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「いただきます」


 程なくして頼んだ物が全て揃い、倉山兄弟からすれば待望のご飯である。……あれ、ヒイラギは食べているのかな? 倉山達と一緒だったみたいだし何も食べていないんじゃ……?


「…………」

【ぐぅぅぅ……】

「あ、やっぱり」


 響き渡るお腹の虫の発信源はヒイラギから。本人は恥ずかしがっている素振りも見せず、私を見上げて何かを訴えているようだった。うん、言いたい事は分かる。お腹空いたから何か食べたいんだよね? 気付いてあげられなくてごめんね。そう言いたかったけれど、そしたらまたヒイラギが心配してきそうだったからやめた。


「ツナのサンドウィッチなら食べられる?」


 ヒイラギはペコリと一回だけ頷いたから追加で注文をすれば、あまり混んでいなかった事もあってかすぐに届けてくれた。ツナのサンドウィッチがテーブルに置かれた次の瞬間、ヒイラギは誰も取らないのに、誰かに取られちゃいけないと言わんばかりに掴んで、必死になって頬張り始めた。そんなにお腹が空いていたんだね。でも……。


「~~~~~~!!」

「ほら、そんなに急いで食べるから。ほらジュース飲んで良いよ」


 のどに詰まらせもがくヒイラギにジュースを渡すと、また物凄い勢いで飲まれた。もうそれ、ヒイラギので良いや。私はお冷やだけにしておこう。


「…………」

「ん? 何?」


 ヒイラギがまた目で訴えてくる。尋ねてみればまた紙に言いたい事を書いた。“あげる”と。もう空になりかけているりんごジュースのコップを差し出して。


「良いよ、ありがとう。ヒイラギが飲んじゃって良いよ?」


……ヒイラギってば、どんな姿形になろうとも優しく気遣う所は相変わらずだな。


「本当にあれはヒイラギなのかと疑うんだけど」

「言うな。思っても決して口にするな」


 なんか、この時ばかりはこんな何気ない倉山兄弟の会話にイラッとした。自分達だけご飯頼んでおいて、ヒイラギは放っておくって。本当なら私より先に気付くべきだったんじゃないの!?


「あ、お姫様も噛みつこうとしている?」

「んな訳ないでしょ!?」


 どうやら私もヒイラギと同じように睨んでいるように見えたらしい。本当、ヒイラギみたいに小さくなっていたら噛みついてやりたいよ。


「…………」

「あ、噛んだ……空気を」


 本当なら飛びついてでも噛みつきに行きたかったのだろう。テーブルに阻まれ、それも出来ず威嚇するかのようにヒイラギはサトルを見ながら空気を噛んだ。我慢の限界だったのかな。まさかとは思うけれど、私をいじめるなって言いたかったとか? いや、それはない……か。それにしても食べかすを付けながらやると、その威嚇力も落ちると思うんだけどな。


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