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プロローグ⑤:人魔大戦の終結

「さてみんな!この長い戦争もやっと終わりが見えてきたぞ。あと一踏ん張りだ!我々も最前線に行くぞ!」


 白銀の騎士は仲間を引き連れ、人間と魔族が戦いを繰り広げている荒野へと向かっていく。

 そして、最前線へとたどり着くと自らも魔族と戦いながら仲間達に向けて再度檄を飛ばした。


「時は来た!もおすぐ戦いは終わる!我々が守りたかったものは守られるぞ!ここからは私も戦う!皆!あとひと頑張りだ!」


 白銀の騎士の勇姿と言葉に仲間達の指揮が更に上がる。

 この瞬間から人間と魔族の勢いの差ははどんどん縮まっていった。


 戦力差が人間に傾きつつある中、突然、体格が良く屈強な吸血鬼が白銀の騎士の目の前に姿を現した。


 白銀の騎士は突然現れた吸血鬼の姿に一瞬怯んだ。

 

 なぜなら、その吸血鬼の瞳はギラギラと強く輝いており、まるで二つの満月が目の前に落ちてきた様だったからだ。

 

 白銀の騎士は、怯んだもののすぐに冷静さを取り戻し、吸血鬼の姿を見直した。

 

 腕は鍛えられた人間の兵士の太もも以上ある。

 腿は白銀の騎士の胴体と同じくらいだ。

 戦場の熱にあてられ興奮している様子で、髪は逆立って息は荒くなっていた。


 その吸血鬼は一度辺りを見回すと、無言で白銀の騎士に近づいて行った。


 白銀の騎士を守るため、周辺にいた兵士が吸血鬼に斬りかかった。

 すると、その吸血鬼は向かってきた何人かは軽く突き飛ばした。

 突き飛ばされた兵士は吹き飛ばされて倒れ、二度と立ち上がらなかった。

 そして、その吸血鬼がわざと残した1人の兵士の右腕と左足を掴んだ。

 その掴んだ腕と足を、まるで紙切れで遊んでいるかの様に引き裂くと足の方に齧り付いた。

 その直後、恍惚の表情を浮かべると大声で笑い、機嫌良さそうに話し始めた。


「ガッハッハッハッハッ!最高だ!やはりここまで降りてきた甲斐があった!

俺の名はエバー・ド・ラガルド!

ここにいる全員!その名を魂に刻め!お前達は俺の今夜の食事だ!生まれ変わっても俺の食糧だ!ありがたく思え!」


 エバーと名乗った吸血鬼がそう言った瞬間、白銀の騎士はエバーに切りかかった。

 エバーは、白銀の騎士の剣を人差し指で軽く受け流そうとしたが、第一関節から先を飛ばされてしまった。


「ほぉ。俺の身体に傷をつけられる者が人間の中にもいたか。面白い。お前は最後だ。他の人間どもを綺麗に片付けたら最後にゆっくり喰らってやる。」


 エバーは白銀の騎士に伝えると、瞬時に姿を消した。

 すると、少ししてから、遠くの方で兵士の悲鳴が上がり始めた。


「クソッ。最後の最後であんな奴が現れるとは。」


 白銀の騎士はそう言って、すぐに悲鳴の上がる方へ向かって行った。

 

 白銀の騎士は吸血鬼の後ろ姿を捉え、切り掛かった。

 その直後、時間が止まった様な感覚に陥った。


 ゆっくりと、自分も周りの景色も動いてはいるのだが、体の自由はきかない。

 頭はクリアで思考が回り、周りの状況はいつもよりよく見えていた。

 倒れている者、今まさに倒れていく者、我武者羅に剣を振るう者、人間を容赦なく襲う魔族。

 今この瞬間、人間も魔族も関係なく、全ての存在が平等に思えるような感覚になった。

 自分の目の前で部下を惨殺したエバーでさえもだ。


 白銀の騎士の剣の刃が、エバーの背中のすぐそばまで近づいた瞬間、白銀の騎士はその感覚から解放された。


 解放された直後、白銀の騎士は動けなくなった。


 冷静に自分の状況を確認する。

 何かが腹部を貫通していた。


 エバーの腕だった。


「つまんねーな。最後に相手してやるって言ったのに。あのまま適当に時間潰してりゃこんな死に方しなかったのによ。」


 エバーはそう言って白銀の騎士から腕を抜こうとした。

 しかし、抜けなかった。

 

「お前の方から向かってきてくれくれるなら好都合だ。」

 

 白銀の騎士が最後の力を振り絞り抗っていた。


「無駄な足掻きだ。つまらん!もぉ死ね!」

 

 エバーがもう片方の腕で白銀の騎士にとどめを刺そうとした瞬間、荒野全体が謎の光に包まれた。


 その光は、突如、上空から降り注がれたものだった。


 荒野全体がその光に包まれた瞬間から、その場にいたほとんどの人間と魔族は、何が起こったかわからないうちに肉体を消失させた。

 

 しかし、白銀の騎士とエバーだけは違った。


「なんだコレ!人間がこんなことできるなんて聞いてねぇぞ!人間に出せる威力じゃねぇじゃねぇか!長く浴びたら流石に体がもたねぇ。」


 そう言ってエバーが光の中から抜け出そうとする。


「約束どおり、、2人、、だけのたたかい、、、だぞ。にが、、さん。

おまえが、、この中で、、一番の、、、悪だ。いっ、、、しょに、、逝って、もらう。」


 白銀の騎士は薄れゆく意識の中最後の力を振り絞ってエバーの逃走を阻止した。


「やめろぉぉぉぉぉ!」


 その後、白銀の騎士とエバーの2人は、更に強い光に包まれ、しばらくして姿を消した。


 荒野には二日間も謎の光が降り注いだ。

 

 そして、光が消えた時、荒野には誰も何も残っていなかった。

 まっさらな大地と二つの丘だけだった。


 すると、東の丘に女性が1人やってきた。

 辺りを確認し誰もおらず、何もないことを確認する女性。

 確認が終わると、涙を浮かべ振り返り、来た道を帰って行った。

【次回】狂狼病①:鬼診療所⇔ 受付開始

 長いプロローグにお付き合いいただきありがとうございます。

 お待たせしました。次回から本編スタートです。

 まだ、プロローグのような緊張感はないですがお付き合い下さい。

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