永久欠番
「てかさ、私達メアド交換してないよねぇ。」
ふぅと爪に息を吹きかけながらさおりは笑う。
言われてみたら確かに。
「だって30秒で会えるし。考えたことなかった。」
さおりと俺は幼なじみで家が近所だ。
用事があれば呼び鈴を鳴らすのが癖になっていた。
「交換、しとくか?」
使わないだろうけど。
さおりは携帯を顎でさす。
マニキュアのせいで取れないから取って、という意味だろう。
勝手に登録していく。
「ん?」
「なぁに?」
「なんで5空いてんの?」
登録している人は結構いるはずなのに。
さおりは不意に目をそらす。
「あぁ、まぁなんだ。空けといて。」
その表情でなんとなく分かってしまう。
ずっと一緒にいるとこういう時辛い。
さおりはきっと今誰かを思い浮かべてる。
昔登録していた人を。
この場所はきっと埋まらない。それがなんだか凄く悔しかった。