てていた。

レベル20を少し超えたぐらいの武士の少年が似たようなレベルの吟遊詩人の少女に肩を貸し、男の背中を睨みつけながら黙々と歩いていた。

周囲の者は誰も咎めない。

皆自分の事で精一杯だし、そもそも他のギルドの事だ。

それぞれのルールが有り、それに則っているのだとすれば、口を出すのは逆に迷惑になる。


――ハーメルン。


そのギルドは現在噂になっている。

初心者を保護すると言う名目で軟禁し、EXPポッドを売り捌いているそうだ。

取引相手には<黒剣>や<銀剣>と言った大手戦闘ギルドも居るらしい。

背後の巨大スポンサーを敵に回すような事はしたくないのだろうと言う事も理由の一つだろうか。

実際、陽輔もそれを聞くと尻込みしてしまう。

<ホネスティ>全体でなら張り合えるだろうが、一人で(ソロ)、或いは仲間たち(ヘリオポリス部隊)だけで相手には出来ない。

いつの間にか足を止め、大通りの真ん中でまだ仄暗い空を見上げる。


ぎりりっ。


陽輔は、歯噛みをしてまだちらほらと残る星を見つめた。

良いのか悪いのか、傍から見れば他の冒険者たちとそれほど雰囲気が変わらず、周りに溶け込んでいる。


「…ちっ…」


心の内側から湧き上がって来るムカつきを舌打ちで追い払うと、再び歩き始めた。

そのまま直進し、北側の入門ゲートが見えて来る。

そこで、ある見知った集団が視界に入った。


「あれは…」


シロエ、直継、マリエール…他、<三日月同盟>のメンバーたちだ。

そう言えば、最近シロエたちが良く出入りしていると耳にした。


「ホンマにええんか?」

「えぇ、僕たちでススキノに行ってきます」

「大丈夫、忍びの密命に失敗は無い」

「シロエ様、直継様、アカツキちゃん、宜しくお願い致しますね」


断片的に聞こえてきた会話はそんな内容だ。

シロエ、直継、アカツキの3人は、そのままアキバの街を離れ、北の方へ旅立って行った。


(ススキノ?そんな所に一体何の用が…)


シロエと直継はグリフォンを持っているから、交通手段としては確保出来る。

一緒に付いて行ったアカツキと言う少女は分からないが。

いずれにしても、彼らは何かやる事が有るのだろう。正直羨ましい。

見送った後、マリエールたちがギルド会館に帰って行く。

陽輔は遠巻きにその様子を見つめていた。

ふと、彼らの後姿が昨日のハーメルン一行と重なる。

もし悪徳ギルドでは無く、アキバの向日葵に出会っていたら。

あの少年たちも少しは違ったかも知れない。

陽輔は俯き…また顔を上げ、空を見た。先ほどより白くなり、日の出までもうすぐのようだ。


「…はぁ…」


再び溜息が出る。

自分の力は所詮微々たるモノだ。果たして自分に何か出来る事が有るだろうか。

もしかしたら、何も変えられないかも知れない。無力感が心を軋ませる。

陽輔は再び前を向き、第3ビルに踵を返した。

歩きながら少し考える。もし仲間たちが居なかったら。

きっと自分も腐っていたかも知れない。<ホネスティ>には所属してるから、座り込んだりは無いかも知れないが。

そう考えると背筋が寒くなる。<ホネスティ>にも所属しているし、恐らく自分は幸運な方なのだろう。

彼は日の出と共に、ビルの玄関に足を踏み入れた…。

兎さんのいたずらは……番外編でもいいですかねw

いえただ単に本編に書くのがメンドイだけですすみません。

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