2日目②
走る。
熱く速く。
的確で静かに。
猛ダッシュは完全な不意打ちとなったのだろう。
キキキ、と大鼠とはまた違った甲高い鳴き声をあげて滑空してくる大蝙蝠。
だが獲物である俺を捉えきれず目測を誤った。
鋭い爪の付いた足先がツナギの背中をかすめるも体には届かず。
一条の引っ掻き線を残し地面に落下する。
このチャンスを逃すほど俺は甘くない。
急転回は難しいのでそのまま前に突き進む。
「おらっ!」
まずはダンジョンの壁を蹴る。
そして生まれた勢いを糧に反動をつけ旋回、大蝙蝠の体にスコップを突き出す。
しかし残念ながら無茶な機動故か少しだけ刃先がずれた。
50センチくらいある大蝙蝠【ジャイアントバット】本体でなく広げられた翼を傷付け、致命傷には程遠い小さな穴を開けたのみに終わる。
――いや、これでいい。
少なくともこれだけのダメージなら再度飛び立つ事はない。
キ~~~~と絶叫する大蝙蝠。
俺の方を向くと大きく息を吸う。
明らかに何かを吐き出す予備動作。
けどアイのアドバイスを聞いていた俺は、冷静に背中の雑嚢を掴む。
そして大蝙蝠の口からブレスの様に吐き出された超音波目掛け投げつける!
反射的に身を捩り体幹がズレる大蝙蝠。
目に視えない耳障りな超音波は俺の遥か脇を飛んで行った。
慌てて再度息を吸う大蝙蝠だが……遅い。
「当たらなければどうということはないな。
喰らえ、【スマッシュ】!」
MPを消費した【強撃】が大蝙蝠の体を捕捉。
深々と突き刺さったスコップが、その肢体を貫き射止める。
瞬間ビキッ――という崩壊音と共に魔石を残し消え去る大蝙蝠。
死闘には程遠い泥臭い攻防。
けど……これでいい。
敵の動きを予測・応対しスキルを使用。
無理なく前へ進んでいるという実感がある。
何事も重要なのは積み重ねだろう。
レベルアップを迎えた俺は自身の勝利を一人噛み締めた。




