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5日目⑧

「大丈夫なんですか、先輩。

 あんな風に安請け合いしちゃって」

「正直……分からん。

 どうなるかは瑞希さん次第だ」


 家へと続く田舎道。

 のどかな田園を進む自家用車のハンドルを握る俺に、助手席に座る楓が囁く。

 瑞希さんの身を案じてだろう。

 社交辞令じゃなく心の底から心配そうな顔をしている。

 無理もない。

 二人は上司部下、年齢の垣根を越えて仲が良かったからな。

 仕事が速めに片付いた時には俺を含めた三人でよく飲みに出かけたものだ。


「わたし、酔わないんだよ?」


 そう豪語し居酒屋の酒を全メニュー制覇した瑞希さん。

 少し頬を赤く染めながらも楽しそうにしていた彼女の貌を覚えている。

 けど、今は……

 俺はバックミラー越しに背後を窺う。

 最後列シートに腰掛け、ぼんやり外を見ている瑞希さん。

 明るく陽性に満ちた表情は鳴りを潜め、今はどこか幽鬼のように物憂げだ。

 快活だった彼女がこんな風になるなんて……!

 傍にいて支えられなかった自分の馬鹿さ加減に反吐が出そうになる。

 何が彼女の迷惑になるから、だ。

 退職後に会いもせず連絡先すら消して。

 それは体のいい逃げ、だったのかもしれない。

 ヒーローを気取って失敗してしまった自分。

 そんな俺でも彼女は受け入れてくれただろう。

 ただ……俺自身が許せなかった。

 カッコ悪い自分を晒す勇気がなかった。

 その代償がこうして目の前にある。

 現実を突きつけられている。

 だから……今度は間違わない。

 瑞希さんの笑顔を取り戻す!

 ハンドルを強く握り直すと、黄昏を過ぎ夜の帳が落ちる風景に向かいアクセルを踏み込むのだった。



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