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「……で、調べて分かった事は三つ。一つ目、こうなった経緯は本人も知らず、難しい言葉は理解出来ない。

二つ目、喋れないけれど、幼稚園児が書くようなレベルのひらがなが書ける。

三つ目、俺達の事が分からないからか警戒心は強いが、保護者だからなのか玲さんの言う事は素直に聞く。

これ位だな……。あ、あとはある程度の事なら自分で出来るみたいだ」


 ちなみにと付け加えて倉山は今ヒイラギが噛み付かないのはお兄ちゃんに言われたからと言う事を教えてくれた。

 ああ、なんか言われてみればサトルを見つめるヒイラギの目、何だか耐えているように見える。元に戻る方法までは言っていなかったから、そこまでは分からないって事か……。


「ヒイラギ、私の事も分からないの……?」

「おい、岩代やめておけって! そいつもしかしたら、玲さんの言葉を俺とサトル“だけ”は噛むなって解釈しているかもしれないから、噛まれるぞ!」


 倉山が慌てるのを無視して、思わずそっと小さなヒイラギに触れた。だけど心配されていた警戒心は彼にはないようで。その手の指を小さな手で一生懸命掴んで、自分の頬に当てていた。よく分からないけれど、慰めてくれているのかな……?


「やっぱりヒイラギってお姫様がお姫様って分かっているのかな」

「どうだろ。だけど何か複雑だな。何で岩代兄妹には警戒心がないんだ?」


 不満そうな二人の会話が聞こえてきたけれど、私は今ヒイラギのこの行動にやや興奮気味だった。ただでさえこんな風に甘えてくる事なんてないから、どうすればいいのか分からないだけかもしれないけれど。本当にギャップがありすぎる。


「それで、どうするの? このまま一人にする訳にもいかないし……それに、確か今日ヒイラギ喫茶店の仕事の筈じゃ?」


 ヒイラギを抱っこして、サトルとほぼ同タイミングで立ち上がるとこの兄弟は揃って驚いた。忘れていたのかそれとも初めてそれを知ったのか。どっちの意味かは知らないけれど、だったら早く休む事を喫茶店のマスターかいなかったら、マスターの次に仕切っている人に教えてあげないと。

 倉山達も何も食べていないって言うし丁度良い。食事と連絡がてら、今後の話し合いをしようじゃないの。


「いらっしゃいま……ああ、君達か。優衣ゆいさんの代わりに小さな坊やを連れて来たのかい?」

「……え?」


 出迎えてくれたのはマスター。もう何度も来ているから名前も知られている私達を、いつもの優しい笑顔で出迎えてくれたのは良い……けど。ヒイラギ、今金色の目って事は死神状態だよね? 何で見えているの?


「岩代、それについては後できちんと説明する。だから今はヒイラギが来られない事だけ言っておけ」


 後ろにいた倉山が小声でそう言うから、言われたとおりにしておいた。悩みに悩んだ休みの理由は“急病”で。声がかれてしまっていて電話も出来ない状況だったから、代わりに伝えに来たとも。あながち間違ってはいないけれどね。

 当の本人はマスターを警戒して、睨んでいる。やっぱりマスターの事も分からないってことなのかな。お世話になっている人なのに。


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