1日目⑨
薄暗い回廊をしばし歩む。
やがて辿り着いた先――そこにはゲート前同様の大扉があった。
その表面には行く手を遮る様に抽象的な人の顔が浮かんでいる。
人面は俺を見据えると厳かな声色で語り始める。
「ここを通らんとする者は何者ぞ?」
【ようこそダンジョンへ。
まずは貴方の名前と性別を登録します】
人面の語り出した後、注釈するかのように扉の前に文字が浮かびあがる。
無機質で感情を交えないやり取り。
成程……アイの言っていた通りだな。
これが従来のアドバイザーが干渉するレベルなのだろう。
だが……あまりにもゲームチック過ぎないか?
盛大にツッコミを入れたい衝動を堪えつつ――
手元に現れた不透明なボードへ、自分のデータを入力する。
「名前:臥龍臼汰
性別:男性、っと」
「臥龍臼汰。それが汝の名か?」
【決定後は変更できません。
これでよろしいですか?】
「ああ、そうだ」
「その名ならば秘められし力がある筈」
【職業を選択しステータスを割り振って下さい】
「無論、ここは戦士【ファイター】一択で。
ステータスはこんな感じか」
ステータスはランク付けされている階位を上げるパターンだった。
アイの話では基本的な能力の向上と共にランクが上がれば上がるほど、各技能の成功率や場面解決に反映されるとの事。
スタート時のステータスは個人の身体差にもよるが基本Eランク。
俺の場合、筋力と体力が既にDランクである。
農業で汗水たらして得た身体に感謝しかないな。
ただ、今この場では2つだけランクを上げる事が可能なようだ。
その他は戦闘で得られるレベルアップが5の倍数の時やクエストを達成した褒賞ポイントでランクをアップできるらしい。
熟慮の末、俺は筋力と敏捷性を1つずつ上げることにした。
「汝が宿業は定まったか?」
【決定後は変更できません。
これでよろしいですか?】
「おう。構わないぞ」
「では戦士:臥龍よ。
よくぞダンジョンに参った。
これから先、汝には苦難が待ち受けている。
時には辛苦を味わい辛酸を舐める事もあろう。
だが――屈する事なかれ。
困難を打ち破る為の糧……汝に祝福を送ろう。
さあ、選ぶがいい」
【初期ポイントからスキルを選択して下さい】
うお、出てくる出てくる。
まるでボードを埋め尽くすほどのスキル数。
有能そうなのを挙げれば、現段階のポイントでも取れそうな、攻撃力を上げる【攻撃力上昇:下】や全般的な防御力を上げる【物理耐性:下】……
多数の敵を一掃する【薙ぎ払い】など実に様々なスキル名が並んでいる。
本当ならこの中から自分好みにチューニングするのだろう。
しかし――俺には既にアイの助言があった。
迷うことなくアイコンを操作し、決定。
自分のステータスを簡易表示してみる。
ネーム:臥龍臼汰
レベル:1
クラス:戦士【ファイター】
称 号:ダンジョンの寵愛を受けし者
身 長:185
体 重:72
ステ表:筋力C 体力D 魔力E
敏捷D 器用E 精神E
装 備:スコップ
ツナギ
スキル:獲得経験値向上(低)
加 護:助言者(思念体:アイ)
「さあ、汝が旅立ちの時はきた。
手助けは必要か?」
【戦闘チュートリアルをしますか?】
「勿論、了承と」
「では、臥龍よ。強き魂を持つ者よ。
意志と欲望の赴くまま、己が行く道を定めよ。
今ここに、楽園への扉は開かん」
【チュートリアル後にダンジョン探索スタートです。良い旅路を】
仰々しい物言いと共に人面は消え、扉が開く。
俺は苦笑しながらも優しい光が満ちる扉の中へと足を踏み入れる。
中は体育館ほどの大空洞。
そして中央には――
理科室かファンタジーでしか見た事の無い虚ろな瞳をした骸骨【スケルトン】が、剣と盾を手に立っていた。
ちょっと後の話を序章として付け加えました。
よければ見直してみて下さい。




