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狂狼病⑤:初診⇄ゴーレム親子

 この日は診療開始からバタバタしていた。

 まず、診察開始と同時に訪れたのは、右手の人差し指が取れたゴーレムの子供を連れた母親だった。


「すみません!うちの子の指が取れてしまったんです!!

土をいくら食べても上手く着かないし、粘土質の土を塗ってもすぐに取れてしまいます!どうしたらいいでしょうか!?」


 母親は、普段あまり見慣れない症状に困惑した様子で駆け込んできた。


 ここはレミが冷静に対応した。


「わかりました。お子さんは初診みたいですね。手続きは済ませておくのでそのまま診察室へ行って下さい。」


{先生、今からそちらにゴーレムの親子が向かいます。子供の指が取れてます。}


 ゴーレムの親子を診察室向かわせながら、器用に思念伝達で鬼先生に状況を伝える。


 朝の様子とは違い、レミはテキパキと完璧な対応をしている。

 そんなことよりも、気になる事が一つ、仕事の時は2人同時に話はしないらしい。


 診察室へ駆け込むゴーレム親子。


「先生!うちの子の、、、指が!」


 母親が心配と不安を含んだ声で駆け寄る。

 そんな様子を見て、子供のゴーレムも不安そう、というか、今にも泣き出しそうである。


「症状は把握しています。まずはお座りください。おそらくですが大丈夫です。一度折れた箇所を見せて下さい。」


 鬼先生はなるべく2人を安心させるように、優しく柔らかい口調で言った。


「ボク、不安だったよね?安心してね。」


 鬼先生がそう伝えると、ゴーレムの子供は突然泣き出した。よっぽど不安を我慢していたのだろう。

 ゴーレムの子供を落ち着かせつつ、鬼先生は人差し指の折れた箇所と取れた指先を確認した。


「お母さん、指の折れた状態を見る限り、コレは『ミネラル不足による砂塵症』です。最近サラサラの土を多く食べさせていませんでした?」


「はい。子供が粘土質の土を嫌がったので砂利ばかり与えていました。」


「やはり。それが原因ですね。通常ゴーレム族の方々は、体が欠けても土を食べれば修復します。

 が、ミネラルが不足すると修復が困難になります。特に成長過程の子供は。」


「そんなこと聞いたことありませんでした。」


「今まで、我々魔族に医療は必要ないと思われてきましたからね。当然です。

 で、ここからが重要です。人間は作物を栽培するため、質の良い土を作ります。そのための一つの要素に『ミネラル』があります。」


「人間って色々と考えてるんですね。それで、子供の指と人間の土にはなんの関係が?」


 いつの間にか母親の方は不安が消え、安心した様子で受け答えしている。

 そんな母親を見て、子供も安心した表情になった。

 2人が落ち着いた様子を確認して、鬼先生は説明を続けた。


「はい。人間は土にミネラルを与えるための『肥料』も発明しています。昔のゴーレム族はミネラル不足により体がボロボロになったままの方も多くいましたが、肥料のおかげで今は『ミネラル不足』のゴーレムはほとんどいなくなっていました。」


「なるほど、じゃあミネラル不足はどうやったら良くなるんですか?息子は本当に大丈夫なんでしょうか?」


「さっき言った『肥料』を魔族用に作り替えた『MnM』という液体の飲み薬を1週間分処方します。毎食の土に混ぜて食べさせて下さい。そうすれば指は再生するはずです。

 ですか、食べさせる土はなるべく粘土質のものにして下さい。砂利だと効果が薄れます。」


「わかりました。ありがとうございます。」


 母親は鬼先生の説明を聞いて完全に安心したようだ。

 子供は先生と母親の話をあまり理解していない様子だったが、母親の安心した顔を見て完全に泣き止んでいた。


「ボク?今日から色んな土を食べなきゃ駄目だよ。また指が取れちゃうからね。約束できるかい?」


 鬼先生の言葉に子供のゴーレムは直ぐに頷いた。しかし、また母親は不安そうになる。


「でも先生。私達ゴーレムには血液がありません。どうしたらいいでしょうか?」


「大丈夫ですよ。ゴーレムの方からは一切の治療費はいただいていません。そういう『契約』になっているので。」


 母親は不思議そうにしている。


「でも、、、」


「大丈夫です。もし、どうしても何かお返ししたいと言うなら、家族で旅行にでも行った時に『質の良い土』を診療所まで持ってきて下さい。それが何よりのお礼になります。」


「先生がそう言うのでしたら。

 わかりました約束します。ありがとうございました。」


「お願いします。お大事にして下さい。」


 鬼先生はそう言ってゴーレムの親子を見送った。


 ゴーレムの親子が診察室を出ると、シラが受付で待っていた。


「お子さんの処方箋です。かかりつけのお薬屋さんがなければ、診療所を出てすぐのところにゴールドラッグという薬局がございます。そこにゴールデン・マリーという薬剤師がいますので、その子に渡して下さい。お大事にして下さいね。」


 ゴーレムの親子は、シラの丁寧な説明を受けると、診療所を出てすぐの薬局に入っていった。


 ゴーレムの親子の診療が無事に終わり、その後も何人かの診療話終えたところで1人の男性がマスクをして咳き込みながら入ってきた。

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