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5日目 終

「――ここです、瑞希さん」

「ここは……臼汰くんの家?

 それに貴方達のその恰好は……」


 自宅に着いた俺と楓は不思議そうに周囲を見渡す瑞希さんをその場に残し納屋へと移動する。

 そして手早く装備を身に着けると彼女を裏山の洞窟前へ案内する。

 薄暗い洞窟。

 しかしその中で奥の扉だけが青白い光を放っている。


「薄々気付いているかもしれませんが……

 俺と楓は【探索者】です」

「探索者って――

 あの、噂になっているダンジョンの?」

「はい。

 数日前……突如俺の家の裏山に洞窟が出来、そこで知りました。

 この中がダンジョンに繋がっているという事を。

 楓はたまたまウチを訪ねて来ており、以降探索を共にしてます」

「そうなんだ……

 もしかしてわたしに頼みたい事って……」

「はい。

 一緒に探索者になってほしいと思いました。

 共に背中を支え合う仲になれたら、と」

「む、無理だよ。

 わたしじゃ役に立たない……」

「それっすよ、瑞希課長」

「え?」

「前の瑞希課長なら役に立たない人間なんていない!

 って、毅然と対応してましたよ?

 今の課長は恐ろしく心が弱ってると思います」

「同感だな。

 苦しい時、辛い時に支えられなくて……本当にすみません」

「そんなこと!」

「けど――だからこそ瑞希さんには選んでほしい。

 自分が為すべき、進むべき道を。

 この中に探索をサポートしてくれるアドバイザーがいます。

 まずは俺達を信じてカウンセリングを受けてみませんか?」

「……うん。いいよ」

「では失礼します」

「あ、ちょっ。

 臼汰くん、強引過ぎ――」


 慌てる瑞希さんの手を取り、扉に触れる。

 すると瞬時に俺達は意識空間へ移行した。


「ここは……礼拝堂?」

「そうです。

 今回は臥龍でなく貴女の意識空間を投影しております」

「貴女は……?」

「私はアイ。

 臥龍の探索アドバイザーにして迷いを絶つ者です」


 いつもの俺の居間でなく、今回俺達が移行したのは荘厳な礼拝堂だった。

 宗教色が色濃く出ている訳ではない。

 だが厳しさの中に安らぎと優しさを感じる不思議な場所だ。

 まるで――瑞希さんような。

 そして何より驚いたのはアイがシスターの恰好をしている事だ。

 慈母の表情を浮かべる聖母像を前に厳かに佇んで俺達へ語り掛ける。

 俺でなく瑞希さんの内面世界にピントを合わせるとこうなるのか。

 じゃあ、メイド服はやっぱり……俺の趣味嗜k――

 怖い考えになる前に頭を振り、二人の会話に集中する。

 あくまで穏やかに話し掛け、おずおず応じる瑞希さん。

 カウンセリングというものはとても難しい。

 対象者の抱えている問題が本人も意識していない場合が多いからだ。

 大事なのは共感でなく理解。

 話を合わせるだけでなく踏み込むことも求められる。

 しかしレベルが向上しアドバイザーとして時に心理面もバックアップするアイは、俺達が表層化しない問題を認識させることが巧みだ。

 自身の願い、想いを吐き出させる。

 荒療治だが……これが今の瑞希さんに重要だと思った。

 別に――探索者になる必要はないのだ。

 ただ彼女が……以前の自信に満ち溢れていた彼女に戻れるなら。

 そんなことをつらつら考えていたら、いつの間にか対話はクライマックスを迎えようとしていた。


「……だったのですね。

 では、もうひとつだけ指摘します。

 貴女が苦しいのは守られたからではなく――

 何もできなかった弱い自分が許せなかったからではないのですか?」

「……したかった」

「はい。言って下さい」

「わたしも……本当は一緒に戦いたかった!

 大丈夫だよ、って!

 共に困難に立ち向かいたかった!

 けど勇気がなくて……なのに想いだけが溢れて……」


 跪き、外聞もなく号泣する瑞希さん。

 幼子のように感情を剝き出しにするその姿を……

 美しいと思った。

 ホントに綺麗だと思った。


「ならば立ちなさい、瑞希。

 貴女に眠る熾火はまだ消えてはいません。

 共に戦うというならば――

 私が貴女を、貴方達を支えます」

「――いいのかな、こんな私で?」

「話に割り込んで悪いが……いいか?」

「臼汰くん……」

「こんな私、なんて言うな。

 俺は瑞希さんがいい」

「勿論、ウチも同じっす!」

「そっか……うん、そうだったんだね。

 なら今日からわたしも共に戦っていい?

 二人の……臼汰くんと楓ちゃんの背中を支えたいの」


 そう言って涙でグシャグシャになった顔で微笑む瑞希さん。

 でもその笑みは俺が見てきた彼女の笑顔の中でも過去一に輝いていた。




 やっとフルメンバーが集いました。

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