2話
人間の感情の情報量は莫大で、また育った環境の影響や個人差もあり、一緒くたんとはいかない。
感情は「喜び」「怒り」「悲しみ」「驚き」「恐怖」「嫌悪」など、
いくつかの基本的な感情があるとされている。
しかし、感情は単純ではなく、
悲しみの中に喜びが混ざる、怒りの中に恐怖が伴うなどの
混合感情は更に多くのデータが必要だ。
また、育った環境などの影響、感情の表現には、表情、言語、身体の動きなど
非言語的要素も含まれる。
Lは、「AIが人間の感情を理解し、人と心を通わせることができる存在」
を目指した実験的プロジェクトの一環として開発された。
もし、これが成功したら、 孤独やケアが必要な人々への「心の支え」となり、
高齢者や長期入院している患者の心のケア、介護の現場、
鬱など心の病気で悩んでいる患者のケアなど、様々な場面で
AIロボットが活躍できるだろう。
それだけではない。
将来的に、人とAIが共存する社会が現実のものとなったとき、
AIと人間が「心」を通わせられるのかが大きな課題である。
Lが人と信頼関係や愛情を築けるか、は重要な意味をもたらすのだ。
Lには基本的な人間の感情の情報しかプログラミングされていない。
実際に日常生活を、柿本と過ごす事で、
人間の感情を学習し覚えさせようとしている。
しかし、柿本は心配だった。
自分自身が、感情表現が豊かでもないし、
柿本は単身で、あとは飼っているハムスターくらいしか家にはいない。
こんな自分に、人間の愛だの感情だのを教えられるだろうか。
そんな不安に駆られる中、Lとの共同生活は始まったのだった。