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「まあ、こればかりは玲さん任せしかないな……失礼な言い方かもしれないけれど、時間に一番余裕のある人だし」
そういえばお兄ちゃんが調査しているんだっけ。ヒイラギがこうなった原因と元に戻す方法を。私が協力出来るのはヒイラギの相手をする位だけだから、何だか申し訳ないような気も……。
「早く元のヒイラギに会いたいな……このままでも別に可愛いけれど」
思わず本音が出てしまう。迷惑さえかけなければこのままでも良いや、と思い始めている自分がいるのが何だか嫌だ。お冷やを一口飲んで、大きな溜息を吐いた。そんな私を見兼ねてか、明るくしようとしたのか倉山が他の話題に話を変えた。
「そういえばさ、最初に此処に連れてくる時にちらっと見たんだけどさ……ヒイラギ着替えのパジャマ、着ぐるみばかりで驚いたよ。ヒイラギはちゃんと着たのか?」
「え? ああ、うん……」
そういえば着ぐるみばかりだったな。クマだけかと思ったら、コアラとネコもいたから驚いた。その種類よりもお兄ちゃんがそれだけ着ぐるみを用意した事に。着せられている本人は別にそんなのは気にしていないようで、着られればなんでも良いような感じである。
「何それ、凄く見たいんだけど……」
「あ、写真撮ってあるよ?」
見たげにしているサトルに、写真フォルダを開いてそのまま携帯を貸した。すると倉山も興味があったのか、サトルが受け取った携帯を覗き込んでいた。見せたのは三枚。クマ、コアラ、ネコのそれぞれの着ぐるみパジャマを着ているヒイラギの写真だ。見せれば瞬時にして二人は笑いを堪えているような素振りを見せる。普段のヒイラギと比較をしたらいけないでしょ? と思いつつも、比較してしまうとやっぱり想像出来ない。
「…………」
「え、自分の写真見たいの?」
絶対に本来のヒイラギなら照れながら“やめろ”と言うだろう。やっぱり小さいといろんなものに興味を示す物なのかな? クッキーの袋をテーブルに置くと、倉山達の方を見て、届かないその手を伸ばしている。
「サトル、返してもらっていい?」
「はい。良い物を見させてもらったよ」
サトルから返してもらった携帯を、今度はヒイラギに渡した。するとヒイラギは自分の写真を見てキャッキャッと笑っている。見られた事に満足したようだ。自分の写真なのに。