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太陽の貴公子  作者: みずっち
4/19

第4話

今回借りた二次キャラ


ホネスティ本部:十条=シロガネ・土方歳三

シブヤの情報:片翼の天使ギルファー

シブヤの冒険者:ストレリチア

森のゾーン周辺:ユウ

―――<大災害>から10日目―――




話をした翌日から、連携訓練とレベル上げをこなしつつ、引っ越しの準備を進めていた。

ただし、引っ越しとは言っても、凜太郎と文絵以外は<魔法鞄>を持っている上に、ドロップアイテム以外には荷物があまり増えていないので、荷物を纏めるのは、それほど時間は掛からない。

今日は全員、午前中ずっとギルドハウスに居た。荷物の最終確認をするためだ。備え付けの倉庫からポーション等を少し持ち出し、荷物に追加はしたが、他に目立った作業は無かった。

尤も、アキバでの拠点をどうするかという問題は有ったため、本部に聞いてみる事になっていたが。


「昨日と一昨日、十条さんや土方さんたちに相談してみたけど、僕らがゲーム時代に拠点にしていた第3ビルは空きが有るそうだよ。4人なら大丈夫だそうだ」

「そうですか」

「じゃあ、そちらは一先ず安心、ですね」


陽輔と比呂が、ジョージから報告を聞く。

ゲーム時代、住居はそれほど問題では無かった。ログアウトすれば良かったからだ。だがこうなった今、それは大問題になっている。

<狂宴>にはギルドハウスが有るので問題ないが、大手ギルドやソロプレイヤーなど、人数の問題が顕在化しているのだ。

ホネスティも例外では無い。何せ数百人のギルドメンバーが居るのだ。確保するだけでも一苦労である。

更に言えば、アキバ全体で恐らく一万数千人の冒険者が居る。空きが有ったのは幸運だろう。


「あぁ、そうだ」


ジョージが思い出したように付け足す。


「ギルファー氏の話を聞いたけど、どうやら自警団みたいなのを作るらしい」

「自警団?」


陽輔が聞き慣れない言葉に首を傾げる。正確には、日常会話の中ではあまり出てこない、という意味で。


「うん、有力なギルド、或いは腕に覚えの有る人たちを集めて、弱者、この場合は大地人と低レベル冒険者(プレイヤー)って事になるけど、彼らをPKとかから守るのが目的だそうだ」

「で、返答は?」

「…僕たちがアキバに移るからね。こっちに残るメンバーを伝えて、ホネスティとしては中立を保つと言っておいたよ。ただし、理念は共感出来るから、情報交換はすると、ね」


確かにホネスティ(このギルド)は情報収集が本来の目的だ。消極的な協力――仕方ない部分では有るかも知れない。


「それから、ガックリちゃんたちがこっちに拠点を移すそうだよ」

「たち!?…くそっ、あいつらこっちに来んのかよ」


ジョージのセリフに、ヤッホーが舌打ちをして苦笑いを浮かべた。

要するに、陽輔たちと入れ替わりに、<出落ちカルテット>がシブヤに揃うという事だ。


「ぷっ!顔文字四人が揃うなんて」

「おいウィリー、笑うんじゃねえよ」


失笑を必死に抑えるウィリーの反応に、ヤッホーが眉間を揉みながら肩を落とす。


「まぁ仕方ないよ、ヤッホー君が残るって連絡したら、『<出落ち>シリーズが揃わないなんてどうかしてるぜ』なんて言ってたし」

「ちくしょー!勢ぞろいなんて、ますますあのおっさんたち(ミナミの連中)に笑われちまう!」


ルーシーが、往年の芸人の決め台詞を真似たガックリの言葉をそのまま伝えると、<出落ち施療神官(ヤッホー)>は頭を掻きむしって唸った。

実は、<出落ち>と名付け、広めたレオ丸たちに対する態度は、ヤッホー(施療神官)ガックリ(武士)ではほぼ正反対で、あちら(ガックリ)は寧ろ面白がって自分から名乗っている。

