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太陽の貴公子  作者: みずっち
17/19

第17話

幸村「控えおろ~!」(迫真

兎「この書類が目に入らぬか~!」(御前借用許可証・くわっと目を見開く

夜櫻「はは~!」(正座

朝霧「何で私が中央で三人ともノリノリなんだ」(左手に幸村・右手に三月兎

夜櫻「あーちゃん、そこはカッカッカッて笑う所だよ」

幸村「姉さんも楽しまなきゃ」

朝霧「だから何でノリノリなんだ」(眉間を揉む

フェイディット「はぁ…」(夜櫻に正座をやらされている


※お借りしたのは御前です

朝ご飯を食べた陽輔は、舞を呼び出した。


「なあに、話って?」

「あぁ、ちょっと過ぎちゃったけど…」


頬を掻きながら、ポツポツと話す。


「こないだ、誕生日だったよね」

「…あっ」


言われて気付いた。

そう言えば、二十歳の誕生日だった。


「僕も最近まで忘れてたんだけど」


そう言いながら、陽輔は<魔法の鞄>を漁る。

取り出したのは、昨日露店で買った指輪だった。


「露店で買った安物だけど、舞ちゃんに似合いそうだったから」

「えっ!?」


陽輔は、剥き出しの指輪を掌に乗せ、舞に差し出した。もう片方の手で頬を掻く。

舞にとっては寝耳に水で、目を丸くした。

こないだ何かを隠していたのは、この為だったのか。


「遅くなってゴメン…」


本気で申し訳無さそうに頭を掻く陽輔に、舞は感激して思わず抱き着いた。


「大好き!!」

「うわっ!?」


陽輔は指輪を咄嗟に握り、両腕で舞を抱きとめた。冒険者の運動神経に感謝せねばなるまい。


「あ、あり、が、とう…?」

「えへへへへ」


舞は陽輔の首に両腕を巻き付け、胸元に顔をスリスリと擦り付けている。

陽輔は、いつもの癖で舞の背中に手を回し、もう片方の手で舞の頭を撫でた。


「付けて」


落ち着いた所で、舞が左手を差し出す。


「うん…あれ?」

「どうしたの?」


舞の小指を持った陽輔が、首を傾げた。


「いや、小指サイズで注文したんだけど…」


指輪の方が大きい。注文ミスか?


「でもコレ…中指でも無いよね?」


舞が中指に嵌めようとするが、今度は小さくて嵌らない。


「「…まさか…!?」」


薬指にピッタリ嵌ったので、二人とも固まった。

数秒後、二人とも我に返ったが、一つ間の悪い事が有った。

イーサンが居合わせたのだ。


「み、右手なら良いよね!?」

「そ、そうだね!」


指輪を慌てて右手に付け替えるが、既に遅かった。

勘違いしたイーサンが、二人とも固まった所でその場を離れ、三月兎に念話を掛けてしまった。


「マーチさん、大変ッスよ!!」

『おう、イーサンどうした?』

「陽輔先輩がとうとう舞先輩にプロポーズしたっすよおおおおおお!!!」

『な、なんだってえええええええええええええ!!!!!』

「指輪渡してたんすよ!左手の薬指っすよおおおお!!」

『うおっしゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』


一先ず報告したイーサンは、そこで念話を切り、カイトに報告しに行った。






    ◆    ◆    ◆






イーサンは一つ失敗を犯した。

連絡したのが三月兎だった事だ。

テンションの上がりきった三月兎は、有頂天になり、念話を掛けた。

相手が朝霧だったのは、不幸中の幸いかも知れない。


「しぇんぱい!しぇんぱい!しぇんぱい!」

『何だ煩いぞ、一体どうした?』


テンションが上がっている時は、相手の都合などお構い無しだ。


「陽輔と舞が婚約したっすよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

『ほう、本当なら目出度い事だな。だが早苗、本人たちにきちんと確認したのか?』

「…えっ?」


不意にそんな事を訊かれ、三月兎の目が点になった。

朝霧としては、情報の鮮度と共に、精度も確認したかっただけだ。

人間というモノは、信じたい情報だけを選択しがちであり、特に三月兎は、陽輔と舞の事になると、その傾向が強くなる。

だから、朝霧としては、三月兎からの二人に関する情報については少し慎重になっただけである。


『…早苗、誰から聞いた?』

「おぅ、イーサンからっすけど」

『つまり、又聞きと言う事だな?』

「…あっ」


朝霧の順を追って諭す様な口調に、漸く三月兎の理解が追い付いた。同時にテンションが落ち着く。


『私以外に、他には話したか?』

「いえ、先輩が最初っす」

『ならまだ大丈夫だな…本人たちに聞いてみろ、本当だったら今度こそ祝ってやる』

「うす」


念話を切った三月兎は、早速舞に連絡を取った。


『あ、叔母さん、どうしたの?』

「おう、婚約したって聞いたんだけど」

『えっ!?誰から聞いたの!?』


イーサンの事を伝えると、念話の向こうで、陽輔の「後で〆る」と言う声が聞こえて来た。


「何だぁ、違うのか…」


事情を聞いて念話を切った後、三月兎はあからさまに肩を落とし、再び朝霧に念話を掛けた。


「あ、先輩…」

『…その様子では、どうやら空振りだった様だな』

「あい…」


流石朝霧だ。テンションの差だけで見抜いたらしい。


「かくかくしかじかで…」

『はぁ…お前なぁ…』


事情を話すと、溜め息を吐かれた。


『いつも言ってるだろう、本人たちのペースに任せろと…後、早とちりは厳禁だ』

「すんません…」

『まあ良い、イーサン君には陽輔君から注意が有るだろうから、お前は状況だけ確認して放置しておけ。くれぐれもちょっかい出すなよ』

「あい…」


最後は、釘を刺された。






    ◆    ◆    ◆






イーサンは、陽輔と舞とカイトに頭を下げていた。


「すんません…」

「まあ、被害が軽微で良かったけど…」


あの後、三月兎からも謝罪が有った。

朝霧には話したらしいが、他には言ってないとの事で一安心だ。

叱られたのは、まあ何と言うか、こちらとしてはご愁傷様としか言えない。

一方で、カイトの方は朝霧同様に冷静だった。

イーサンから聞いた後、陽輔に念話を掛け、詳細を確かめたのだ。

カイトの場合は、ホネスティに所属しているので、普段から情報の扱いに気を付けていただけだ。

知り合いの事なら尚更である。


「イーサン、陽輔と舞ちゃんの第一報は、マーチさんにはあまり言わない方が良いぞ」

「うす」

「せめて確定してからな」


イーサンはカイトの言葉に頷いた。

まぁこれで一安心か。


「叔母さんには参っちゃうよね」

「まあね」

「いつも通りっちゃいつも通りなんだけど…」


三人揃って溜め息を吐いた。






    ◆    ◆    ◆






数日後


「ほな行くで~!」

「マリエさん張り切り祭りだな」

「念願の海ですからにゃあ」


直継とにゃん太が雑談を交わす中、総勢三十五人の冒険者一行がアキバを立った。

兎「所で先輩」

朝霧「なんだ?」

兎「休みは?」

朝霧「夜は寝てるぞ」

兎「そう言う事じゃないんすけど…」

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