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狂狼病⑨:鬼先生×スノー

「ぐがぁぁぁぁぁ!!フーッ!フーッ!!」


 スノーはかなり興奮している。そして、閉じ込められたと知り壁を壊しにかかった。


ドゴッ!バコッ!


壁を殴り壊すが、壊れたそばから直っていく。スノーは壁を壊す事を早々に諦めると鬼先生の方を向いた。


 鬼先生もスノーと向き合った。


「スノーのこの姿は何度か見ていますが、やはり凄いですね。」


 この時、スノーは完全に狼男に変身していた。

 

 その姿は、全身を長い銀色の毛で覆われている。その毛は硬さと柔らかさを両立させており、生半可な攻撃は通さない。

 目は、人間の頃とは違い左右の綺麗な瞳と白眼の対比が逆転し発光している。この目は暗闇も関係なく全てを見通す。


 歯は、全て牙と呼べるほど鋭くなり、重い鉄のような黒色をしている。噛まれたら骨ごと噛みちぎられる硬さと強さがある。


 爪は、その一本一本が鋭利な刃物のようになっている。触れなくても近づくだけで空間ごと裂かれそうなほど強く鋭い。


 四肢は、毛で覆われていても判るほどに発達している。魔族の中でもトップクラスの身体能力を誇る狼男ならではの体躯だ。


 鬼先生は全身武器のような身体を向けられ、その身体に一瞬見惚れた。


 そして、その一瞬の隙をスノーは見逃さなかった。


 鬼先生が気づいた時には、スノーは鬼先生の目の前を通り過ぎて鬼先生に背を向けるように背後に移動していた。

 鬼先生が背後に移動したスノーに気づいたと同時に鬼先生の左の首から血が噴き出した。


「クチャクチャ。クチャクチャ。ゴクンッ。ウヲォォォォォォォォォォォォン!!」

 

 スノーは噛みちぎった鬼先生の首の肉を飲み込むと、両手を広げて身体のけぞり勝利の雄叫びを上げた。

 そして後ろを振り返る。


 しかし、そこに鬼先生はいなかった。


 周囲を見渡すが姿は見えない。次の瞬間、頭上からスノーの後頭部に衝撃が走る。と同時にスノーは顔面を床に叩きつけられた。


「油断はダメですよスノー。私も人のことを言えませんが。人間や他の魔族なら今ので死んでましたね。」


 鬼先生の首の傷は既になくなっていた。吸血鬼特有の超速再生だ。


「ガルッ!ガルルルッッッ!グガァ!」


 スノーは必死に抵抗している。物凄い力だ。鬼先生も急所を抑えて動けなくしているはずなのに、スノーの力はそれを上回っている。


「グガァァァァァァ!!!」


 鬼先生はスノーの抵抗に負け弾かれてしまった。


「やはり素の状態では無理ですね。今日が金曜日でよかったです。」


 鬼先生が体制を立て直したその時


「先生、光雷くんの血液を持ってきました。」


シラの声が聞こえた。


「ありがとうございます。レゴ!シラのいる場所に穴を開けてください!」


 鬼先生のすぐ後ろに穴が空いた。

 そしてそこへ血の入った袋が投げ込まれた。


「助かりました。多分これで大丈夫です。シラは戻ってチリちゃんに報告して下さい。スノーを連れて帰ります。」


「はい。」


 そう言って血の入った袋を手に取ると袋に貼ってあったシールを確認した。


 下名 光雷


 シールにはそう書いてあった。


 袋には飲み口が付いていて、飲み口にはキャップが付いている。

 鬼先生はキャップを開けると、中にある血を一気に飲み干した。


「フー!さて、スノー。そろそろ診療所へ帰りましょう。」


 鬼先生がそう言った瞬間、スノーはまた鬼先生に襲い掛かっていた。

 しかし、鬼先生はスノーの攻撃を軽くかわした。それだけでは無く、反撃も加えた。


 鬼先生の表情が少し変わる。


 血を飲んだからだろうか、いつもより鋭い目つきになり、瞳は普段よりも濃く、金色に近い色になっていた。


「理性は無くても記憶はありますからね。今、私がどんな状態か思い出してもらいましょう。

私は下名光来雷の血液を飲みました。これは先日来た光雷君の血液です。

そして、私は血中に存在する署名細胞に触発されて特殊な能力が発現します。

光雷君の血液は下の名前のおとり、『光』と『雷』の性質を発現させることがわかっています。」


 スノーは鬼先生の説明を無視するように、今度は胴体に向かって噛みつきに行った。

 スノーの牙が鬼先生の脇腹を捉えようとした、その瞬間だった。


 バリバリバリ!!!


 スノーの身体に電撃が走る。スノーは強靭な体のおかげでダメージは殆ど負っていなかったが身体が硬直し動きが止まった。


「今の私は電気を発生させます。

そして私は血喰流倒術ちぐいりゆうとうじゅつを体得しています。

今のスノーでは私に追いつく事は出来ませんよ。」


 鬼先生の説明が終わると、鬼先生は構えた。


血喰流倒術ちぐいりゅうとうじゅつつなぎ・光雷」


 鬼先生の体がうっすらと光だす。


止動しどう


 次の瞬間、鬼先生はユラユラと輪郭がボヤけ少ししてスッとその場から消えた。

 スノーは鬼先生ので動きについていけない。

 鬼先生は光に近い速さで流れる様に且つしなやかにスノーの背後に周る。


切霧きるきり


 そして、光に近い速さでスノーの首元に手刀を放った。その手刀は血液の効果で強度を増し、電気も帯びていた。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 スノーは一回だけ叫び、その場で気を失った。


「やはり、光雷君の血液を持ってきてもらって正解でしたね。流石に疲れました。

レゴ!もぉいいですよ!ありがとう。」


 そう言った鬼先生はその場に座った。

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