1日目⑧
魔法陣に触れた瞬間、俺の身体は意識だけでなく物理的に転移したようだ。
扉を開ける前と似た感じの洞窟が目の前に広がっている。
後ろを確認すると行き止まりで、壁面にはここに来た時と同じ様な魔法陣が描かれており淡い輝きを放っていた。
恐らく帰り用のゲートとなるのだろう。
壁面自体が発光しているせいか視界は悪くない。
だが――ある程度先を見ようとしても、不自然にぼやけて視えない。
まるで濃霧の様なそれは通常有り得ないものだ。
きっとダンジョン特有の仕様ってヤツだろう。
深く考えず俺は持参していたLEDランタンをツナギの腰にあるカナビラに据えると、改めてスコップを握り締める。
当面はこれで戦う事になるだろう。
第一次世界大戦の塹壕戦では、最も活躍した近接武器らしいからな。
斬る・殴る・刺す事が出来るスコップは汎用性もあり確かに便利だ。
しかし浮かれた気分とは裏腹、緊張故かドクドクと逸る鼓動。
耳がザーッという血の巡る音を聞く。
そんな状態を緩和する為、深呼吸をして宥める。
「それで……
これからどうすればいい、アイ?」
「先へと進んで下さい。
辿り着いた先――そこには巨大な貌の門番がいて貴方に語り掛けてきます。
その受け答えによってクラスとスキルを取得する事が可能です。
ただ一点だけ留意をして下さい」
「なんだ?」
「システム上位者の前では残念ながら私は口を出すことが叶いません。よって貴方自身が貴方自身の手で全てを行う必要があります」
「了解した。
ところで俺は目の視力はいい方なんだが……
どうにも先が視通せないのは何故だ?」
「ダンジョン内は薄い魔素に満ちています。
それが時に視界を遮り方向を惑わしモンスターの造形認識を歪め映すのです。
この中を迷わず進めるのは斥候【スカウト】か、術師【ウイザード】の魔法支援を受けた者だけでしょう。ただし――」
「――例外はある、だろ?」
「はい。
専属アドバイザーである私がいる以上、貴方に関して当面はその方面へリソースを費やさなくても大丈夫です。
あと――先程も説明しましたがクラス選択は戦士【ファイター】を。
そして膨大な数の中から初期ポイントで得るべきスキルは――」
アイから告げられた取得スキルの提案。
その内容に驚きはしたものの――理由を聞いた俺は深く同意するのだった。
いつも応援ありがとうございます。
次回からハクスラ開始になります。




