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3日目①


「何をやってるんだ、あいつは!?」


 ご近所まで数分掛かるような郊外とはいえ外聞もある。

 限界集落に近い田舎では、若い女性が自宅近くをウロウロしているだけで立派なスキャンダルになるのだ。

 畑と共に培ってきた俺への信頼度がマジで下がってしまう。

 こう見えても農業に関心のある真面目な好青年というポジションを得ている。

 若い人材は貴重だからか大事にされているってのに……

 ベッドから跳ね起き、慌てて玄関に出向く。

 ガタガタ、と音を立てる建付けの悪い扉を勢い良く開けた俺を迎えたのは間違いなく紫亜楓だった。

 寝起きでボサボサな髪の俺をキョトン……とした眼で見た後、何故か楽しそうに笑う。


「全然変わってないっすね、先輩は!

 その貌……納期が間に合わなくて会社に泊り込んでた時みたいっすよ?」

「うるっせ。

 アポなしにいきなり来る方が悪い」

「あはは、確かにそうっすね。

 それについてはゴメンなさいです」


 深々と一礼し謝罪する楓。

 有無を言わせぬ美しい姿勢に反論できない。

 新人指導プリセプター時代から思ってたが、変なとこでお行儀がいいんだよな、こいつ。

 悪気がないから強く出れないし。

 計算高い訳じゃなく天然だからな。

 寝てて蒸れた頭をバリバリ掻きながら溜息をつく俺。

 楓はブラック企業時代の部下である。

 年齢は新卒2年目の19歳。

 今時珍しい黒髪ボブショート。

 童顔というか幼い感じの容貌だ。

 身長は150前後だが……

 スタイルはいいとのこと(自己申告)。

 泳ぎに行った面子の話だと合法ロリらしいが興味がない。

 下げられた形の良い頭を視界に入れながら俺は改めて楓を見る。

 梅雨が終わる時期とはいえ朝は肌寒いからか白無地Tシャツの上に透き通った黒のシア―カーディガンを羽織り、タイトなミニスカジーンズの下は厚手のタイツという服装。

 柄のせいかシア―カーディガンが楔帷子っぽく、何だかくノ一みたいな感じだ。

 だが……俺の眼を最も引いているのは楓の背後にあるレモンイエローの大型スーツケースだった。

 単なる観光にしては大き過ぎるソレ。

 何だか嫌な予感がした俺は尋ねてみる。


「お前な……いきなり来て、こんな朝っぱらからどういうつもりなんだよ」

「そんなの勿論~決まってるじゃないですか!」

「あん?」

「――嫁に来ましたよ、臥龍センパイ♪」

「はあああああああああああああ!?」


 さっき思った事を完全に忘れ――

 俺は周囲に響き渡る声で叫ぶのだった。



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