青い本能
この小説は企画小説です。
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目を覚ますと、青の世界……それとも視界が青いのか? 青といっても、絵の具で塗りつぶしたような単純な青ではない。青色透明、といえるだろう。
「ここはどこなんだ?」
お決まりの台詞だって出てくる程に、謎なのだ。ここへ来る前に何をしていたのかも思い出せない。
まるで、海にいるような感覚。しかし、息苦しくもなく、水に濡れた冷たさや衣服の重さもない。
くるくる回って、泳いでみた。動きは軽やかだ。簡単に泳げる……、つまり浮いているのか? それにしても、不思議と落ち着くこの温度。どこかで感じたことのあるような……。母親に抱き締められたとき? いや、違う。わからない。わからないけれど、なんだか心地よくて、ここがどこなのかなんてどうでもよくなってきた。
辺りを見回して気付いた。上へ行くほど明るい青に。そして下へ行くほど暗い青になるようだ。
落ち着くとはいえど、さすがに暗い青に行くのは不安を感じた。そうすると必然的に、体は上へ向かう。
上へ行くほどなんだか騒がしくなってくる。先程の空間はほぼ静寂に近い状態だったから、そこまで騒がしくなくとも、騒がしく感じてしまう。心地よいはずなのだが、これ以上上に行けば、心地さが壊れる気がしてやはり下へと移動した。
深く、暗い青。自分まで溶けていきそうな青は、先程の不安も溶かしてしまったのだろうか。今までで一番心地よいのだ。
本能だろうか。溶けてしまいたいとさえ思えてきた。
(もっと下へと進めば、溶けてしまうのだろうか……? それなら本望)
そして、その思いに従おうと、体を動かした瞬間。
物凄い勢いで体は明るい方へと引っ張られていく。そしてしだいに、騒がしくなり……
「……っ……おきろっ」
微かに声が聞こえた。
「おいっ!」
声は大きくなる。
そして。
バシッ
あまりの痛みに声も出ず、目を開けるとそこには、
クラスメイトの笑い声と視線と、怒りに満ちた先生が仁王立ちする姿があった。