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CHAPTER.36 『運命そのものなんだ』

誉の部屋、惣一は窓から入る光を嫌ってカーテンを閉めて椅子に座った。誉はベッドに座って真剣に手元の紙を読む。

その紙とは、惣一が昨日タイムカプセルからこっそりと拝借した紙だ。内容が内容なだけにプロ子には見せないで、取り敢えず誉に見てもらうことにした。

その為にプロ子には、わざわざ『幽霊屋敷』が指定した会場である墓地へ、エメと一緒に調査に行ってもらっている。


「どう?これ、今言うべき?」


誉が読み終わったことを察して、惣一は尋ねる。


「今、ではない……んちゃう?ちょっと俺にはわからんけど、惣一が考えてる最悪の可能性はありえへんと思う」

「それは勘?」

「勘、もやし今までの行動からしても」

「んー、まぁ然るべきタイミングっていうのが有るんやろうな。もうちょっと考えてみるわ、()()()もそうしたと思うし」


惣一が意味深にそう告げた、その時プロ子が窓から帰ってきた。

二人は慌てることなく、ごくごく自然な動作で紙を隠して、プロ子を迎えた。


「お~帰ってきたな」

「おかえり、そんじゃあ結果を聞かせてもらおか」


惣一に促されて、プロ子は話し始める。


「ん。まず惣一の言う通り、墓地の四隅にお(ふだ)が貼ってあって。エメに聞いたら、やっぱり意識を奪う効力を持つものだったよ」

「そのお(ふだ)は?」

「剥がしたよ、幽霊の邪魔も入らなかったし」


誉は少し訝しげに眉をひそめた。


「そんなことある?なんで?」

「私も疑問に思ってエメに聞いたら、現在、墓場に残ってる霊魂は全て被害者っぽい。ホントに言った通りだったね」


プロ子は惣一を見ながらそう言った。


『幽霊屋敷』はデスゲームを開催することが目的では無い。デスゲームを餌に集めた人間の魂を抜き取って、自分たちが人間の皮を奪うことが目的だ。

そう惣一はプロ子に言って、証拠を探してくるように頼まれたのが朝。プロ子が半信半疑で向かった墓場には、実際それが正しいことを表す証拠があった。


「まー、結構でかでかと書いてあったし」

「それにしても、あの短時間で覚えるって……」


惣一は、昨日ぱらぱらと捲っていた中の1ページ、『幽霊屋敷』の事件の文章を全て記憶していた。


「まぁ、意識したらあの程度の文量は暗記できるで。『ナラザル』の規約の方がキツかったわ、覚えてたから見直す気になるけど。流し読みしてたらヤバかった」


突然『ナラザル』の話になって、誉とプロ子は首を傾げた。その姿を見て、惣一はハッとした顔になった。


「あー、まだ言ってなかったっけ。今回、もちろん正面突破でデスゲームに参加したらOUTっていうのは分かったと思うねんけど、かと言っても直接対決しようにも向こうが姿を現さへんやん?」


公然の事実のように惣一に同意を求められ、誉とプロ子はわけも分からぬまま頷く。


「そんな時に、ふっと頭をよぎったのは『ナラザル』の規約。あのSNSはアカウント所持者の情報を抜き取ることに同意してアカウント作成出来たやん?」


当然、何も考えずに同意を選択した二人はそんなことは知らなかったが、知ったように深く頷く。


「さらに、禁則事項として人間種を巻き込む事件に利用すること、っていう一文があってん。まぁ、あくまでも非人間が交流するためだけのSNSやしな」

「つまり、『幽霊屋敷』が『ナラザル』でデスゲームの宣伝をしてたんは」

「そ、ルール違反。向こうもどうせならスペックの高い非人間の身体が欲しかったんやろうけど。じゃあ違反したらどうなるか、やねんけど」


ごくり、と惣一は唾を飲み込んだ。

誉もプロ子も惣一の次の言葉を静かに待つ。


「.........それが、分からんねん」

「分からんのかい!なんや、今の溜め!」


誉がすかさずツッコんだが、惣一はまだ神妙な面持ちだ。


「まぁ待て。分からんっていうか、こう書いてあってん。『それ相応の処罰を直接、与えます』って。これ、具体的に書いてあるよりちょっとヤバい感じするくない?」


惣一の言葉に、誉も納得する。


「直接、っていうのが怖いな、確かに」

「せやろ、そんで今証拠もある。ってことで、通報するぞ」


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