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夏の薫り  作者: 剣一
25/26

第24話

更新が遅くなってしまいすいませんでした

24話を投稿します


久々に長めのお話です

ぜひ読んでみて下さい

「ねぇ、母さん。」

僕は晩御飯を食べている母さんに話し掛けた。

「どうしたの?」

「ゴールデンウイークどっか旅行行くの?」

「あら、言ってなかった?」

僕は母さんのそのすっかり忘れていた様子に小さく溜め息をついた。

「全く聞いてないよ。別に行く気はないけどちゃんと教えてよ…」

「ごめんね。すっかり言った気でいたわ…。」

「まぁ別に良いけどさ。今回はどのくらい?」

「四泊五日くらいしちゃおうかな〜って考えてるのよ。どうかな?」

言い忘れていた事を気にしているのか言い終わった後、母さんは僕の顔をチラリと見た。

「うん、良いんじゃない?まぁゆっくりして、疲れ取ってきなよ。」

「ありがとうね、隼人。じゃあまた留守番よろしく頼むわね。」

「分かったよ。」

僕はそう答えると、部屋に戻って、再び勉強に取り掛かった。


ゴールデンウィークの初日、天気は申し分ないほど晴れ渡っていた。

「じゃあ行って来るわねー」

「留守番よろしくな。」

僕は出発する両親とおばさんの見送りに玄関まで出ていた。そしてそこには薫さんも来ていた。

「薫さん、色々とよろしくお願いしますね。」

「はい、任せて下さい!」

「じゃあ行ってきまーす。」

母さん達はそう言うと、父さんの車に乗り込み、出発した。

「あっ、隼人君。」

「はい?」

薫さんは車が見えなくなると、振っていた手を下ろしながら笑顔で話し掛けてきた。

「あのね、おばさん達と話して決まったんだけど、旅行の間は隼人君の家に私が泊まる事になったからよろしくね。」

「え?」

「家事だって私がした方が隼人君の負担にならないだろうし、それにまた倒れられちゃったら困るしね。じゃあ荷物だけ持って来るから待っててねー」

薫さんはそう僕に告げると、走って戻って行った。

僕の頭の中に母さんのある言葉が思い浮かんだ。

『四泊五日くらいしちゃおうかな〜』

「四泊…五日も?…」

僕は薫さんが荷物を持って、再びやって来るまで、驚きで動く事が出来なかった。


「じゃあ、隼人君、改めて短い間だけど、五日間よろしくね。」

「は、はい…」

今、僕達はリビングでお茶を啜りながら向き合っていた。そして、僕がちゃんと理解をするために、もう一度薫さんが説明してくれたところだった。

「とりあえず、家事全般は私に任せてくれて大丈夫よ。だから隼人君は勉強頑張ってね。だからって、倒れるまでし過ぎるのは駄目だからねー」

「も、もう倒れませんって…」

「ならよろしー」

苦笑いをする僕の頭をポンポンと撫でると

「ほーら、後片付けは私がやるからちゃちゃと勉強してきなさーい。」と、薫さんは僕を部屋へと追い返した。

僕は部屋へ入ると、すぐに勉強を開始した。


カチッカチッ


時計の音が響く―


カッカッ


ペンの音が響く―


「よし…次は単語だ。」

いつの間にか窓の外は陽が落ちかけていた。僕は問題集を閉じ、元に戻してから、単語帳を取り出した。と、ちょうどその時、ドアの向こうから声が聞こえた。

「隼人君、ちょっと今から晩御飯の買い物行って来るから、鍵閉めてもらっても良いかしら?」

僕はほんの少し前に取り出した単語帳を見ると、僕は立ち上がった。

「僕も一緒に行きますよ。」

僕が上着を羽織って、部屋から出ると、薫さんは少し驚いていた。

「でも、勉強は?」

「一日中机に向かっていたら気が狂っちゃいますよ。気晴らしです。」

薫さんは少し僕の顔を見て、考えると笑顔でこう言った。

「じゃあ一緒に行きましょっか〜」


鍵を閉めて、歩き出す。

「今日の晩御飯は何ですか?」

僕がそう尋ねると、薫さんは苦笑いしながら答えた。

「何しようかまだ決まってないのよね〜隼人君は何食べたい?」

