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氷の薔薇がとけるまで 遺言で知った婚約者に、政略結婚を望んでいたはずの女王陛下は恋に落ちる  作者: 乙原 ゆん


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41.勝利

 歓声に応え、ステファンが剣を空へと掲げる。

 私はステファンの元へと走り出た。


「ステファン!」

「約束通り、勝ちましたよ」


 嬉しげに言うステファンを、私は思わず抱きしめた。


「見ていたわ。竜巻に雷をまとわせるなんて、よく思いついたわね」

「あれを一目で見破るなんて流石だな」


 ステファンが驚き答える。


「見ていたらわかったわ。上級魔術の暴風雨のアレンジかしら」

「そうだね。僕はあまり魔力が多くないから、少し使い勝手を良くしたんだ」

「とてもいいと思う。新しい魔術を生み出すなんて、すごい才能だわ」

「新しい魔術なんて大げさだよ」


 ステファンはそう思っているようだが、彼のように既存の魔術をアレンジし、成功させる人は滅多にいない。

 王宮に務める魔術師は魔術書の編纂もしているから、きっと彼らが新しい魔術として登録をしたいと言うことだろう。


「でも、あの魔術があったから勝てるって思えたんだ」

「とても、ハラハラしたわ」


 私の言葉に、ステファンは首を傾げる。


「危ない場面などなかったと思うけど?」

「戦っている姿を後ろで眺めるより、私は前に立つ方が性に合ってるってこと」

「僕がいる限りシルヴィアを一人で戦場には立たせないよ」

「それは心強いわ」

「僕は本気さ」


 そう告げる顔は真剣で、私はその視線の重さに頷いた。

 ステファンはそんな私に笑みを深めた。

 私は彼を抱きしめたままだったことが急に恥ずかしくなり、ぱっと離れるとステファンの手を取る。


「さ、王宮へ戻りましょう」

「そうだね」


 ステファンの声に苦笑が混じっているように聞こえるのは気のせいと思うことにして、私はステファンと共に演習場を後にした。



 王宮に戻ると、ステファンと晩餐を約束して執務室に向かった。

 クレモン侯爵の件はこれで片が付くだろう。

 私達の結婚を祝福できないのなら登城禁止を誓約している。

 決闘に負けたクレモン侯爵家からステファンに対する謝罪と結婚への祝福がなければ登城禁止を言い渡すことができる。

 彼らが変わらなければ、遠縁の者に当主を変更するよう勧めてもいいかもしれない。

 考えをまとめながら廊下を歩いていたところで、顔色を青くしたクリストフが正面からやってきた。


「ボードリエ侯爵、どうなさったの?」

「陛下……」


 クリストフは礼をすると、手短に要件を告げた。


「屋敷の者から、父が危篤との知らせをもらいました。状況が落ち着くまで、休みを賜りたく思います」

「先代侯爵が……」


 茫然としたものの、すぐに気を取り直す。


「休暇を許可します。父君についていて差し上げなさい」

「ありがとうございます」


 頭を下げるクリストフに、私も尋ねる。


「ボードリエ侯爵。私も、見舞いにいってよろしいかしら」


 先代侯爵には、ずっと面会を断られていた。危篤というならば、今会わねばもう会うことはできないだろう。


「その、今、私は父に意識があるかもわかりません。それでもよろしければ――」


 クリストフが言いにくそうにいうのに、私は頷く。


「ええ。お顔を拝見するだけでもいいの」

「でしたら、いつでも陛下を歓迎いたします」

「感謝します」


 クリストフと別れると、私もステファンに知らせを出す。

 晩餐の約束をしたばかりだが、今日は無理かもしれない。

 ステファンからの返事は、晩餐の延期は問題なく、また、見舞いの同行を願うものだった。

 先代侯爵もステファンとは面識がある。

 許可を出すと、支度に向かった。

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