因みに、アボーン(暗殺者)プギャー(妖術師)は関心があまり無いようで、この話題については中立的、どちらかと言うと無視を決め込んでいた。

要するに明確に嫌がっているのはヤッホー1人だけという肩身の狭い思いをしている。



~名付けられた時のチャットログ(一部抜粋)~


\(^O^)/『ちくしょう、おめーらどう思う』

/(T∀T)\『私は別に…』

m9(^Д^)『僕も同じく』

orz『出落ちだって!出落ち!!やっぱり関西の人たちいいわ!』

\(^O^)/『何が面白いんだよくそっ』


~ここまで~



顔文字と態度が真逆なのは皮肉というべきか。


「全員揃うなんて、なんか楽しみですねぇ」

「何でだよ」


比呂がワクワクしているのを見てヤッホーが突っ込む。周りは更にそれを見て肩を震わせていた。






    ◆    ◆    ◆






太陽が中天を過ぎた頃、味のしない昼ご飯を食べ終わり、めいめいに休憩を取っていた。


「ふんふふ~ん♪」


ロビーの隅で、舞が針仕事をしていた。鼻唄は、昔流行ったポップスだ。

針仕事と言っても、コマンドから作成するという作業で、サブ職のレベルアップをしているだけだが。

サブ職業の経験値とレベルの構造は至極単純で、一律10段階で次のレベルに上がるようになっている。

大手ギルドになれば、素材アイテムもそれなりに有るので、内職(レベル上げ)も結構なレベルまで出来るのだ。


――ピロリ~ン♪――

――レベルが上がりました――


「…52かぁ、えへへ♪…あ、そうだ、アレンジ出来るかな」


<魔法鞄>から小物入れを取り出し、手作業(・・・)で素材を縫い付けて行く

キラキラとデコレーションされたカチューシャが完成した。


「やった!ふふっ…♪」


レベルが低かった数日前には、少し縫っただけで失敗し、ぐちゃぐちゃになっていたが、今回は成功したらしい。

レベルを上げると、手作業の可能な範囲も広がるようだ。


「よいしょっと…」


彼女は再びレベル上げ(内職)を始めた。


「あれ?舞ちゃん何してるの?」

「あ、陽輔君」


ロビーの端に舞を見つけ、陽輔が声を掛ける。裁縫師のレベル上げをしている、と聞かされた。

マーチヘアとルーシーに相談したら、二つ返事でOKを貰えたらしい。


「そっか、高レベルの布鎧とかも作れるようになるしね」

「うん♪文絵さんは付与術師だから…陽輔君も盗剣士だし」

「確かに、僕らは重い金属鎧は付けられないしなぁ。ていうか舞ちゃんもだよね」

「あ、そっか」


自分の事は忘れていたらしい。二人でクスリと笑った。


「陽輔さん!舞さん!」

「凜太郎君?どうしたの?慌てて」


2階の廊下から、手すりを乗り越えそうな勢いで2人を見下ろしながら、武士の少年が叫ぶ。

見ると、窓の外を指差し、興奮気味である。


「い、今、全身白ずくめの狼牙族の人が通りを歩いてたんです!」

「へぇ~、全身白ずくめね…確かに珍しいけど、そういう人も居るんじゃないかなぁ」


そもそも体の色は自由に設定できる。陽輔も髪の色は山吹色だ。装備品含め、全身白で統一したプレイヤーが居てもおかしくない。

そして、聞く所によると薄紫の簪を付けていたそうな。


(そう言えばそんなイベントアイテムが有ったような…)


あれは2年ほど前のイベントだった。確か、バレンタインデーだったか。

<菫羽根の簪>――期間限定のレアアイテムではあるが、これだけ冒険者が居れば、持っている人も何人かは居るだろう。

実際値は張るが、マーケットにも幾つか流通しているし、支部の倉庫にも幾つか保管してある筈だ。


「まぁそんなもんだよ」

「はぁ…そんなもん、ですか…?」


陽輔の冷静な態度に、少年は拍子抜けしたらしい。すごすごと部屋に戻って行った。

エルダーテイルに馴染みが無いため、珍しいモノは興味が湧く対象になるようだ。


しかし…。


(白い狼牙族?…どっかで聞いたような…?)


