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「お兄ちゃん……意外に楽しんでいないかな…………」
もしかしたらこの言葉もヒイラギの監視役のお兄ちゃんに届いちゃっているかもしれないけれど、本当にそう思ったのだから仕方ない。着せられた当の本人はきょとんとしたまま、これからどうすれば良いの? と言いたげに目で訴えていた。……髪、乾かしてあげよう。
*
「よし、終わった」
髪を乾かし終え、やっとヒイラギをお風呂に入れる全工程が終了した。後は私がシャワーを浴びるだけ。すっかりヒイラギに構っていてそんな余裕がなかったから、まだバスタオルのままだ。その間ヒイラギをどうするかはもう決まっている。
「よし、ヒイラギ。私今からまたお風呂入るから、お兄ちゃんのいる部屋分かるかな? そこで待っていて貰える?」
ヒイラギは少し考えた後、ぺこりと頷く。あえて場所を言わなかったのは、ヒイラギ自身がもう分かっていると思ったから。だって自分の監視役の人だし、その人がこの家の何処にいるかくらい分かる気がする。例え小さくなっていても。ただ、覗かれているようでちょっと嫌だけど。
「じゃあ、行っておいで」
背を向け走り出すヒイラギを見送った所で、シャワーを浴びる為再びお風呂場へ。彼の事を考えて出来るだけ早めに済ませ、お兄ちゃんのいる和室へ向かった。そこにはヒイラギも恐らく待っているだろう。
「お待たせー」
ふすまをガラッと開け、そこに広がる光景に思わずくすりと笑ってしまいそうになる。そこには確かにヒイラギはちゃんといた。やっぱり言わなくても分かったようだ。そのヒイラギはと言えば、お兄ちゃんの仏壇前の座布団の上でスヤスヤと眠っている。そういえばお風呂場に入った途端に寝ちゃうくらい眠かったんだっけ。それにしても私に気付かないって事は、凄く深い眠りに入っているのかな。写真が撮れるものなら撮っておきたい。そう思う私は変態だろうか。
「お兄ちゃん、ありがとう。面倒見てくれていて。大変だったでしょ? だけど何でもかんでも私に押し付けないでよね?」
気持ち良さそうに眠るヒイラギの頭を軽く撫でながら、微笑むお兄ちゃんの写真に小さな声でお礼を言った。座布団だとなんだか可哀相だったから、出来るだけお兄ちゃんの位置から離れない所に布団を敷いて、そこにヒイラギを寝かせた。風邪をひかないようにタオルケットを掛けてあげ、私はその場を離れ、洗濯物を片付けてご飯の支度をする。
夕ご飯用にとお母さんが作って行ってくれたカレーだから温めるだけで良いんだけど、辛いからヒイラギの口に入れる事は出来ない。困った。ヒイラギに何食べさせてあげようか。




