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 私の耳がおかしくなければサトルは確かに“ヒイラギ”と言った。いや、そんなまさか。

 だって人間……ヒイラギ人間じゃないけど、絶対におかしい。人間であろうと神様であろうと、背が伸びる成長はあっても背が縮む成長なんて有り得ない。

 だからこれはヒイラギじゃない。私の聞き間違いで実は“ヒイラギの子”でしたなんて話も絶対に認めない。


「うん……認めたくない気持ちは分かるよ、岩代。俺達もそうだったから」


 固まったまま何も言えないでいると、倉山は苦笑交じりでこうなった経緯を説明し始めた。そうだよ、一体何があったって言うの!?




 それは明け方に遡る。普段通りの仕事を終えて家に入ろうとドアに手をかけた俺達は、隣から変な音が聞こえてきてその手を止めた。

 どんな音だったかは言葉では上手く説明出来ないが、本当に変な音だった。隣の家はヒイラギの家。確かヒイラギは当分の間、刈る仕事は週に一度と限られていた筈。昨日やっていたから、今日は休み。もう起きる時間に近いとはいえ、起きる時にあんな音は出ない。

 一体何があったと言うのだろうか。気になった俺達はすぐにヒイラギの家に押し掛けた。ドアを叩いてもヒイラギは出てこない。鍵だって当たり前だけどかかっていて入れる訳がない。

 ぶち壊そうにも俺達に弁償する金額は払えない。だがそうでもしないとヒイラギの安否を確かめられない。覚悟を決めてぶち破ろうとした時だ。


「任せて。こう言うのは得意だから」


 するとサトルは何処からともなく一本の針金を取り出し、鍵穴に差しこんだ。

 ユキヤに教えて貰ったらしい。一体何時聞いたんだよ。って、言うか何の為にそれを学んだんだよ。まあ、こうして役に立ったから良いけどさ。


「開いた」


 五分もかからずサトルは見事にドアを開けた。早速俺達は慌ててヒイラギを探し出す。もし大怪我とか命に関わるような危険に晒されていたら、岩代になんて言えば良いんだよ。

 とにかく無事でいてくれ。だがヒイラギはそんな俺達の気持ちとは裏腹何なかなか見つからない。寝室にも居間にも。まさか誘拐か!? 嫌な考えが脳裏をよぎったかと思った次の瞬間。


「アキラ、来て」


 寝室の方からサトルの声が聞こえて来た。寝室は探したからもういないと分かっているのに、何故またそんな場所から。ふとそんな疑問はあったが、言われるがままに行ってみれば、サトルは無言でベッドの方を指差した。

 その時には居なかった筈の者がそこにはいた。ダボダボの寝巻姿で、何事もなく眠る子供……にしては小さすぎる。赤ちゃんが少し小さい位か? の多分男が気持ち良さそうにすやすやと眠っていた。こんなに騒いでいるのに起きないなんて、なんて眠りが深いんだ。


「……なあ、サトル」

「何? アキラ」

「これ、まさかヒイラギじゃないよな?」

「だってアイツ隠し子作るような奴じゃないし、作ったとしても岩代がかなりの大ダメージだし、

これだけ探しても見つからないし、そもそもダボダボのなんて最初から着せない」

「でもヒイラギが拾ってとりえず自分の着替えを着せただけとかってのも考えられない……?」


 それもあるとは思うが、だとしたらこんな小さいのを放っておいて何処かに行くか? これ本人に聞くのが一番だろう。


「…………」

「あ、起きた」


 気付けば起きたらしく、金色の大きな瞳でこちらを眠そうにじっと見ている。まだ思考が定まっていないのだろう。見つめ合う事数分。きちんと覚醒したのか、しっかりした目つきになったから名前を聞こうとした……のに。


「痛っ!」


 そっと出した手を思い切り噛んで来るとか。お前は獣か。


「何で噛むんだよ!? 俺はただお前の……」


 また手を出そうとしたら噛みつこうとしてくる。どうやらこいつは俺達を警戒しているようだ。これでは名前も聞けないではないか。駄目かもしれないけれど、“保護者”を呼ぶか。

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