「ん〜何でも良いですよ。」

「う〜ん…まぁ見てから決めましょうか。」

「そうですね。」

くだらない話をしながら歩いていると、目的地であるスーパーにすぐに到着した。

僕がカゴを持ち、二人でゆっくりと歩き始めた。

「野菜は結構あったのよね…」

「だったら簡単に野菜炒めにするのはどうです?」

「隼人君はそれでも良い?」

「はい。」

「じゃあそうしましょっか。」

そう言うと薫さんと僕は青果売場の方へと歩き始めた。

少しだけ野菜を選んでカゴにいれ、今度は豚肉を選び、レジへと向かった。


「私が持つよ?」

帰り道で僕の隣を歩く薫さんが僕が持つレジ袋を見てきた。

「これくらい大丈夫ですって。」

あまり購入しなかったため、レジ袋は1つですんでいた。

「んー…悪いわよ…」

薫さんは口を尖らせて呟いた。

「じゃあ変わりにめちゃくちゃ美味しく作って下さいね。」

「もぅ…隼人君が作った方が美味しいじゃない。」

「そんな事ないですよ。薫さんの方が断絶上手ですよ。」

そんな会話をしていると、すぐに家に到着した。


「後は私がやっとくわよ。」

買ってきた物を冷蔵庫に入れていた僕は振り向いた。

「じゃあお願いします。」

そう言って僕は薫さんに残りを渡すと、部屋へと戻って行った。

「出来たら呼ぶわね〜」

階段を上る僕の背中にそんな薫さんの言葉が届いた。

僕は

「はーい。」と返事をして、部屋へと入った。


「どう?」

薫さんが見つめる中、僕は飲み込んだ後、思ったままの言葉で答えた。

「すごく美味しいです。」

「良かった〜」

薫さんの作った料理はやっぱりとても美味しかった。

「受験は大変でしょ?」

「まぁ…んーでも受験する人はみんな同じ思いしてる訳ですし…そう考えると、あまり辛くないですね。」

「そうよねぇ…

私なんて附属高だったから分からないのよね…」

この時、僕は自分が薫さんの事について全くと言っていい程、何も知らないという事に気が付いた。

「附属だったんですか…

薫さんの学生時代ってどんな感じでした?」

「…学生時代か。」

その時の薫さんの顔にはとても悲しく、切なく、心の弱い部分全てが表れたような、そんな表情だった。しかし、そんな表情に対して僕はとても綺麗だと感じていた。

いや、実際僕以外の誰が見ても見惚れていただろう。

その日、僕は学生時代の薫さんについてたくさん知る事が出来た。

三年間、学級長をしていた事、仲の良い女子三人といつもいた事、進路では母親と喧嘩した事など本当にたくさんの事を話してくれた。

それでも僕には何が薫さんのあの表情を作る引き金になったのか理解する事は最後まで出来なかった。

「あら…何か凄く話しちゃったわね。

後片付けは私がやっておくから、隼人君は先にお風呂にでも入って来ちゃいなさいよ。」

「薫さん…」

僕の頭は別の事を考えていた。

「なぁに?」

食器を流しに運んでいた薫さんが振り向く。

僕はゆっくり呟く。

「…か、片付け僕も手伝いますよ。」

僕は一言、僕の気持ちを告げる事は出来なかった。

「じゃあ…ちょっとだけお願いね。」

そう答えた薫さんの表情は先程までのあの表情の影は微塵もなかった。


今回も読んでいただきありがとうございます


今更ですが月日は経つのは早い物で、いつの間にか1年半ほど経過しています

年上だった隼人もいつの間にか自分と同い年になり、時間軸では現実の方が先に進んでる事になっています(夏の薫りの24話最後の部分がGW中に対し、現実は5月末)

1年半も経過したのにまだ24話しか書けていない自分ですが、日々確認してくれている読者の方々がいると言う事はとても励みになります


少しずつ完結に向かっていっているこの話を自分の満足のいく形で完成させ、皆さんに読んでいただけるようにこれからも遅筆ながらも頑張っていきたいと思っているので宜しくお願いします


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