6日目③
破竹の勢いとは今の俺達の事を言うのだろう。
俺と楓だけではアレほど苦戦したこの草原エリアだったが――
集団攻撃魔法の使いである瑞希さんの参入により状況は一変。
快進撃を続けていた。
無論、その理由は戦闘面だけではない。
このエリアの厭な所として巧妙に隠された罠がある。
草の間に置かれたトラばさみ。
踏むと底が抜け毒蛇や毒虫が待つ巣へと直行する落とし穴など。
個々の威力は微妙でも積み重ねれば(精神的にも)大きい。
しかしウチには最高のアドバイザーであるアイがいた。
今のアイならこのエリア全域の罠や宝物、敵を事前に察知し掌握できる。
予め設置箇所が判明している罠など何の問題もない。
進路上避けられないモノについては楓が処置してくれた。
だからこその二時間後――
「アレがアイの言っていたゲートの設置箇所……
ボスエリアに繋がる場所か」
遥か遠方だが石で組まれた巨大な魔法陣らしきものが見える。
事前説明はあったが、おそらく他の階層へ繋がるゲートだろう。
ナビを頼りに延々二時間近くも歩き続けた甲斐があった。
問題はその前で鎮座する守護者の存在だ。
大型車にも匹敵する巨体を持った漆黒の狼。
アイの解説ではここら周辺の群れのボスである魔狼ワーグとのこと。
俊敏さでは並の狼を凌駕しその剛毛は並半端な攻撃を弾くほど強靭らしい。
しかし何が恐ろしいかといえば、これだけ離れているのにもう奴は俺達の存在を把握しているらしき事。
興味無さそうに巨体を横たえているが耳がピクリと動いたのを俺は見逃さない。
まあ俺達が視認した以上、嗅覚に優れた魔狼ならばまず間違いなく俺達を捕捉しているのは間違いない。
つまり避けられない戦いだ。
「やれやれ……厄介そうな相手だな。
さて、どうしたものか。
今の俺達なら勝率はどれくらいだ、アイ?」
「戦闘に絶対はありません。
常にイレギュラーが起こりうる可能性は否定できないからです。
よってこれは推測になりますが――
臥龍達が標準的なパフォーマンスを発揮した場合、95%は確実です」
「全然いけるっすよ、先輩。
ウチらなら楽勝っす」
「それは危険な考えだと思うぞ、楓?」
「うええええ!?」
「95%勝てるという事は……
逆に言えば5%の確率で負ける、という事だ。
そしてこれはゲームじゃない。
負け=死なんだ。
その為なら安全マージンを大目に取るくらいが丁度いい」
「確かにそうかも……っすね。
快進撃でちょっと浮かれ気味だったかもです」
「調子のいい時ほど注意を払え、とは瑞希さんの言葉だけどな。
気分が昂揚して周りが見えなくなる」
「もう、臼汰くんってば昔の事を……」
「事実ですからね。
しかし5%は挑むにはリスクが大き過ぎるな」
「なら、もう少しレベルを上げてみる?
20レベルになったらステータスも上げれるし丁度いいんじゃない?」
「名案です、瑞希さん。
その場合の勝率はどうなる、アイ?」
「100%と断言はできません。
けど98%は間違いないでしょう」
「2%の敗北か……悪くない。
それに魔狼を倒せば二次職への道も開ける頃合いだろうしな。
じゃあ二人とも、もう少しレベルを上げたら魔狼に挑戦してみよう。
それでいいか?」
「了解っす!」
「異議無し、ね」
いつのまにか収まったリーダーっぽいポジションから提案しながら俺達は第二階層のボスへ挑戦すべくレベル上げを開始するのだった。




