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22/25

22・作戦成功です

 その後、エドガーを拘束し、私とウィリアムはみんなのところへ戻りました。



「「「殿下!」」」



 私たちを見て、騎士たちが一斉に駆け寄ってきます。


「ご無事でしたか!」

「ああ、問題ない。転移した先で、〈真紅の爪痕〉の親玉と戦いになったが……大したことがない男だった。俺一人でも、簡単に倒すことが出来たよ」


 とウィリアムは拘束されているエドガーに目を向けます。

 彼は悔しそうに「けっ!」と唾を吐き、視線を逸らすのみでした。


「なんと……! それは素晴らしい。さすがはウィリアム殿下です!」


 騎士たちが一様に、ほっと胸を撫で下ろす光景が広がります。


 ……今回の作戦の肝は私とウィリアム、クラークさんの三人しか知りません。

 ゆえに、裏でどんな企みがあったのか、他の騎士は知りません。


 なので、クラークさんだけは転移先でなにがあったのか想像できたのでしょう。

 騎士たちには見えない位置で、くすりと小さく笑っていました。


「殿下、こちらも制圧完了しております。アジト内にいる〈真紅の爪痕〉のメンバーを、全て拘束し終えました」


 他の騎士がウィリアムにそう告げます。

 その視線の先には、縄で拘束されている男たちがいました。


 とはいえ、全員でたった五人だけ。

 このアジト内には、ほとんど人員を配置していなかったようですね。

 魔の森の瘴気を防ぐアイテムも有限ですし、あまり数を割くわけにはいかなかったということですか。

 仮にアジトの場所がバレたとしても、魔の森に立ち入る必要がある。それは不可能。


 ……そう油断していたのでしょう。

 その油断が、彼らの命取りとなりました。


「あとは、アジト内を探索するぞ。こいつらが溜め込んでいる宝もあるだろうからな。手分けして、それらを収集する」

「「「はっ!」」」


 ウィリアムが指示を出すと、みんなは散り散りになってアジト内をくまなく探索し始めました。


 ウィリアムの推測通り、アジト内には高価そうな宝石や装飾品、魔導具がありました。

 一つ残らず確認し、それらを一箇所に集めます。



「ほとんどのものが、“穢れ”に塗れていますね」



 宝の山を眺めて、クラークさんがそう声を零します。


 とはいえ、これは予想していたこと。

 ただでさえ、魔の森内で保存していたアイテムなのです。


 今はアジト内の魔導具により“穢れ”の効果は封じられていますが、それも一歩外に出てしまえば別。

 たちまち牙を剥き、“穢れ”は私たちに襲いかかるでしょう。


「いくら元が高価なものでも、これだけ“穢れ”に塗れていれば、ろくに買い手も見つからないはずだ」


 ウィリアムがエドガーに視線を移します。


「それなのに、貴様はこれをどうするつもりだったんだ?」

「こういうアイテムを欲しがる物好きも、世の中にはいるんだよ。世間知らずの王子殿は知らないだろうがな」


 エドガーがバカにするように笑います。


「それにしても……こんなの回収して、元の持ち主に返すつもりか? それとも、城内で保存する? どっちにしろ、無駄だぞ。“穢れ”に塗れたアイテムなんか、誰も欲しがらないだろうし、保存するにしても城内が“穢れ”塗れになっちまうからな」


 エドガーの言葉からは、余裕のようなものが感じられました。

 どうせ、私たちではなにも出来ないと思っているのでしょう。


 ですが。


「アルマ、頼めるか?」

「はい」


 一箇所に集めた“穢れ”のアイテムたちに、私は手をかざします。


「は……? なにをするつもりだ」


 その様子を、エドガーは不思議そうな顔で眺めていました。


 ──浄化。


 温かい光が、“穢れ”のアイテムを包みます。

 すると、あっという間に“穢れ”が払われ、真っ新なアイテムたちへと戻りました。


「なっ……!」


 その光景を目にして、エドガーが言葉を詰まらせます。


「じょ、浄化しやがっていうのか!? 今の一瞬で!?」

「そうですが、なにか?」

「あ、有り得ねえ……一つだけでも、腕のいい解呪師が時間をかけて浄化しなければならない代物だ。それを一瞬で……しかも、まとめて……なんて」


 捕まってもなお余裕の態度を崩さなかったエドガーですが、私の力を前に愕然としました。


 ふふっ、やっと彼の鼻を明かすことが出来ました。

 少しいい気分。


「広範囲の白聖結界といい……王子殿は、随分と腕のいい解呪師を見つけたようだな」

「貴様とは違い、俺には人望があるからな」


 ウィリアムも、私と同じ気分なのでしょうか。不敵な笑みを浮かべて、エドガーを見下ろしていました。


「さて……これ以上、長居は無用だ。こいつらを連れて、すぐに王都に帰り──」

「ウィリアム様」


 ウィリアムが次なる指示を出そうとすると、クラークさんが駆け寄ってきて彼になにかを話します。


「実は……」

「うむ……? そうなのか。人から金品を奪うだけではなく、そのようなことにも手を染めているとは……」


 ……えーっと、なにを話されているのでしょう。

 私がいる位置からでは、彼らの話の内容まで聞き取れませんでした。


「ウィリアム殿下、クラークさん、どうされたんですか?」


 騎士の前ということもあって──私はウィリアムの名前に『殿下』と付け、そう質問します。


「そうだな……見てもらった方が早い。少々気分が悪くなる光景かもしれないが……大丈夫か?」

「はい……? 大丈夫ですが……」


 頷くと、ウィリアムとクラークさんは、アジトの奥に向かって歩き出しました。

 私も彼らの後に付いていきます。


 そして階段を何度も降りて、一番最奥。

 より一層薄暗く、じめじめとした場所です。


「牢屋……でしょうか?」


 鉄格子に阻まれた部屋が、いくつも並んでいました。


 その中の一番奥。

 牢屋の中で、可愛らしい獣耳を生やした少女が、膝を抱えて座っていたのです。

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