6日目②
「……祖は素となりて我らが敵を焼き尽くす業火と為さん。
これでも喰らいなさい、【火球】!」
「きゃうんんんんん!!」
瑞希さんの手から放たれた灼熱の火球が草原に巣食う狼【ダイアウルフ】の集団に叩き込まれる。
草原で火を放つなど通常ならば自殺行為に思えるが、アイの話では魔素によって生み出された炎は任意の物だけを焼くという。
この場合は狼共だけで草原に群生する草花や、まして俺達を焼く事はない。
きっとこれもアイから教えられなければ知らなかった知識だろう。
フレンドリーファイアを気にせず動けるのは非常に大きい。
お陰でこういう動きも出来る。
「いくぞ、楓!」
「合点承知です!」
未だ渦巻く炎の中に身を躍らせる俺達。
地獄の光景から想像する様な熱も痛みもなく火中に突入。
そこには脅威に逃げ惑い統制を乱した狼共がいた。
あれほど苦戦した連携を完全に失い烏合の衆と化している。
今こそ勝機!
俺と楓は動きの取れない奴から確実に止めを差していく。
とはいえ火球を喰らい既に死に体の奴等。
完全殲滅まで5分も掛からなかった。
「いや~莉愛さんがいると全然違うっすね!
前はこんな傷、勿体ないから我慢してたけど……遠慮なく癒して貰えるっす」
幾度かの戦闘後、ポーションを使うまでもないが放置するには痛々しい狼による爪痕に向けて瑞希さんが回復魔法を唱えている。
柔らかな燐光が患部を包むや傷は瞬く間に癒された。
歓声をあげ感謝する楓。
嬉しそうに微笑む瑞希さん。
彼女への呼び方で課長もないだろうと、楓は名前である莉愛さんと呼んでいる。
こうして見てると仲の良い姉妹みたいだな。
まあ、楓は19だし瑞希さんは俺より2つ上のアラサー。
姉妹というには少し年齢が離れて――
「臼汰くん?」
ウフフ……と、こちらを見て笑みを濃くする瑞希さん。
勘のいい子は嫌いだよ?
その中に視てはいけない波動と幻聴を感じた俺は慌てて違う事を思い浮かべる。
クラス選択で彼女が一番にこだわったのは癒し手である僧侶【プリースト】だ。
どんな力を持っていようが傷つき力尽きれば終わり。
ましてダンジョンには状態異常を持つモンスターや罠もある。
それに傷ならいいが、万が一にも欠損してしまう様なダメージを負ったなら高位の再生魔法以外治す術はないのだ。
だからこそ瑞希さんは完全サポート系のビルドにした。
足りなかった僧侶のクラスを主体に攻撃魔法型の術師も兼務している。
実際彼女の参入によって開いていたピースがカチリ、とハマった気がする。
相互連携の取れたパーティの完成。
ダンジョン攻略に向けて大きな躍進を遂げたのは間違いないだろう。
このメンバーならどんな危機にも立ち向かえる。
アイのサポートを受けながら俺は形容できない高揚を感じていた。
……放たれる無言の圧力に、若干恐怖を覚えながら。




