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1日目②


「暗いな……しかも広いし長い。

 何だ、ここは?」


 数メートルで行き止まりになると思っていた俺の予想を裏切り、洞窟はずっと奥まで続いていた。

 慌てて納屋から夜間作業用のLEDランタンを持参。

 まるで掘削機で繰り抜いたような壁面を照らしながら警戒しつつ歩を進める。


「これは扉、か?」


 50メートル位は進んだだろうか?

 幸い熊や野獣との邂逅もなく、行き止まりにあったのは古びた石の扉だった。

 怪しげな文字が綴られたそれは薄汚れ、絡まった蔦や草に塗れている。

 もしかしたらここは戦時中に造られた防空壕か何か、なのかもしれない。

 隠されていたそれが何かの切っ掛けで露わになったとか?

 好奇心に駆られた俺は扉に触れる。

 次の瞬間、ランタンを超える爆発的に眩い光が周囲を染め上げ――

 俺の意識は瞬時に消し飛んだ。










「ここは……?」


 ふと気が付くと――俺は真っ暗な闇の中を漂っていた。

 どこを見渡しても無明の闇。

 自分の身体ですら確かではない。

 もしかして俺は……死んだのだろうか? 

 あの扉には実は爆発物が仕掛けてあったとか――


「違います」

「うおっ!」


 俺の疑問に答える様に耳元で囁かれる声。

 予想だにしてなかった完全な不意打ちの為、心底驚いた。


「だ、誰だ!?」

「現地人:雄(成体)と接触――精神を同期、言語コンタクトを開始。

 私はコミュニケーション用に調整された精神体。

 ただのアドバイザーです。

 さあ――願いを言って下さい。可能な範囲で叶えます」

「ね、願い事を叶える?」

「はい。貴方にはこれから異界回廊デバイス――

 通称【ダンジョン】を探索して頂く事となります。これは報酬の前払いです」

「ダンジョンを探索って……拒否する事は出来るのか?」

「可能です。

 ただその場合、貴方の参加資格は喪われ二度と挑戦する事は出来ません」

「危険はあるのか?」

「はい。

 ダンジョン内は罠と怪物に溢れており進む貴方を苦しめます。

 だからこその願いとレベルアップです」

「レベルアップ?」

「はい。

 ダンジョン内で怪物――通称【モンスター】を斃した場合――その器が持つ構成因子、通称【魔素】を取り込む事により貴方は飛躍的な身体機能の向上を図る事が可能です。

 またレベルアップに応じて得られるポイントを使い自身や技能を強化する事も。

 無論、願い事を探索に役立つサポートにしてしまうのも自由です」

「なるほど……ありきたりな設定。

 まるでゲームか小説みたいだな」

「参考にさせて頂きました。

 この方式が一番馴染みやすい、との結論です」

「(誰にとっての結論なんだか)

 ダンジョン内で得た物についてはどうなる?」

「一切の所有権は直接取得した者に一任されます。

 誰かに売るのも自分で使うのも自由です」

「願いの及ぶ範囲は?」

「自由です。

 私の力の及ぶ範囲で、ですが。

 魔法や技能、貴重な鉱物などを授ける事も可能です」

「ならば決まりだな。

 どんな危険が待ち受けてるか分からんが……

 ダンジョンに挑ませてもらう」

「参考までに理由を訊いても?

 かなり荒唐無稽な内容だとは自覚してますが」

「ん? そんなの――

 漢の浪漫だからに決まってる!」


 だってダンジョンだぞ?

 男の子なら誰もが夢見る迷宮探索……即ち、冒険!

 閉塞的な現代でこれに心惹かれない奴は男じゃない。

 半ばおっさんと化してる俺の中に潜む少年の自分が大きく賛同する。


「成程……興味深い。以後の参考にさせて頂きます。

 了解しました。

 現地雄成体:臥龍との契約完了。

 貴方をダンジョンに挑む【探索者】こと、通称【シーカー】と認めます。

 では――願い事をどうぞ。」

「それは勿論――」


 俺の脳裏を様々な力や技能の詳細、あるいは金銭などが駆け巡る。

 しかし最終的に俺が選んだのは次のものだった。


「君の様なアドバイザーにず~~~~~っとサポートして欲しい!」




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