1日目⑫
「ここから300メートル先。
T字路を左に曲がった小部屋に先程討伐した大鼠と同等の個体が2体います。
この階層の大鼠に懸念すべき毒持ちはいません。
ですが【悪寒】と呼ばれるバッドステータスをもたらす病原菌の様な魔素をばら撒く特殊個体が時折いるので注意を。
なお【悪寒】自体は1時間程で【探索者】固有の自然治癒能力で消失するものの、その間は全能力におよそ5%近いデバフ効果を及ぼします。
この効果は重複しませんが、通常とは違い動きが意識しないとワンテンポ遅れてしまう……つまり、初心者殺しに繋がりやすいので警戒が必要です」
アイの助言が導くままダンジョンを進む。
ここで痛い程に痛感(頭痛が痛いみたいだが)するのはやっぱりアイのナビゲート能力だ。
途中説明を受けたアイの話だとダンジョンは広大で、尚且つ低階層でモンスターと接敵する事は極めて稀らしい。
モンスター達も自分達のロジックで動いているし(ゲートキーパーと呼ばれる、部屋固定モンスターは別。恐ろしい事に定番のボスも専用のボス部屋からは出ないとのこと)この洞窟階層内だと隠れる場所も多いからその程度のようだ。
モンスターの気配を感じ取れるという斥候クラスの能力を除くとすれば、頻度にすれば1時間に1~2回くらいあれば上々か。
その効率の低さがアイの導きがあれば10分もせずに会敵可能。
しかも予めどこに何がいるか、罠が無いか、脅威となる不確定事項を事前に訊く事が出来て、対策を練れるという。
「……改めて考えるまでもなく、ヘタなチートよりチートだよな」
「何がですか?」
思わず呟いた独り言にアイが反応し尋ねてくる。
俺は歩きながら実感している事を説明する。
「アイの存在が、だよ。
こうしている間にもさ、各地で俺以外の【探索者】がダンジョンに挑んでいるんだろう?」
「肯定です」
「どんな事を皆が望んだかは分からないけどさ……
こうやって的確なサポートを受けれて心身共に安心安全、確実に成長できる機会を得られるレベルの望みなんて早々ないぞ?
何せ敵の位置や罠の有無まで把握可能。
上級職や有能スキルの解説もバッチリだしな」
「……ご満足頂けているようで何より」
「ん? ひょっとして照れたか?」
「生憎そういう感情はありません。
あと――
次の戦闘後にレベルアップする予定です。
また臥龍の意識空間へ戻るので了承願います」
「早いな!
さすがはアイ推薦のスキルだ」
「当然です。
獲得経験値向上を得ているか否かで、今後の取得経験値差は大きく広がります。
だからこそ――初期ポイント全てを費やす価値があるのです」
視えないのにドヤ顔をしているアイを幻視する。
そう……初期ポイントである、全20点を費やし得た獲得経験値向上(低)。
これは文字通り獲得経験値が増すというパッシブスキルだ。
使えそうな他スキルを蹴ってまで得たのにはアイが述べた理由がある。
もちろん(低)ではおよそ2~3割増し、くらいらしいが……
積み重ねれば差は大きい。
特にこれから先、得られる経験量が増えれば増える程に格差が広がる。
早く次の獲得経験値向上(中)へとランクアップしたいものだ。
「最初はなんで、と思ったが……
まさに探索を始めたばかりの俺に適切だな。
早くレベルが上がればよりパワーアップできる」
「レベルを上げて物理で殴る。
結局の所、これが最初は一番効率がいいのです。
さあ――お喋りはおしまいです。
もうすぐ敵とエンゲージするので準備を。
今の臥龍なら油断しなければ問題ないはずです」
「了解だ!」
アイの助言に気合を入れて返答。
驚きに身を竦ませる大鼠2匹へ奇襲を仕掛ける。
こうして、ダンジョン2回目となる戦闘も殊の外呆気なく終わり――
俺のレベルは2へと上昇するのだった。
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