6日目⑪
「続いては楓、貴女の番です」
「は、はい!」
感慨に耽る俺を余所に、アイが楓を名指しで呼び出す。
呼ばれた楓はまるで難題回答を指摘された生徒みたいな声で応じる。
そんな楓の緊張を知らず、アイは変わらぬ淡々とした口調で解説をし始めた。
「貴女が選んだ上位職【くノ一】は女性版忍者とでも呼ぶべきクラスです。
戦闘機械とも称される基礎戦闘能力の向上。
密偵上位職【怪盗】に次ぐ密偵能力の強化。
これらはこれからの探索に大きな力と成り得るでしょう」
「そうっすか……」
「今、つまらないと思いましたね?」
「い、いえ。そんなことないっすよ!
……ホンの少しだけ」
「安心して下さい。
貴女だけが扱えるオリジナルスキルとして【忍術】があります。
そのスキルツリーの……そう、そこです。
そこを選んで下さい」
「こうっすか?」
俺には視えないが楓が中空を指し示すと楓の姿が朧げに薄れる。
一瞬、姿を捉え損ねかけるが集中すると明瞭さを増していく。
天然の迷彩、なのか? 面白いスキルだ。
「今、貴女のチャクラがアクティブになりました。
これで貴女も【オーラ】の恩寵を扱えるようになります」
「先輩みたいな感じっすか?」
「いいえ、厳密には少し差異があります。
臥龍との違い――それは内的に作用する力と外的に作用する力の差です。
侍職が魔力の媒介として【オーラ】を刃とする――いわば外的なモノに対し、楓が選んだ忍者系スキル【忍術】は内的に作用するのです。
たとえばパッシブスキルとして貴女が発動している【霞隠れ】は意識すれば意識するほど存在そのものに対する認識が薄れていく【忍術】レベル1のスキルです。
他にも【火遁】【風遁】などを含む【五行遁】。
自分の分身を生み出す【影分身】などがあります。
これらを組み合わせれば偵察が楽になるだけでなく不意を突く事も容易です」
「おお~便利っすね!」
「しかし極めつけは違います」
「え?」
「貴女には貴女しか為せないクラス特性があるのです」
「クラス特性……?」
「はい。
それは露出度を上げれば上げるほどクリティカル率が上昇する、という極めてピーキーで強力なものです」
「は、はあっ!?
なんすか、そのトンチキ特性は!?」
「仕様です。
理論上レベルを上げて全裸になればクリティカル――これは会心の一撃でなく文字通り致死的な一撃の方ですが――を、5割の確率で叩き出すことが可能です。
安心して下さい。
防御力の低下を懸念するならばAC――俗に言うアーマークラスは忍者職に限り薄着になればなるほど基本値が上昇するのです。
よって問題はございません」
「大ありっすよ!
だって、そんな臥龍先輩の前で――」
「羞恥の先に貢献できるアピールがある。
アドバイザーとして私はそう助言します」
「うう……分かったっす……
無理のない範疇で……露出を頑張るっす!」
澄まし顔のアイに泣き顔で答える楓。
俺はいったい――何を見せられてるのだろうか?
瑞希さんに目線を向けるも、何故か「分かってないな、臼汰くんは」とばかりに眼を伏せられ逸らされる。孤独。
まっ、まあ……本人が納得したならいい。
クラス特性に合わせた楓の装備品も方向性が定まって来た感じだな。
俺は第二階層で派手に集めた魔石の残数を数えながら――
各メンバーの装備リニューアルを脳裏に思い浮かべるのだった




