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1日目③


「………………」

「あれ? お~い」


 昔読んだ漫画を思い出しながらノリノリで願い事を叫んだ俺。

 しかし、そんな俺に返って来たのは痛い程の沈黙だった。

 何だか返答に困っている雰囲気がするし。

 ひょっとして俺――

 お約束の非常識晒し……ってヤツをやっちまったか?

 だってさ、他に思いつかないんだよな。

 どんな優秀な武器やスキルがあっても未知の領域ではあっさり死にそうな気がする。

 大体スキルツリーや魔法体系も知らずに習得するなんて無謀だろう。

 学生時代やっていたクソゲーなんかじゃそれで詰むのが定番だったし。

 その点アドバイザーがいれば無理なく探索を進められると思ったんだが……

 う~ん、見通しが甘かったか?

 俺TUEEEEEEEE出来るスキルでも貰っておけば良かったんだろうか?

 機嫌を窺うように小首を傾げ待ってみる。

 するとしばしの躊躇いの後、返答があった。


「それが――貴方の望みですか?」

「おう。心からの、な」

「成程――分かりました。

 貴方という個体は非常に興味深ユニークい。

 極めて異例の事ながら――私は貴方専属のアドバイザーとして就任致します。

 以後、良しなに」

「ああ。よろしく」


 アドバイザーの言葉に誠意を込めて告げる俺。

 すると視えない何かが自分に宿ったのが分かる。

 そして耳元というより脳裏に浮かぶように軽やかなアドバイザーの声が響く。


「聞こえますか、臥龍?」

「おう、バッチリだ」

「これ以降私は貴方の霊的拡張領域を間借りしてサポートしていきます」

「何だか分からんが、頼む」

「はい。それではまず最初に行うことですが――」

「ん? 何だ?」

「私を呼ぶ際の便宜上の名前【呼称】を決定して下さい。

 変更は利かないので、どうか慎重に願います」

「オーケーオーケー任せろ。

 こう見えてセンスはある方だ」

「ほう。期待します」

「以前の職場の後輩や女上司からは、何故かボロクソにダメ出しされたがな。

 保護した捨て猫に捨丸って名付けただけなのに」

「……不安です」

「よし、じゃあナビゲーターから取ってナビ子……」

「………じーっ」

「というは冗談で!

 アドバイザーから二文字でアイ、っていうのはどうだ?

 これには【私】って意味も含まれている」

「安直ですが……まあ、及第点ですね。

 では改めてよろしくお願いします、臥龍」

「こちらこそな、アイ」


 どうにか及第点を頂いた俺は――改めてアイと挨拶を交わすのだった。



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