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CHAPTER.29 『大きな車輪では、うまく方向転換ができない』

「なるほどなぁ、確かにあそこは人あんま行かんからな。あれ森やなくて人工林やけど」


 誉の部屋で、誉とプロ子は惣一から狼人間の居場所について聞いていた。


「じゃあ早速、探しに行く?」

「なぁ、なんで狼人間を探してたんやっけ?」


 分かり切ったことを聞く誉にプロ子は首をひねったが、惣一は気にする様子もなく普通に答える。


「なんでって、そら『笛の男』が狼人間を狙ってるからやろ。そんでその狼人間を囮にするか、仲間にするかして『笛の男』を捕まえるっていう算段やんか」

「あぁ、そうやったそうやった」

「でもさ、どうやって『笛の男』を捕まえるの? 『武器屋』に勝ってる強さって相当だよ?」


 その問題は誉も懸念していたことだったのか、腰かけていたベッドに勢いよく倒れこんだ。


「SESには『猫』について探ってもらてるし、ダブルとナキガオは、ナキガオの育て主殺した犯人を捜しとるらしいし」


 『猫』とは未来の通信質を襲った男のことだ。黒猫の被り物をしていたことからそう呼ぶことにしていた。


「フォルティスは?」

「いや、なんか今もう一個の人格が強くて、エメに調整してもらってるから暫くは動けんって」

「うーん、向こうも既にスライムを使役してるらしいしなぁ」


 そう誉が言った途端、床に座り込んでいた惣一がハッとした顔になった。


「ていうか、よう情報ゲットできたな。だって、いづれ自分を捕まえる敵ってバレてるし、向こうが教えるメリット無くない?」

「あー、いや交渉してん。俺らが『笛の男』を捕まえたら、復讐するために貸してくれって言われて」

「えぇ……それ大jy」


 惣一が、大丈夫なん? という心配を言い終わらないうちにプロ子も惣一に乗っかる。


「ね! そうだよ、貸しちゃったら絶対生きて帰ってこないと思う」

「あくまでも生きて未来に送るのがこっちの目標やからな」

「そうそう、今からでも断ってきたら?」


 二人の猛烈な反論に誉は苦笑する。


「いやさすがに今そんなん言うたら殺されんで、マジで。まぁ大丈夫、元からジェントルに渡すつもりはないから。『笛の男』捕獲と同時にすぐにモルフェウスの領域に突っ込めばええやろ」

「その後はどうするの?」

「まぁ、『笛の男』が持っとる『武器屋』の道具うまいこと利用して、ジェントルとやりあう」



◇◇◇



 ジェントルは空っぽの店内でずっと耳を澄ませていた。


 誉とプロ子に自分の店を襲ったあの憎い男について話しながら、こっそりと二人に見えない盗聴器を仕掛けていたのだ。


 それは念のため、彼らが自分との約束を破るつもりだった場合に情報が欲しかったからだ。そして、誉の約束を反故にするという決定的な発言が、今ジェントルの耳に入った。


「さてッ、彼等からッ先に殺しても良いのですが……いや、あの男からにッしましょうかッ」


 店を襲撃したあの男、『笛の男』とやらの情報が彼等から入手できる可能性がある。


 そう考えて、ジェントルは誉たちを泳がしておくことにした。



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