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2日目⑥

「アイ……

 確かに分類は【大蜥蜴】だろうが――これは聞いてないぞ?」


 侵入者を値踏みする陰湿な目付き。

 じっと俺の様子を窺う様に睨み付ける視線を感じながら俺は愚痴を零す。

 大蜥蜴ことコモドドラゴンは厄介な敵だ。

 その獰猛さもだが獲物に対する執着が半端ない。

 こいつは決して獲物(俺)を逃がさない。

 どれだけ距離を取ろうとも諦めずに追い詰めその胃袋に納めようとするだろう。

 何より噛み付いた際に口内の牙から出される毒が致命的だ。

 以前は腐敗菌による感染と考えられてきたが、好きな漫画風に言うなら――

 意外! それは失血毒!

 という危険な代物だ。

 毒持ちなので絶対解毒ポーションを購入しろ、というアイの忠告が今更ながらに理解出来た。

 恐竜の末裔なんていう現実世界のファンタジーな異名は伊達ではない。

 まあ……ここまで来た以上、相手が何であれ斃すのみ!


「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 俺は闘志を奮い立たせると雄叫びを上げて、ヤツ【コモドドラゴン】を威嚇。

 挑発するみたいにチロチロと出入りしている舌先目掛けスコップを突き出す。

 バッと巨体に似合わぬ俊敏さで飛びのき回避するコモドドラゴン。

 そして横合いから噛み付こうとするのか鋭い牙の生えた口内を広げるが……俺がスカル師匠から学んだ武器格闘スコップ術(?)の冴えを知らんとみえる。

 地面に突き刺さった先を軸とし、持ち手で身体を回転。

 そのまま勢いをつけて安全靴で蹴りをかます。

 この攻撃は予想外だったのだろう。

 横っ腹を蹴られ1メートル程ぶっ飛ぶ大蜥蜴。

 だが憎々しいことにすぐに警戒態勢を取る。


「くそっ固いな……

 ほとんどダメージが入らなかったか」


 爬虫類特有の外皮に、鋼で補強されている蹴りの衝撃が拡散されてしまった。

 やはりヤツを斃すのはスコップのみ。

 俺は数多のモンスターの血を啜ってきた刃先を向ける。

 頭を振りながら再駆動する大蜥蜴。

 そこからは接戦だった。

 ヤツが力任せに突進するのを師匠譲りの技であるスコップの先でいなしどうにか逸らす。そのまま四肢をバタつかせるヤツの体躯に幾度も刃を突き立てる。血が噴き出し興奮したのか尻尾を振り回してくるが頭を下げて回避。と思いきやすぐ前にヤツの口内が見えたので俺は背中が傷つくのも構わず足場の悪い地面を転げる。ツナギの上からでも突き刺さる凸凹の隆起に激痛を感じるが噛まれるよりはいい。返しで幾度もヤツを突き刺す。身を捩り爪先で引っ掻いてきたがどうでもいいしそんな事よりもっと決定打が欲しい。その為には隙を作るしかない。痛い思いをするが腕に雑嚢を巻き付け即席の盾とするとわざと腕を噛ませる。ツナギの上から毒牙が皮膚に刺さり傷跡が熱い。だがこれでヤツも固定された。今だ――


「喰らえ! 【スマッシュ】!」


 スキルの恩寵を受けた一撃が奴を捉え地面に叩きつける。

 強撃ことスマッシュの効果は抜群だ。

 単純に俺の全力攻撃の倍以上のダメージを与えることが出来る。

 砕け散る地面。

 巻き上がる血飛沫。

 明確なダメージ。

 しかし土煙の中、コモドドラゴンの体躯が赤く染まっていく。

 このまま削れば脱皮してせっかく減らしたHPを回復してしまうだろう。

 けど――決め手となるスマッシュはクールタイムがあり、あと1分経たないと再発動が出来ない。

 技後の硬直を好機と見たのか爬虫類独特の縦の瞳孔を細くする大蜥蜴。

 だから俺は――スキルを発動させる。


「こんなこともあろうかと」


 それは【空間収納】スキルを呼び出す為のコマンドワード。

 秘められた言霊を介し、俗に言うアイテムボックスが発動する。

 俺の頭上に現れたのは購入した回復ポーション。

 瓶の向きを下に召喚されたポーションが俺に降り掛かる。

 すると燐光と共に微細な傷や減ったHPが回復していく。

 これだけなら何の意味もない行為。

 少なくとも戦闘中にやることではない。

 けれど最高のアドバイザーであるアイから、俺は情報を得ていた。

 だからこそ隙を逃さず襲い掛かってきたコモドドラゴン目掛け発動させられた。

 今現在、最高の威力を持つ自身の技を。


「【スマッシュ】!」


 読み取り辛い筈の爬虫類なのに何が起きたか分からない、といった表情で無防備にスコップの一撃を受ける大蜥蜴。

 残光を描く切っ先はその体躯に直撃。

 完全に肢体を粉砕し大蜥蜴【コモドドラゴン】は巨大な魔石を残し消え去った。


「第一階層ボスモンスター【ジャイアントリザード】を討伐しました。

 単独討伐ボーナスを含め、レベルが3つ上がります」


 干渉できるようになったアイのナビゲートを聞きながら……俺はレベルアップ部屋に招かれる。

 激戦の末に得た、勝利の余韻を噛み締めながら。



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