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夏の薫り  作者: 剣一
2/26

第1話

改めて投稿します


再編集したこの作品、よろしければ読んでいって下さい

起き上がる女性の顔が僕の視界に入った。

その女性はとても綺麗な人だった。

それぞれが自己主張していない整った顔、何物にも染まっていないくらい真っ白な肌。そして、肌とは対処的に夜空のような黒髪。

僕は何も考えずに動いていた。

「大丈夫ですか?」

声をかけながら、落ちた鞄を拾い上げる。

「あっ!?

は、はい、ありがとうございます。」

恥ずかしさからか、その女性の頬に紅が差した。

「ど、どうぞ。」

僕は少し吃りながらも、女性が立ち上がるのを待ってから鞄を渡した。それから僕は何事もなかったかのように改札へと向かった。

正直、何か期待していたと言ったら嘘ではない。しかし、あんな事で何かが起こる程現実が甘くはない。

もっと話し掛けたりすれば良いのかもしれないが、僕はこれ以上行動を起こせる程の勇気は全くと言って、持ち合わせていなかった。

鞄を渡した時に微かに触れた手の温もり、微かな残り香。僕はそれだけでも十二分に喜びを感じる事が出来た。


「あぢぃ…」

汗を落としながら、家へと向かう。駅から家まで歩いて約5分かかる。

舗装された道はとても歩きやすい。しかし、逃げ道を失った熱はその場を靄のように漂い続けていた。

Yシャツがびしょびしょになる頃、僕は家に到着した。鍵を取り出し、ドアを開ける。

「ただいま〜」

僕に言葉が返ってくる事はない。両親が共働きの僕の家ではいつもの事である。

寂しくないと言えば嘘になるだろう。しかし、僕はもうそんな日常に慣れた。何年もこんな生活を続けていれば嫌でも慣れてくる。だからと言って両親を嫌っている訳ではない。確かにいつも口うるさいし、鬱陶しい時もしょっちゅうある。しかし、その時の嫌いという感情は僕の本当の感情ではないという事くらいは簡単に理解出来る。


部屋に行かずに、リビングで制服のYシャツを脱ぎ、脱衣所にある洗濯機に入れに行く。

両親がほとんどいないので家事は全部と言って良いほど僕がやっている。料理もかなりできるようになった。

僕は洗う予定だった他の衣服を洗濯機に入れ、スイッチを押した。


部屋に戻り、そのまま軽く部屋の片付けをした。

「よし…」

それが終わると僕は家用のラフな格好に着替え、そして昼御飯を食べるためにキッチンに行った。

「この棚に入れたんだけどな〜」

数日前にまとめ買いしたカップラーメンを探す。カップラーメンは入れたはずの棚で見付ける事は出来なかった。

ふと嫌な予感がした僕はゴミ箱を開けてみる。そこには僕の予想した通り、空の容器が他のゴミと共に入っていた。

「最後の一個だったのに…食われたぁ…」

多分親が食べてしまったのだろう。

買いに行くのも面倒くさい。僕は冷蔵庫を開けて、簡単に何か作れないか考える。しかし、そこには晩御飯のために買っておいた食材しか無く、何かを作ろうとする事はほぼ不可能だった。

結局僕にはコンビニに行くしか昼御飯を取る方法はなかった。


ガチャ

鍵を閉める。

玄関の外では暑さが僕を待ち構えていた。

ただまだ喜ばしい事にコンビニは家の近くにある。だらだら歩いていてもすぐにコンビニに到着した。

自動ドアの向こうはガンガンにクーラーが効いていた。出始めていた汗がすぐに引いていくのが分かった。

僕は商品を見て回り、結局既に作られている冷やし中華を手に取った。会計を済ませ、再び真夏の太陽が降り注ぐ道路に出ようとした。

その時、僕は先程の女性とすれ違った。

制服から着替えたからか、その女性は振り向いた僕には全く気づかぬ様子で店内に入って行った。

「…」

僕はゆっくりと歩き出した。


帰宅後、冷蔵庫から冷え切った麦茶を取り出し、コップに注いでから一気に飲み干す。

改めて考えてみると、あの女性はあまり大きくない駅の同じ改札へ続く階段にいたのだ。この辺りで見掛けても不思議ではない。

僕は空になったコップに再び麦茶を並々と注いだ。

「さぁ食べるかー」

袋から取り出し、蓋を開ける。具を麺の上に乗せ、つゆをかける。

「いただきます。」

麺を啜りながら僕はまた会ってみたいと考えていた。会ったとしても別に話し掛けたりする訳ではないから正確には見掛けたい、と言った所か。僕はそんな淡い期待が叶うなんて微塵も思っていなかった。

食べ終わったゴミを捨て、僕は自分の部屋へと向かった。

部屋は夏の暑さで満たされていた。


今回もお読みいただきありがとうございます


この物語を執筆するにあたって、どのような流れが合ったのか軽く書いてみます


この話を最初に考え始めたのは2006年の秋の終わりくらいですね

それまでは自分自身で執筆するなどは考えていなくて、ただ周りの作品を読んでいくだけでした

ただ、色々な作品を読んでいくうちに自分でも書いてみたいという気持ちが少しずつ高まっていき、手探り状態で書き始めました

大まかなストーリーは本当にパッと浮かび、その時には最終話の形も出来ていました

そこに肉付けをしていったんです

ある程度進んでいくと、最初の方の話の文章が気に入らなくなり、編集

それを少しずつ繰り返しながら進めていきました


そんな感じですかね


これ以後の話も満足のいく編集をしていくので、自分自身の中でしっかりと完成した『夏の薫り』をお楽しみいただけると、本当に嬉しいです

これから、宜しくお願いします


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