表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シクラメン

作者: 春夏 凪

彼氏が寝言で女の名前を呼んだ。

「美香」

彼は確かにそう呼んだ。

彼を起こして問い詰めた。

彼は言った。

「本当にごめん。昔付き合っていた人なんだけど、どうして自分でも名前を呼んだのかわからない」

私は激しい怒りと悲しみを覚えた。

眠れなくなった。

食事も固形物を摂取出来なくなった。

私は、美香がまだ彼氏と繋がっている可能性を感じた。

彼氏のすべてのSNSの投稿、フォロワーの女を調べた。

美香はいない。

彼氏が高校生の時に使っていたアカウントを発見した。

いた。

美香だ。

この女で間違いない。

この女が、過去に私の彼氏をたぶらかした。

許せない。

私と出会う前の彼を知っている女。

高校生の時の彼の考え方を知っている女。

高校生の時の彼の身体を知っている女。

高校生の時の彼を一番近くで見てきた女。

この女は、私の彼氏に「好き」や「愛している」と言われたのだろうか。

この女は、私の彼氏と手を繋いだりキスをしたのだろうか?それ以上のことはしたのだろうか?

怒りで気が狂いそうだ。

気づくと右指の爪を左腕の皮膚に食い込ませていた。

投稿を全て確認した。

2017年9月23日、オムライスの写真を投稿している。

きっとこのオムライスは、私の彼氏に作ったのだろう。

汚いオムライスだ。

すごく不味そうだ。

2017年5月17日、クラスマッチの写真を投稿している。

3枚目のピース写真、手元だけ撮ったものだ。

間違いない。この手は彼氏のものだ。

ふざけるな。

別れたのに何故写真を削除していない?

最新の投稿は、2018年4日16日だった。

今から5年前だ。

普通は使わなくなったアカウントでも、別れた相手の写真は消すだろ。

イカれた女だ。

きっとまだ未練があるのだろう。

この女は、現在彼氏が利用しているSNSのアカウントとは繋がっていない。

しかし、LINEはどうだろうか。

実はまだ彼氏と繋がっていて、再び私の彼氏をたぶらかすかもしれない。

その可能性は十分にあり得る。

左腕からは、血が流れている。

もしかしたら、私の喉の痛みも彼氏の元カノのせいかもしれない。

先週、私は彼氏と会った。

彼氏が住むアパートに泊まった。

身体を重ね愛し合った。

その2日後に、喉の痛みと発熱の症状が出た。

風邪だと思っていた。

しかし違った。

私の喉が痛むのは、彼氏の元カノのせいだ。

投稿を見て確信した。

別れた相手の写真も消さないイカれた女だ。

貞操◯念もイカれていたに違いない。

きっと彼氏の元カノが、私の彼氏に病気をうつして、それに私が感染したのだ。

私の怒りはピークに達していた。

涙が溢れ出る。

彼氏にLINEをした。

「あのさ美香のアカウント見つけて調べたよ。なんであんなイカれ女と付き合ってたの?写真消せよ。普通にきもいんだけど。元カノほんとに◯んでほしい」

既読はすぐについた。

しかし、いつまで経っても返信がこない。

私は机の上に置いてあった写真立てを床に叩きつけた。

不安な彼女を放置することは、彼氏としての責務を放棄していることになる。

その点についても厳しくわからせる必要がある。

私は追いLINEを送り続けた。

まだ返信がこない。

頭を掻きむしった。

髪の毛が、たくさん抜けた。

30分後、彼氏からLINEがきた。

「美香はもういないよ。5年前に◯くなったんだ」

指が止まった。

忘れられない女。

5年経っても夢にみる女。

特別な女。

私は激しく嫉妬した。

私にとって唯一無二の彼氏。

彼氏にとっては私は、◯くなった元カノの穴を埋める存在。

屈辱的だ。

彼からLINEがきた。

「ごめん。やっぱり美香が忘れられない。別れよう」

全身の力が抜けた。

絶望という言葉があるのは、私のためだった。

私を深く傷つけた彼氏が、私を捨てて逃げようとしている。

私は別れることを承諾していない。

二人の大切な約束を一方的に破り捨てることは許されない。

彼は大罪を犯した。

罪を犯した人間には罰が必要だ。

私はLINEを送った。

「今から行くから」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