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ここは夜の星の国
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夜闇色の青年

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 まぶたをひらくと、視界がせまかった。

 狭い視界のなかでとらえたのは、橙色の光がこぼれるランプ。光が弱すぎるのか。天井は影に隠れていた。

 竹琉は、視界の違和感に顔をしかめた。

 もっと情報がほしいのに、この狭さが嫌だった。

 確認のため、片目ずつ、つむってみる。

 左目を閉じると変わらない。右目を閉じると真っ黒。

 なにかが竹琉の頭をおさえている。それはとても固くて、とても冷たいものだ。氷だろうか。その感覚は、竹琉の後頭部にもあった。きっと陶器の枕だろう。百貨店で見たことがある。

 視界が狭いこと以外、どちらにも不快感はなかった。顔全体も後頭部も、ひんやりとしていて、気持ちがいい。竹琉はふたたびウトウトしはじめた。

「起きたか」

 凛とした声に、眠気がふっとぶ。顔はおさえられて動かせないので視線を動かす。見つける前に、声の主は視界に入ってきた。

 目を見開く。

「なぜ、喋らない? 話せないのか? 寝ぼけているのか? それとも、俺のことを知っていて恐れているのか?」

 疑問符だらけの言葉に、竹琉はすこし笑ってしまった。

 するどい声音の中に、どこか優しさと不安を感じる。彼は言葉で攻撃してこない。バカにしない。強制しない。それだけで、ひどく安心した。

「おそれてなんていませんよ。起きあがれないから、これをどけてくれませんか?」

 言うと、冷たく大きなものが竹琉の顔から引いた。また、おどろく。竹琉の顔をおおっていたのは、彼の手だった。頭をのせていたのは彼の膝。

(ひ、膝枕って……!)

 めっちゃくちゃはずかしい。顔に熱が集中しないうちに、勢いよく起きあがった。ぐわんと頭の中と視界が歪む。

「いきおいよくおきるのはよくない」

「そ、そうですね」

 ふらふらする頭をおさえながら、ふりかえる。両目で彼の姿をとらえると、胸が高鳴った。

 ――なんて、綺麗な人だろう。

 この言葉は女の人のための褒め言葉なのかもしれない。けれど、そう称えずにはいられない。

 夜の闇でできているような美青年。

 ボサボサなのがもったいない、艶やかな黒髪。雪を思わせる、生気を感じさせない白い肌。女性でもうらやむであろう、小さな顔。目じりがほんのすこしつりあがった、するどい目つきをしており、黒い瞳には小さな星が散らばっていた。高い鼻も、引きむすんだ口も、どれも形がいい。まるで彼の体を構成するすべてのパーツは、神さまが直接つくったかのように完璧だった。

 そんな彼が着ている服は、すこしかわっている。漆黒のロングコートに、胸から腰にかけて8本のベルトが巻かれていた。

 腕や足は自由だが、なんとなく、拘束衣をおもわせた。

(こういうの、厨二病って言うんでしたっけ)

 魔法の世界にいる人が着ているような服。奇抜だが、彼によく似合ってる。

 彼が座り、竹琉が寝かせられていたカウチソファのそばに、竹琉の靴を見つけた。履こうとすると、かけられていたブランケットの存在にはじめて気がついた。

(この方にいっぱい迷惑をかけてしまいました)

 彼にたいしてできるだけ真正面を向けるよう、座りなおす。ふたたび、夜空色の瞳と見つめあった。

「お世話をしてくれて、ありがとうございました。迷惑をかけてごめ」

「礼は受け取るが、謝罪はいらない。俺は迷惑とは思わなかったからな」

 言葉の意味を理解すると、笑顔になる。

「では、あらためまして、ありがとうございます。初めまして、僕は緒環 竹琉です」

黄昏たそがれだな。俺の名前は、草薙くさなぎ 蒼磨そうま天叢雲剣あめのむらくものつるぎだ」

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