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5日目⑤


「こんな時間に一人でいるからには、どうせ暇っしょ?

 ならさ~オレらといいことしよーぜ」

「そうそう。

 身も心も気持ち良くさせちゃうよん」


 いかにもザコっぽい三下な台詞。

 ただ恫喝にも近い言葉には暴力に慣れた感じがあった。

 楓と顔を見合わせた俺は隠れるよう無言で指示する。

 素直に応じ、スーッと目立たない場所へと移動する楓。

 なんで? 

 とか、 

 どうして?

 など余計な事を問わず応じれる迅速さは、ダンジョン探索で培われたものだ。

 命が懸かった場では何より拙速が尊ばれる。

 気配を殺した俺は声のする路地裏をそっと覗き込む。

 そこでは怯える一人の女性を囲むように髪を金だの赤だの派手に染めた、厳つい容貌をした若者二人がいた。

 ガラの悪さからタチの悪いナンパという名の不同意猥褻に近いと判断。

 見て見ぬ振りも出来ず――

 また何かの間違いだとシャレにならないので溜息を吐きつつ声を掛けてみる。


「その辺にしておいたらどうだ?」

「あん? なんだ、おっさん」

「てめえにはカンケーないだろ。

 黙って失せろや」


 自分たちに非がある事は重々承知しているのだろう。

 最初から喧嘩腰どころか胸倉を掴み、有無を言わさず殴り掛かってきた。

 なるほど。

 こうやって女性の前で介入者へ暴行を見せつければ、更に怯えて事に及びやすくなるという寸法――目論見か。

 確かに有効かもしれない。

 相手で俺でなければ、だが。

 拳を大きく振り上げるテレフォンパンチにこちらからタイミングを合わせ、勢いよく額をぶつけていく。

 次の瞬間――

 グシャ!


「いてえええええええええ!!

 なにすんだ、おめえええええ!!」

 

 自ら(愚者)を讃える破砕音と共に拳を押さえて転げまわる金髪。

 おかしな角度に曲がった指を見るに骨折したらしい。

 探索者としての頑健さに加え、スキル【物理耐性】【身体強化】所持者を無防備に殴ったら、そりゃそうなるわな。

 にしても反射でそんなダメージを負うほど全力で人を殴るなよ。

 自業自得ともいえる男を冷静に見下ろしていると、


「ふざけんな、殺すぞ!」


 仲間がやられたことに激昂したのだろう。

 赤髪の方がナイフを取り出して襲い掛かってきた。

 鈍い銀光が夕闇に照り輝く。

 しかし――


「遅いな」


 先程からのこいつらの動きときたら……

 戦闘に慣れた俺にとってはスローモーションだ。

 それに殺気すら伴わない雑な攻撃は児戯に等しい。

 頸動脈を狙ってくるだけ、まだジャイアントラットの方が脅威である。

 素人丸出しでブンブンとナイフを振り回しながら切り掛かってくる赤髪。

 俺は冷静に殺傷圏から身をかわすと、手加減をしながらカウンターで顎に蹴りを叩きこむ。

 バキッ!

 景気のいい音と共に白目を剥いて意識を失い、その場に崩れ落ちる赤髪。

 い、いかん。

 殺してないよな?

 よし、ピクピクしてはいるが……ちゃんと呼吸はしてる!


「ひいいいいいいいいいい!!」

「これ以上痛い目に遭いたくなかったら――

 そいつを連れてさっさと失せろ。

 これは治療費だ」


 情けない悲鳴を上げる金髪に10万程入った封筒を叩きつけ睨みつける。

 本物の殺気というか気迫を浴びたことがなかったのだろう。

 金髪は大慌てで封筒を仕舞い込むと赤髪を抱え、えっちらおっちら逃げていく。

 ふう……どうにかなったな。

 だが――俺も随分と強くなったもんだ。

 格闘技をやっていた経験はあるが、刃傷沙汰なんて初めてだというのに。

 それなのにあれだけ冷静に捌けた自分に驚く。

 僅か数日で俺は規格外の成長を遂げたらしい。

 肉体的にも……精神的にも。

 これはレベルアップだけでなくスカル師匠のお陰かもしれない。

 あのチュートリアルで戦う為の心構えが定まった気がするしな。

 男達が走り去ったのを確認しながらそんな事を思っていた時――


「臼汰……くん?」


 背後から掛けられたか細い声に振り返る。

 天然なんだよ、といつも自慢していた栗色のロングヘア―。

 小顔なのにバランスよく配置された美貌。

 野暮ったいカーディガンとジーパンなのにスタイルの良さを隠し切れない肢体。

 何より印象的な、見る者を捉えて離さない蠱惑的な双眸。


「瑞希さん……

 どうしてここに?」


 以前勤めていたブラック会社の元上司。

 そして学生時代からの付き合いである瑞希莉愛がそこにいた。




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