1日目⑤
心から放った俺の魂の叫びに気圧されたように身を逸らす女性。
視界で揺れた形の良い双丘は取り合えず無視する事にした。
「? 何か問題でも?」
「大アリだわ!
っていうか、その声! お前、アイか!?」
「はい、そうです。
意識体では細かいニュアンスが伝わらないので貴方と同じ知的生命体【人類】の姿を取ったのですが――どこかおかしいでしょうか?」
「ふ、服!
まずは服を着ろ! なんで全裸なんだ!?」
「? それは変ですね。
この具象化された臥龍の意識空間内――恐らく貴方の寝床下と思わしき場所に隠されてる情報伝達デバイスに写る雌達はそのほとんどが全裸か半裸なのですが……はて?」
「うるせえ、馬鹿!
彼女がいない男の孤独な理想郷を侵害するな!
いいから早く服を着ろ、服を!」
「何を慌てているのかは分かりませんが――
了解しました。これでよろしいですか?」
不可解そうに眉を寄せたアイだったが溜息まじりに軽く指を振る。
すると次の瞬間――アイの身体は衣服に包まれていた。
メイド服に。
大事な事だから重ねて言うが――
純白のカチューシャにエプロン、清楚さを際立たせる黒いロングスカート……
完璧で究極のヴィクトリアンメイドの姿になっていた。
「な、何故にメイド――?」
「この姿が先程の情報伝達デバイスにあった中で一番被覆率が高かったからです」
「し、しかしだな」
「改めてお聞きしますが――
何か問題があるのでしょうか?」
「いや、もう……
何にもありません、ハイ」
臥龍臼汰、27歳。
いい年齢こいた男が性癖を丸裸にされた上に恥部を突き付け晒され――
もはや抵抗する気概も……男としての尊厳も消え失せた。
真っ白な灰みたいに燃え尽きぐったりとした俺を理解出来ない様に見ていたアイだったが、おもむろにリモコンに手を伸ばすとテレビを点ける。
「ほら。よろしいですか、臥龍。
そろそろチュートリアルを開始したいのですが」
「……チュートリアル?」
「ええ、ダンジョンに挑む際に役立つ知識。
まずは――
基本四職と発生上級職の解説になります」
年代物の大型テレビに映し出されている職業名と解説。
先程まで死に伏していた自意識は急速に回復し――
俺は食い入るように画面にへばりつくのだった。