陽輔は首を捻った。その特徴は記憶の片隅に有るのだが、思い出せない。多分、それほど接点が無かったのだろう。


(まぁいいか)


彼は暫く放っておく事にした。ひょんな事から思い出すかも知れないし。






    ◆    ◆    ◆






昼過ぎ、機械時計によれば、午後3時をまわった所のようだ。

移住組が街の外に出て来た。居残り組は見送りである。

念のために街から少し離れ、周りに誰も居ない事を確認して、それぞれの召喚獣を呼び出す。

陽輔とカイトはペガサスを呼んだ。グリフォンは持っていないため、欧州サーバでペガサスの笛を手に入れたのだ。

ゲオルグ(竜使い)ジョージ(召喚術師)がそれぞれ赤色と青色のドラゴンを呼び出した。ドラゴン種は図体がデカいため、4~5人が一度に乗れる。


「あの、何で周りを確認するんすか?」

「ゲーマーは嫉妬深い人も居るからねぇ」

「レア生物は妬まれたりするんだよ」

「なるほど…」


イーサンの疑問にウィリーとジョージが答える。


「来たぞ」


アキバの方角を見上げていたゲオルグがニヤリと笑った。

全員がそちらに顔を向ける。グリフォンとワイバーンが合わせて3頭、こちらに向かってくるのが見えた。


「はぁ…とうとう来やがった…」


ヤッホーがやれやれと言った感じで肩を竦める。


「うぃーっす」

「いえーい」


ガックリ(女武士)ルーシー(女妖術師)がハイタッチを交わす。


「ルーシーさんも皆さんも、現実の面影が有りますねやっぱり…ていうかヤッホーさん何悶えてるんですか?」


アボーン(女暗殺者)が全員を見回し、ヤッホーの苦笑に目ざとく突っ込んだ。


「たりめえだろうが。誰が好き好んで4人全員揃わなきゃいけねーんだよ、ったく」

「ヤッホー君は<出落ち>って嫌いだもんねぇ~」

「うるせえな、ちくしょうめ」


ガックリとヤッホーの掛け合い、というかこの雰囲気は、最早日常の事である。誰も気にしない。


「この人たちが新人さんですか?」

「うん、早苗さんの所に入ってもらったんだ」

「よ、宜しくお願いします!」


プギャー(男妖術師)にジョージが二人を紹介する。親子は慌てて頭を下げた。


「じゃあ、そろそろ行こうか」


顔合わせと一通りの世間話が終わり、ジョージの言葉を合図にして、それぞれ従者に乗っていく。

陽輔とカイトが、それぞれペガサスの背に乗る。舞は、陽輔の後ろにしがみつく。

残り6人が2体の竜に分乗し、空へと羽ばたいた。


「じゃあ、向こうに着いたらまた念話するよ」

「分かりました。お気を付けて」


ジョージと比呂が手を振り合い、それを最後に、4体の従者は空高く飛んで行った。


「凄い綺麗だね」

「そうだね」


ペガサスに乗り、陽輔にしがみ付きながら、舞は地上を見下ろす。目をキラキラさせて景色に見入っていた。

前をドラゴンが2体、横をカイトのペガサスが飛んでいるのが見える。


「あの、もうちょっと…離れ」

「え?何?」

「いや…何でも無い」


背中に生暖かい感触が二つ押し付けられ、陽輔がそわそわするが、舞は気付いて無い様子で、キョロキョロと見回している。


「あ、ねぇ、あれ何だろ?」

「え?」


舞が地上の或る一点を指差す。陽輔がそちらを向くと、冒険者の集団が見えた。

正確には、2つのパーティが対峙している。片方は怯え、もう片方はニヤニヤと笑っているようだ。


「なぁ陽輔、あれって…」

「うん…PK、かな」

「PKって…じゃあ、あっちのパーティは…」


カイトと陽輔の会話に、舞が悲しそうな表情を浮かべる。

少し距離が有るため、間に合わないかも知れない。そう思った時だった。


「おい、なんか来るぞ」

「黒い…影…?」


ドラゴンのスピードを合わせていたゲオルグが、別の方向を見る。

それは人の形をして、黒い風のように森を疾駆し、PKの現場へと向かっていた。


「あっ!」


1分足らずだった。黒い影が現場に着いてから、PK側パーティが全滅するまでの時間だ。


「ユウ、さん…?」


ほんの少しだけ見えた。以前、何度かクエストで一緒になった事が有る、女性アバターの暗殺者だった。

PKをしていたパーティは、泡と消えた。あの黒い影は、それを振り向きもせずに、何処かへと走り去って行った――。

今回からアラビア数字も使います(ー。ーA;


本当はもう少し続き書きたかったけど力尽きましたorz

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