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01.後悔を綴る。

エレリア国。

紺色の背景に銀色の翼が国旗を意味する。

首都はルミア。

翼が導く、やさしさの国とは本当なのか。

戦争の終わりを告げ、エレリア国の勝利が言いわたされる。

しばらく軍を動かす心配がないことを安心しながら、戦略考案部のファニカはベットに腰かけた。

エレリア国の軍隊とそれを率いる上位階級を乗せた豪華客船が、敵国の戦場を離れ自国の海へ漕ぎ出していた。船内は戦争の疲れからか一人も騒ぐ者はいない。

まぁ私の滞在する階層は兵長などもいるためあまりうるさくできる余裕はないのだろう。


「…疲れた、」


疲れを癒すべく海を見ようと廊下に出た時だった。足元に重い感触が伝わる。

ゆっくり目線を落とすと近距離兵所属と思われるバッチをつけ、全身がぼろぼろの女の子が倒れこんでいた。

心配より先に、女の子なんて珍しいなと思ってしまうところには思わず自分で咳ばらいをしてしまう。


「大丈夫?」


そう声をかけるが返事がない。早く軍隊のグループ部屋に戻ったほうがいいのではないか。このままだと近距離武器担当の兵長に叱られてしまうのではないか。いろいろなリスクが自身の頭の中に飛び交う。

抱き起こそうとしゃがんだ時だった。


「おいファニカ、こいつどうにかしてくれよ」


「…兵長様」


まずいところを見られた。戦略考案部の部屋に下等役職がいるなんて知られたらたまったものではない。


「そいつ、近距離武器担当の軍事兵器だよ。こんなボロボロだけど、総統の裏お墨付きなんだ。戦争は終わったししばらく使うことはない、どうだファニカ、唯一の女友達、ほしいよな?」


「唯一の…」


簡単に兵長の言葉を綴ると、女だから殺す気にもなれないから引き取れ。ということで間違いないだろう。こんなボロボロにしてもまだ殺さない情が残っているのかと逆に感心してしまいそうだった。ひとまず手当を。


「わかりました、引き受けましょう。」


「そう言ってくれると思ってたんだ」


そう感謝を伝えられたが、腫物を見るような目で見られるのにイラつきを覚えた。戦略考案部は上位階級の役職に入るが、あまり目立たないので半分雑用のようなものだ。



私は彼女を抱きかかえると自身の部屋のベットにそっと寝かせ、かすかな彼女の呼吸音をききながら、無造作に巻かれたうでの包帯をとった。


「ひどい傷。」


自分一人で応急処置をしたのか、処置しきれていない傷からは赤黒い血がにじむ。

____15分ほどの時間をかけて手当を施すと、彼女はいつの間にか瞼を開き私の手を見つめていた。


「あぁ、起きたね」

「私は戦略考案部のファニカ、これからあなたを引き取る引受人になりました。」


「…なんで、考案部の方が、私を…」


小さな声を聞き取ると、私は彼女に微笑んだ。


「もう役職なんか関係ないでしょう笑」

「あなたはもう、戦わなくていい」


「…」


彼女は私の目を凝視した。警戒心と恐怖心を混ぜたような彼女の眼はただただ戦ってきた少女ではないと感じさせた。

彼女は自身の手当された腕やひざをなでると、不思議そうにこちらを見た。


「…これ全部、あなたが、?」


「そうです。きつかったら言ってほしいな」


私の言葉に驚きを隠せない彼女は何度も包帯の数々を見て、ほんの少し緊張がほどけたように感じた。

胸のネームタグを見ると軍隊番号がふられていた。

女性唯一の近距離兵士の名前は確か、「ミオ」。

きっと彼女で間違いないだろう。

引受人といっても、何をすればいいのか。

私は軍に入る前、貴族の令嬢として生きていた。誰かを世話した経験はないし、知識もない。でも、家に帰ったら、私は考案部ではなくただの女の子になる。かわいらしいドレスに身を包み、優雅に紅茶を嗜む。それでも、人の命を。


「私と一緒に帰りませんか。」


「…あなたと、?」


もし幸せな家庭に生まれているのなら、あなたは軍兵器呼ばわりされているはずがない。少しひどい気もするが、今は自分の言葉を信じた。


「…いってもいいんですか」


「もちろん。」


徐々に私に対する彼女の警戒心がほどけてきたように思う。

私たちはそれからしばらく会話を交わさなかった。

沈黙でいても、不思議と安心していられた。











をのはです見ていただきありがとうございます。

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