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エモい感じに告白してと頼んだら十年が経過した

作者: 月見鴉
掲載日:2026/06/19

 あいつの熱量を見誤ってた。きっかけは十年前に見た古い映画、インベーダーが襲ってきて地球が崩壊して、最後の瞬間だけ二人が結ばれるタイプのやつ。あれを見て、「ああいう告白なら受けてもいいよ」なんて言ってしまったのが運の尽きだった。


「宇宙船造ったよ」

「頭おかしい」


 これが五年くらい前だからね。当時まだ高校生、しかも茶道部のあいつがいつの間にか船舶設計士とアーク溶接技能士もろもろの資格を取得してるんだから驚きだ。その資格で宇宙船造れるわけないだろ。


「まあまあ。好きな子のために頑張るのってかっこいいと思うよ」

「別にかっこ悪いとは言ってないよ」

「私とも出会えたんだしさ」

「うーん」


 まあ、友達が一人増えたと思えば、これはいい思い出だったのかも。ちょっと外星文化に慣れるのに戸惑ったけど。問題は次だ。


「一緒に宇宙の平和を取り戻そう」

「頭おかしい」


 これがおととし。大学生活にも慣れてきて、「そろそろ彼氏の一人でも作ってやろうかな」ってあいつをからかった結果、宇宙戦争を引っ提げて戻ってきた。星間ワープの実験中にあの子の母星を見つけて立ち寄ったら、いろいろ勘違いされちゃったらしい。戦争は二年続いて、みんな疲れて、それで。


「……もう長くないから、言うね。実は私、君のことずっと」

「治ったよ」

「頭おかしい」


 いや、治したことはいいよ。なんか腕とかくっつけてるけど、何なら生やしてるけど友達のためだし目をつぶろう。でもこういう告白は最後まで聞くのが筋じゃない?


「二番でも大丈夫。私の星重婚ありだから」

「ここ地球だから、ちゃんとした恋人探してよ」

「優しいんだね。でも、絶対諦めないから」


 そもそもだ。ほとんどあいつのせいで起こした戦争じゃないか。マッチポンプじゃないか。英雄だなんて言われても実感がないし、どこか遠くを見る横顔がかっこいいとも思わないし。

 ちなみにあの子は翌年結婚した。裏切り者。


「もうすぐ君のハーフアニバだね」

「誕生日ってそういう数え方するんだっけ?」

「楽しみだなあ」

「……だね」


 あいつは昔からいつも祝ってくれる。手を握ってくれる。笑ってくれる。だからわたしは、きっとあいつのことが嫌いじゃない。でも、頭がおかしい。熱意が変だ。だから調子が狂うんだ。

 一番頭がおかしいのは、あいつがこれまで一度もわたしに「好きだ」って言ってないこと。わたしは誕生日にちょっと気の利いたプレゼントをもらえれば満足だし、実はエモさなんてなくても十分だ。十分だったんだよ?


「スケール下げていいからね。何なら――」

「時間の流れ逆転させたよ」

「頭おかしい」


 誰が時空を超えろと言ったんだ。宇宙の因果が壊れるじゃん。わたしはあいつが結婚して、あの子とそこそこ幸せな家庭を築いて、それを見て「裏切り者」なんてつぶやくだけで、それでよかったのに。


「それに、時間戻しすぎ。最後の瞬間はもっと後だよ」

「そうだね。でも、一緒に帰りたくて」

「……しょうがないなあ」


 エモい告白は、まだまだ先になりそうだ。

後書き宣伝シリーズ②。魂込めて書いた長編小説が星の欠片ほども伸びないからお祈り代わりにしたためました。

↓目を閉じて三回でいいので読んでってください。謎を解く話ではなく謎に向き合う話です。


ジエンドゲーム ~探偵はホワイダニットを明かせない~

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