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 始まりは一件のメールから。のんびりと休みを満喫しようとした時の事だった。

 朝御飯もお兄ちゃんへの挨拶も済ませてから、携帯画面を何気なく見てみれば、“新着メール一件”の表示がされているではないか。

 朝から一体誰だろうと言う疑問を浮かべながらも、私はそれを開いた。


差出人 倉山章くらやまあきら

件名 緊急事態

内容 十二時になったらいつもの喫茶店前に来てくれ!!


 よく分からないけれど、何かに焦っていると言う事だけは分かった。本当なら今すぐにでも来て欲しいのかもしれない。でも倉山の事だ。きっと朝早すぎるとでも思ったに違いない。

 優しいんだか、そうでないんだか。倉山に直接メールか電話で聞く事も出来たと思うけれど、緊急事態と言う位だし返事もしてくれないと思うし電話にも出ないだろう。

 時間と言う物は意外にも早く過ぎて行き、気付けば倉山との約束の時間に後少しと迫っていた。

 少しでも早く行った方が良いと思って、約束の時間よりも早くに喫茶店へと向かう。メールを貰った時から今に至るまで、ずっと倉山の言う“緊急事態”がどんな物かを考えても浮かんでは消えて、浮かんでは消えての繰り返しだった。

 まさかゴキブリが出た位じゃ倉山があんなメールを出す訳ないし、宿題を移して欲しい位でも同じだし。って、言うかそれだったら断るけれど。

 息を切らし、やって来た喫茶店。そこにいたのは倉山と彼の双子の兄弟のサトル。……あれ、この二人がいるならばヒイラギがいてもおかしくないような。ヒイラギも後から来るのだろうか?


「や、やあ……」

「き……来てくれたんだね、ありがとう」

「来るでしょ。あんなメール送られたなら」


 二人はどこかぎこちない。こうなった二人を見るのはこれで二度目。ああ、何となくだけど緊急事態が何なのかが分かった気がする。恐らくだけど……。


「まさかとは思うけれど、ヒイラギ絡み?」


 流石は双子と言うべきか。二人同時に同じようにドキッとしたかのように身を震わせた。分かりやすいリアクションをありがとう……じゃなくて!


「どうしたの!? ヒイラギに何があったの!? まさか……」

「いぃーわぁーしぃーろぉー、落ち着け、落ち着けって!」


 最悪な方向へと考えてしまう。倉山達の態度から見ても死んだ訳ではないとはいえ、気が気でない。

 何度も何度も倉山の方を掴んで揺らし続けた。その時ふとサトルが持っていた黒いボストンバッグが目に飛び込んだかと思えば……もぞもぞと動いた?


「…………!?」

「あ、お姫様がうるさいから動き出しちゃったじゃない」


 何かいる事は確かだけれど……サトルのその冷静さって一体何なのだろう。


「まあ遅かれ早かれ見せようと思っていたから、丁度良いや。出ておいで」


 ボストンバッグを地面に置き、彼がファスナーを開けると出てきたのは、大体三十から四十センチくらいの……黒髪の男の子。大きく伸びをしてから辺りを見回し、大きな金色の目を瞬きさせながら、じっとサトルを見つめていた。何これ……可愛いじゃないの。

 でも何だか容姿がヒイラギに似ているのは気のせいだろうか。思わず倉山の方から突き放すように手を離し、すぐにサトル達の方に視線が行った。


「可愛い……どうしたの?」

「お姫様、驚かないでね。これ……ううん、この子ヒイラギなの」


……はい? 今何と?

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