3日目③
結論から言えば、楓は働き者だった。
家に招き入れ楓用の部屋を整えてから早速働きに出たのだが……
懸念であった力仕事や汚れ仕事を苦ともせず、むしろ顔に付いた泥を指摘されて爆笑してる程だ。
うむ、適性があるな。
スローライフなんていうと聞こえがいいが――要は自給自足の生活だ。
優雅さとは程遠い。
特にベースとなる農業は綺麗事では済まない。
肥料作りとして鶏糞なども取り扱うし、放っておくと鬱蒼と茂ってくる雑草とのバトルも日々避けられない。
だが――楓はそういった仕事の一つ一つを丁寧に覚え実践していく。
元々向いているのだろう。
土と汗に塗れる事に忌避感がないようなのだ。
田舎暮らしに憧れて、何ていうのはよく聞くが……
大概はその内情を知ると逃げていく。
けど良くも悪くもいつも自然体の楓は、未知なる事を面白い事……として楽しむという才能がある。
これは得難い才能だ。
どんな仕事も単純なタスクの積み上げの上に成り立つ。
会社で指導していた時にもうっすら感じていたが――こいつは大物だ。
人生の先達として負けない様にしないと。
(それに……あのこともあるしな)
一日の作業を終え夕方。
アナログな薪風呂ぐらいではしゃぎまくる楓。
子供か、お前は。
いや子供だった……まだ未成年だもんな。
勢いとはいえ少し安易に同居の許可を出してしまった事を後悔。
まあ、無駄に広い家(7LDK)だ。
多少同居人が増えた所でどうなる訳じゃない。
両親を事故で亡くされて一人暮らしをしていた楓にとっては、おっさんである俺との暮らしもシェアハウスと同じ様なものだろう。
俺がしっかりしていれば何も問題はない。
あいつは手間のかかる妹みたいな存在だしな。
湯上りで涼みに出た楓の上気したうなじを思い返しながら俺は思案する。
ただ……いつまでもアレを隠し通せる訳が無い。
なら、はたしていつ打ち明けるべきか?
夕食の仕込みをしながらそう思ってた矢先――
「臥龍先輩!」
悲鳴に近い楓の声が響き渡る。
何かあったか、と考える間もなく声のした方へ向かう俺。
ああ、この方向は間違いない。
おそらく楓は――
「楓……」
「先輩、これって――
数日前から噂になっている、【ダンジョン】……っすよね?」
ポッカリ開いた裏山の洞窟。
中と外の境目に立つ楓の表情は戦慄とも好奇とも尽かぬ黄昏色に染まっていた。




